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ニーズ見据え、社会変える=企業研究者の視点結実-リチウム電池開発・吉野さん

10/9(水) 20:24配信

時事通信

 吉野彰さん(71)がリチウムイオン電池の開発に着手したのは1981年。

 最初から新型電池を目指したわけではなく、2000年にノーベル化学賞を受賞した白川英樹さん(83)が発見した「電気を通すプラスチック」、ポリアセチレン(PA)の研究が出発点だった。

 企業人として、研究が需要とどうつながるかを常に意識していた吉野さんは、PAの持つ電子を自在に出し入れできる特性が充電池素材に適していると直感した。電池業界を調べてみると、「充電池の小型軽量化へのニーズはあるが、開発は失敗続き。業界は商品化に困っている」(吉野さん)ことも分かった。

 目標は定まったが、開発は難航した。充電池には正極(プラス)と負極(マイナス)二つの電極が必要だが、多くの研究者が金属リチウムの負極と組み合わせる正極材料にPAを使うことを考えていた。

 これに対し、製品化を視野に入れる吉野さんは「問題点は99あってもいいが、あってはならないのは安全性の問題」と発火しやすい金属リチウムの使用を避け、PAを負極に想定した。だが、リチウムイオンを持つ適切な正極材料が見つからず、研究は一時、暗礁に乗り上げた。

 転機は82年暮れ。大掃除を終えた吉野さんが、取り寄せたままにしていたジョン・グッドイナフさんの論文に目を通すと、そこには探し求めていたリチウム酸化物の正極材料が。さらに論文には「組み合わせるべき適切な負極がない」と書かれていた。年明け早々、リチウム酸化物を正極、PAを負極にした電池を試作すると、充電も放電もスムーズに行えた。新たなリチウムイオン電池が産声を上げた瞬間だった。

 吉野さんは効率化と小型軽量化を進め、PAの代わりに炭素材料を使った現在のリチウムイオン電池が完成。91年に発売されると、IT時代の到来と歩調を合わせるように爆発的に普及した。

 リチウムイオン電池は高性能、大容量化を続け、IT機器だけでなく、電気自動車や家庭用電源などへの普及が進んでいる。

 吉野さんは「IT革命に続く次の変革は間違いなくスタートしている。それはエネルギーや環境に絡む『ET革命』。その中でリチウムイオン電池も貢献するはずだ」と意欲を燃やしている。 

最終更新:10/9(水) 22:09
時事通信

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