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『ぼけますから』映画公開から1年間に起きたこと 施設か自宅か……カメラ回し続ける娘に迫られた決断

10/17(木) 7:00配信

withnews

家族が認知症になった姿をドキュメンタリー映画にした『ぼけますから、よろしくお願いします。』の封切りから1年が経とうとしています。監督の信友直子さん(57)は、その後もカメラを回し続けていました。脳梗塞(こうそく)で倒れた認知症の90歳の母。「身内」での介護にこだわってきた98歳の父。「母をもう、努力しないと愛することができません」と責めた娘の直子さんは、今、「穏やかで諦めのつく死」を意識するようになったと言います。今も毎週、各地で公演や上映会に呼ばれるほど反響がある映画の背景にあるものは何か。映画が浮かび上がらせた現代日本が直面する「老い」を考えます。(朝日新聞記者・岩崎賢一)

【画像】あなたならどうする? 認知症で脳梗塞を支える98歳の夫が送る一人暮らしの日常

映画ヒットで街の人たちが見守り役に

映画の主人公は、母の信友文子さん(90)と父の良則さん(98)です。時々、帰省する直子さんが、認知症と診断され治療を受けながら葛藤を抱えて生きる文子さんと、それを一定の距離感を持って支える良則さんの1200日の記録です。直子さんが自らカメラを持って撮影しました。そこには「正解のない日常」がいくつも盛り込まれていて、認知症の患者がいる家族の人たちに共感の輪が広がっています。

直子さんは「映画を撮ったことで、父も母も地元ではけっこう有名人になりました。父が街を歩いていても声をかけてくれるので、街全体で見守ってくれているという感じです」と話します。

「映画みたよ」「かっこよかったよ」「写真撮らせて」「握手してください」などと声をかけられ、時々、友人らからSNSで写真が送られてくることがあるそうです。

認知症の母を襲った脳梗塞

映画は在宅で暮らす母で終わっていますが、文子さんは昨年9月30日夜、自宅で倒れ、急性期病院に運ばれました。病名は脳梗塞。その時、良則さんが気にしたのは「身内」という考えでした。1年前のインタビューではこう言っていました。

「これは大事じゃ。どうしようか。認知症で私がへこたれましたからね。認知症に加えて脳梗塞。相談する相手がおらんので不安になりました」

そしてその後の夫婦生活についてこう語っていました。

「私の中には、身内は身内で、という考えがありますね。私が元気な間は、面倒をみようという気持ちがあります。いつまで元気が続くか分かりませんがね」

文子さんは、1カ月ほど急性期病院で脳梗塞の治療を受け、その後、リハビリ病院に移りました。リハビリは順調に進みましたが、逆側で新たな脳梗塞が起きてしまいました。直子さんは「右も左もつかまって体を支えることができなくなってしまったので、リハビリはあきらめざるを得ませんでした」と振り返ります。

さらに、嚥下(えんげ)の機能が低下したこともあり、誤嚥(ごえん)性肺炎を起こすこともありました。誤嚥性肺炎がきっかけで、高齢者が命を落とすことがあります。文子さんは点滴で栄養を補給していつつも、直子さんはだんだんやせ細っていくのが気がかりでした。そこで医師に相談すると胃ろうをすすめられました。

これまでに乳がんのドキュメンタリーを撮影するなど、医療と関わる作品を出してきた直子さんですが、悩んだそうです。

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最終更新:10/17(木) 7:00
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