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中国“失敗”で暗雲も…脱・「液晶のシャープ」、8Kを軸に再成長を目指す

10/10(木) 16:00配信

産経新聞

 経営危機から立ち直ったシャープが、超高精細映像技術「8K」を軸に再成長を目指している。テレビ向けの液晶パネルの販売にとどまらず、下水道といったインフラ保守や医療、教育などの分野で技術を応用し、市場の開拓を試みている。平成28年8月に台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入って3年あまり。米中貿易摩擦の影響などで足元の業績が揺らぐ中、かつての「液晶のシャープ」は「8Kのシャープ」に生まれ変わろうとしている。(林佳代子)

 ■下水道、亀裂自動検知

 東京都港区のビルの一室にある「8Kラボ クリエイティブスタジオ」。ビデオカメラやディスプレーなど約20種類の8K関連の機材が並び、実際に機材に触れながら撮影や映像編集を体験することができる。シャープが今年6月に法人顧客を対象に開設した完全予約制の商談スペースだ。

 画素数が従来のフルハイビジョンの16倍という特徴から、8Kには幅広い分野のニーズがある。商談には技術者が立ち会い、顧客ごとの要望に応じて製品やサービスを検討。当初は年間200社の来場を目標に掲げていたが、開設から3カ月足らずで70社を超え、すでに10件以上の製品の納入が決まった。

 例えば美術館向けには、スマートフォンのように指で画面を拡大したり縮小したりすることで絵画の作者の筆づかいを確認できるモニターを製作。ほかにも内視鏡手術の様子を鮮明に映し出すモニターや、下水道管の細かな亀裂を自動で検知するシステムの開発を始めている。

 シャープは平成29年に世界初の8Kに対応したテレビを発売したものの、価格の高さやコンテンツ不足がネックになって普及が遅れた。さらに今年に入り、ライバルの韓国メーカーやソニーが8Kテレビの発売を表明。将来的な値下げ競争が懸念されることから、シャープはテレビ以外の分野の需要を取り込む戦略を打ち出した。

 8Kラボの伊藤典男所長は「カスタムメイドの製品やサービスは現時点で大きな利益を生まないかもしれないが、将来の利益拡大にはつながるはずだ」と期待する。当面は法人向けで年間10億円の売上高を目指す考えだ。

 ■中国「失敗」で暗雲

 28年8年に鴻海の傘下に入ったシャープは、徹底したコスト削減で業績を回復させ、29年3月期に3期ぶりの営業黒字を達成。同年12月には東証の第1部に復帰した。

 今年6月には経営危機の際に主要取引銀行に発行した優先株を全て買い取って消却し、経営再建が事実上完了した。その一方で、足元の経営は順風満帆とは言い難く、8Kを重点領域に据えた成長戦略にも暗雲が垂れ込めている。

 令和元年4~6月期の連結決算は、最終利益が前年同期比35%減の125億円と苦戦。中国や欧州でのテレビの販売の不振が響き、テレビやディスプレーを扱う事業領域では54%の営業減益となった。

 経営再建の過程では、鴻海グループの販売網を活用した中国でのテレビ販売の伸びが大きく貢献したが、後に過度な値下げがシャープのブランドイメージの毀損(きそん)を招いたという。平成31年1~3月期以降は大量の売れ残りを抱えることになり、収益が悪化した。

 鴻海出身の戴正呉会長兼社長は、今年6月の株主総会で、中国での販売戦略を問う株主の質問に「失敗した」と謝罪。自らが先頭に立って販売網を再構築するとともに、欧米で事業の拡大を図る方針を示した。

 その上で、中国や韓国のメーカーが開発に本腰を入れつつあり、市場の成長が期待できる8K事業は、液晶パネルに強みを持つシャープが世界をリードできると強調。他社に先駆けて機器やサービスを開発し、将来の成長を牽(けん)引(いん)する事業に育て上げるとした強気の経営戦略を維持した。

 ■8K搭載「ダイナブック」

 シャープは8K技術を応用した企業向け取引(BtoB)に注力する一方、近い将来にはテレビ以外の8K関連製品を相次いで市場に投入していく計画も立てている。

 まずは年内に8K映像を撮影するための小型のビデオカメラを国内で発売し、来年以降は海外でも展開。

シャープが東芝から買収したパソコン事業子会社「ダイナブック」からは、来年春ごろには8K対応の機種を発売する予定だ。

 テレビに加えてビデオカメラやパソコンを商品化する意義について、シャープの広報担当者は「8Kの映像コンテンツの作成から編集、表示までの一連の作業を手がけることが可能になる」と話す。

 販売先は動画を配信する会社のほか、インターネットに動画を投稿するユーチューバーなどもターゲットにするという。

 シャープは令和3年3月期に8K関連で3千億円を売り上げることを目標に掲げているが、主力の液晶パネルの販売合戦は激しさを増しており、達成は難しいとの見方も出ている。過去に「液晶一本足打法」の経営で苦境に陥ったシャープが、いかに液晶以外に8Kの用途を広げ、ブランド化を進めていくのか。

 再建を果たした今、改めて真価が問われることになる。

最終更新:10/10(木) 16:00
産経新聞

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