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タイプが違うゆえに一概に優劣はつけられない… セ新人王「1人だけを選ぶ」のは酷

10/8(火) 11:44配信

東スポWeb

【球界こぼれ話・広瀬真徳】「史上まれに見るハイレベルな戦いだけど、タイプが違う打者の比較だから。一概に優劣はつけられないよね」

 旧知の球界OBが先日、頭を抱えながらこう話したのが今季のセ・リーグ最優秀新人(新人王)の行方である。

 毎年、全国の新聞やテレビ局等に所属する記者の投票により各リーグ1人ずつが選出されるこの賞。例年であれば何となく結果が読めるが、今季に限っては様相が異なる。ヤクルト・村上宗隆(19)と阪神・近本光司(24)の評価が拮抗しているからだ。

 村上は高卒2年目にもかかわらず、シーズン全143試合の出場で打率2割3分1厘、36本塁打、96打点を記録。1953年に中西太氏(西鉄)が記録した高卒2年目以内の本塁打日本記録に並ぶ活躍を見せた。

 近本も即戦力ルーキーとして開幕戦にスタメン出場。主に1番打者としてチームをけん引しながら安打を量産した。9月19日のヤクルト戦ではシーズン154安打をマーク。58年に長嶋茂雄氏(巨人)が打ち立てたセの新人最多安打記録を61年ぶりに更新し、盗塁王も獲得した。こちらも新人王有力候補であることは疑いようがない。

 ただ、成績を見ると両者は同じ打者とはいえ「本塁打+打点」「安打+盗塁」という異なる部門で好成績を残した。本来なら単純比較はできない。しかも、新人王は基準を満たした投手、野手すべての選手の中から両リーグ1人ずつしか選考できない。シーズン中のチームへの貢献度も加味される。この状況で投票により「1人だけを選ぶ」のは酷と言わざるを得ない。

 加えて、前記の通り投票するのは記者である。プロ野球取材に精通する精鋭による選考ではあるものの、投票には主観的要素が絡みやすい。特に「番記者」と呼ばれる年間を通して特定チームだけを取材する記者は、日頃から選手の人間性や努力を目の当たりにしているため情が入りやすい。この結果、記者数が多い人気チームの選手が有利になることもある。これでは公明正大な投票による選出とは言い切れない。

 冒頭のOBもこう言う。

「MVP(最優秀選手)やベストナインも記者投票ではあるが、これは現役の間に複数回受賞できる。でも、新人王は一度だけ。だからこそ投手と野手、または複数人が受賞できるような制度に変えてもいいと思う。タイトル獲得の有無はその後の選手生活や年俸にも大きく影響するからね」

 新人王にふさわしい成績を残した選手がリーグ内に複数いる場合は連盟から特別賞が与えられる場合があるが、その価値は似て非なるもの。受賞する選手側も“準新人王”では喜び半減だろう。

 突出した選手がおらず「該当者なし」という年がある一方、今年のようなシ烈な戦いになることもある新人王争い。果たして今年は周囲が納得する結果に終わるのか。いろいろな意味で注目したい。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

最終更新:10/9(水) 23:01
東スポWeb

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