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「すごい先生」「とても励みに」 吉野氏の教え子ら祝福

10/9(水) 19:42配信

朝日新聞デジタル

 ノーベル化学賞の受賞が決まった吉野彰氏(71)が教授を務める名古屋市の名城大では、教え子5人と関係者ら約30人が受賞の吉報を待った。吉野氏の名前が読み上げられた瞬間、一瞬シーンとなった後、「来た来た」「うそー」などと拍手して喜んだ。

【写真】吉野彰さんの受賞を喜ぶ学生

 吉野氏の授業を週1回受ける岩月駿弥さん(22)=大学院理工学研究科1年=は「改めてすごい先生だなと思った。リチウムイオン電池はIT化を支え、新しい時代をつくったと思う。ぱっと見はどこにでもいるおじいちゃんですけれど、話すと経験がすごく豊か。僕が教えてもらったのは、『壁をありがたく思え』ということ。壁にぶつかることもあるけど、壁にぶちあたって新しいことは生まれるということを教えてもらった。次に会う時は『おめでとうございます』と伝えたい」と話した。

 同じく教え子の三ツ井優人さん(24)=大学院理工学研究科1年=は「吉野先生の授業は他の先生より圧倒的にディスカッションの時間が多い。受け身ではなく、とても考えさせられる」という。吉野氏が今年、欧州の発明家賞を受賞した時、三ツ井さんは「僕らが研究で行き詰まった時にどのように受け止めていけばいいか」と尋ねたという。これに対し、吉野氏は「壁っていうのは来るのが早い方がいい。その分乗り越えていけばどんどん成長できるから」「悩みは悪いことではない」と答えたという。三ツ井さんは「先生の授業は笑顔が多いし、ジョークも入って聞きやすい。自分はいま自動運転の認識の研究をしているけれど、受賞はとても励みになります」と話した。(土井良典)


■共同研究者、相談すると「部屋に来て下さい」

 ノーベル化学賞受賞が決まった名城大の吉野彰教授と一緒に研究している名城大理工学部の土屋文教授(50)=エネルギー材料研究=は、吉野教授の人柄について「とにかく優しくて気さく」と語った。

 「こちらが話をしてもまず否定せず受け入れて、『こうしたら』とアドバイスをくれる」と言う。相談のメールをすると、「部屋に来て下さい」と快く応じてくれ、「敷居が低い」。

 吉野教授の言葉で大切にしているのは「研究は楽しく」ということだ。

 「現状満足ではなく、終わりはなく追求するのが研究者の世界。吉野先生はまさにそうだし、研究には先を目指す気持ちが大切だとあらためて感じる」と述べた。

■心に残ったメッセージ

 土屋教授の研究室に所属する理工学部4年の岩根慎平さん(21)は8月末、吉野教授の特別講演を聴いて、感銘を受けたという。「本当にすばらしい研究者とは、吉野先生のように環境やコストにも配慮した人なんだ」

 特別講演は、名城大の研究を企業や研究所に紹介する「テクノフェア」の企画の一つだった。「リチウムイオンの研究について専門的な話をするのかな」と想像していた岩根さんだったが、良い意味で裏切られたという。

 講演内容は、産業が進化を遂げてきた歴史的な背景の解説から、環境問題への影響や近年の企業の課題であるコスト削減についてだった。心に残ったのは「いくら良い研究をしたと自分で思っても、環境に大きなダメージを与えたり、コストがかかりすぎるものは世の中のためになるとは言えない」との吉野教授のメッセージ。

 来春からメーカーのエンジニアになる岩根さん。「学生のうちは意識することはなかった。でも、吉野教授研究に関わる者として心構えや意識を痛感した」と話す。

 こうした意識を持って研究を進めた吉野教授は、スマートフォンやノートパソコンのモバイルバッテリーの普及に貢献。「あのメッセージを胸に刻み、環境やコストに配慮したエンジニアになりたい」と話した。(土井良典、竹井周平)

■学長「ますますの活躍を」

 名城大の吉野彰教授のノーベル化学賞の受賞決定を受け、同大の小原章裕学長らは9日夜、記者会見した。「大学にとって受賞は2回目の快挙。吉野先生は好奇心と洞察力を座右の銘にリチウムイオン電池の開発と電池の小型化、軽量化に取り組んできた。先生のますますの活躍を祈念したい」と話した。

 吉野彰教授は2017年に名城大教授に就任した。リチウムイオン電池の開発について欧州発明家賞を受け、今年7月に名城大で記者会見した際には「開発当時は、今のようなモバイルIT社会は想像していなかった。電気自動車も夢物語だった」と説明。「壁にぶつかっても、世界が待っていることがモチベーションになった」と話していた。

 小原学長は9日夜の記者会見で「欧州発明家賞を受けた会見の後、雑談の中で『次は(ノーベル賞では)?』というお話をした。ニヤリと笑われたが、『皆さんが決めていただくものですので、待っているわけではない』とおっしゃっていた」と話した。

 名城大からのノーベル賞受賞は、2014年の赤崎勇氏の物理学賞以来、2人目。

     ◇

 2014年のノーベル物理学賞を受けた赤崎・名城大終身教授・特別栄誉教授は、吉野教授の化学賞の受賞を受け、「受賞おめでとうございます。受賞対象の発明はすばらしい功績だと思います。これからもご活躍をお願いします」とのコメントを出した。

朝日新聞社

最終更新:10/9(水) 22:21
朝日新聞デジタル

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