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日本人が食の安全を意識しはじめたのはいつから?「夏子の酒」と「有機農業」の深いかかわり【平成食ブーム総ざらい!Vol.14】

10/10(木) 20:01配信

クックパッドニュース

約30年続いた平成は、4月30日に終わりを迎えました。「令和」になった今こそ、平成にあったさまざまな食のブームや事件を振り返ってみるのはいかがでしょうか。昔懐かしいものから直近のものまで、作家・生活史研究家の阿古真理さん独自の視点で語っていただきます。

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一日で読了!『夏子の酒』で日本酒の世界に引き込まれた私

1988年に『週刊モーニング』(講談社)で始まった人気マンガ、『夏子の酒』(尾瀬あきら)を私が読んだのはだいぶ後で、2000年頃のことだった。先に、私と同世代の主人公、夏子の祖母を描いた続編『奈津の蔵』を『週刊モーニング』で連載中に読んでいて、仲間たちから「あれは読んどかなあかんで」と聞かされていたのが、『夏子の酒』だった。いつか読もうと思っていたから、神保町の古本屋で出合うと大人買いし、喫茶店で読み始めると、あっという間に引き込まれた。

一緒にいた夫から、「もう帰ろうよ」と言われハッとして地下鉄に乗ったが、車内で続きを読み、結局1日で文庫本12巻分を読了してしまった。
同書で酒蔵に興味を持った私は酒造りに関する本を読み漁り、酒蔵を回る取材も企画した。しかし、日本酒は好きだけどアルコールに弱い、という致命的な欠陥を持つ私は、蔵で働く人たちに心を開いてもらうことは難しい。結局その世界に深入りすることは断念した。

さて、『夏子の酒』は、東京の会社でコピーライター修業をしていた夏子が、兄の早逝を受け、村に帰って酒造りに奮闘する物語だ。

兄は死の直前、幻の在来米「龍錦」を新潟の農業試験場から見つけて持ち帰っていた。昔は地元で育てていたそのコメをふやして酒を仕込むことが、兄の夢だった。その夢を実現させるために夏子は蔵に戻ったのだ。

龍錦が村から消えたのは、粒が大きいので倒れやすく、栽培が困難だったからだった。農薬や化学肥料も使えない。当然、地元農家に打診しても栽培を渋る。ヘリコプターで田んぼに農薬を撒く空散も辞めさせなければならない。そんなことを求めれば、通常の慣行農法で収量を確保し生活してきた他の農家も巻き込むことになってしまう。

最初の年、夏子は一人で田んぼを借り龍錦を育てる。草取りに励み、台風が襲ってきたとき、雨風の中見回りに飛び出して熱を出す。村の人たちは、蔵のお嬢さんがコメの有機栽培を始めた様子を、陰で観ている。噂を聞いたのだろう。独りで有機農業に取り組む「変わり者」も訪ねてくる。「有機農業は一番新しい21世紀の農業だ!やがて世界を席巻する」と断言するその男や仲間を得て、龍錦の栽培が広がっていく。日本酒造りのマンガの前半はたっぷり、戦後のコメづくりと農村のあり方を問う話なのである。

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最終更新:10/10(木) 20:01
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