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<市原・ゴルフ場鉄柱倒壊>「必ず助ける」苦闘36分 消防隊員隙間1センチ広げ救出 【台風15号】

10/9(水) 11:59配信

千葉日報オンライン

 千葉県市原市五井にあるゴルフ練習場の鉄柱が台風15号の強風で倒壊し、複数の住宅に被害が出た事故。9月9日未明、近くで倒木を撤去していた同市消防局五井消防署高度救助隊の金井基容隊長(46)は鉄柱が倒れる瞬間を目撃し、直撃を受けた民家では寝ていた20代の女性が鉄柱などに挟まれ救助を待っていた。駆け付けた隊員たちは「頑張れ、必ず助ける」と声を掛け、36分間の苦闘の末に女性を助け出した。

 午前3時20分ごろ、金井隊長ら4人は練習場近くの倒木撤去に向かった。暴風雨とチェーンソーの音が響く中、異様な音が聞こえた。いったん作業を中断し周囲を確認。金井隊長が再開を指示した直後、体が浮く強風が再び吹き、言葉で表現できない異常な音が聞こえた。音がした方に目を向けた金井隊長は「鉄柱が広範囲にわたって民家側にすごい勢いで倒れたのを目撃した」。午前3時38分だった。

 「鉄柱倒壊により、付近住民の安否確認に向かう」。市消防局警防本部と同署に金井隊長が報告した。鉄柱は電柱を巻き込み倒れており、強風にあおられる電線に触れたら感電の恐れがあった。プロパンガスのボンベからガスも吹き出す中、ライトの明かりを頼りに倒れた鉄柱の下をはうようにくぐり、被害のあった住宅や車両を回り状況把握に努めた。

 午前4時25分、119番入電。鉄柱が倒れて、住宅内にいた20代の女性が下敷きになった可能性があることが判明する。資機材を携え現場住宅の2階に上がると、屋根を突き破った鉄柱やがれきに首から下を挟まれた女性がいた。「一番痛い所はどこ」。川島泰典副隊長(38)の問い掛けに、女性は「胸が痛い」と苦しそうに答えた。

 救出作業を続け、40トンまで持ち上げることができる救助用エアバッグを使っても鉄柱はびくともしない。さらに、最大約45トンの力で隙間を広げる電動スプレッダーでも持ち上がらなかった。

 しかし、女性の「少し楽になった」との言葉に、あと1センチの拡張を決断。手が入るわずかな空間ができ、がれきを取り除いて慎重に女性を助け出した。着手から救出まで36分、女性の家族ばかりか金井隊長の目にも涙が浮かんでいた。

 金井隊長と川島副隊長は「経験値とチーム力は確実に上がった」と声をそろえる。善場吉洋署長(52)も「隊長の的確な判断と指示に基づき隊員が活動できたのは訓練の成果」と胸を張った。

 女性の家族は「ただただ感謝しかない。鉄柱の状況を見ると助かったのは奇跡」と話した。

最終更新:10/9(水) 12:04
千葉日報オンライン

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