ここから本文です

アマゾンも止めたAI採用。リクナビ問題に潜むAI活用のリスク

10/8(火) 8:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

リクルートキャリアが運営する就活支援サービス「リクナビ」がAIを使って学生の内定辞退率を算出し、企業に販売していた問題が、政府や人事関係者に大きな波紋を広げている。

【全画像をみる】アマゾンも止めたAI採用。リクナビ問題に潜むAI活用のリスク

政府の個人情報保護委員会は8月26日、リクルートキャリアが約8000人分の就活生の個人データを本人の同意を得ずに外部提供していたとして、是正勧告を出した。さらに厚生労働省の東京労働局は、リクルートキャリアの行為が「特別な理由のない個人情報の外部提供にあたる」とし、職業安定法違反による異例の行政指導に踏み切った。

大企業ニーズに答えたサービス

リクナビなどの就活サイトは数社に限られ、現在はその利用を前提に就活が成り立っており、就活生がサイト側の運営方針に「同意しない」ことを選択するのは難しい。そうした優越的地位を利用して個人情報を活用し、辞退率データを年間400万~500万円で販売していたリクルートキャリアの責任は厳しく問われるべきだろう。

IT企業など複数の企業の人事責任者の経験を持つ株式会社モザイクワークの髙橋実取締役COOもこう指摘する。

「終身雇用が崩壊するなかで、より優秀な人材を囲いこまざるを得ない状況に追い込まれ、特に採用数の大量確保が必要な大企業は今のリクナビのサービスに限界を感じている。そんな大企業のニーズに素直に応えたのが今回のサービス。学生と企業双方のためのプラットフォームであるべきリクナビが本質的なプラットフォーマーの役割を忘れ、学生を尊重せず、お金を払う企業のニーズに寄ってしまった」

採用のモラルが低下している

今回の問題の重大性は情報提供事業者のリクルートキャリアだけではなく、企業側も深く関与していたことだ。2018年春に開始した今回のサービスは「リクナビDMPフォロー」と呼ばれる。DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)とは、ネット上に蓄積された自社の顧客データを統合するシステムのこと。

代表的なものの一つが「クッキー」と呼ばれる閲覧サイトを見た人の端末の中に保存される情報だ。そこにはサイトを訪れた日時、訪問回数などあらゆる情報が記録されている。

報道によると、サービス開始当初は応募者の氏名などの個人情報を隠すために、クッキー情報だけを採用企業が提供し、リクナビが保有するクッキー情報と照らし合わせて企業自身が個人名と辞退率を予測していたそうだ。

しかし、それだけでは個人を特定することができない。そのため2019年3月から採用企業に応募者の氏名、メールアドレス、大学名を提供してもらい、リクナビ会員の個人情報と直結させ、AIが計算した内定辞退率を弾き出していたという。

驚くのは、企業側が採用に応募してきた学生の個人情報を提供していたことだ。しかもこのサービス購入企業はトヨタ自動車をはじめとする大手企業38社。髙橋氏は企業の責任についてこう語る。

「企業のニーズがなければこのサービスが世に出ないし、ニーズが出てくること自体に企業側のモラルが崩壊している実態を表している。採用する側のモラルの低下には目を覆わざるを得ない。同じ人事を担う人間として、採用モラルの低下、学生不在の採用をしている人事がいることをとても寂しく感じる」

AIによる内定辞退率予測データは、扱い方によっては学生が不利益を被る可能性もある。サービス購入企業は「選考の合否に使っていない」と弁明し、あくまで内定辞退しそうな学生のフォローに使っていると言っているが、本当かどうかは誰にもわからない。いずれにしても個人に深刻な影響を与えかねないデータリスクが採用の現場で露呈したことは間違いない。

1/4ページ

最終更新:10/9(水) 12:51
BUSINESS INSIDER JAPAN

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事