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NY大暴落から90年 世界は10月を乗り切れるか?

10/10(木) 14:03配信

ニュースソクラ

【けいざい温故知新】米中摩擦、BREXIT、弾劾リスク・・・リーダー欠く世界に難題次々

 「大恐慌」の端緒となったウォール街の大暴落は1929年10月24日、「暗黒の木曜日」として知られる。90年後の2019年10月24日も、たまたま木曜日にあたる。脅かすわけではないが、この10月は数々のリスクが待ち受ける地雷原だ。

 29年9月3日、NYダウは最高価格をつけた。以後、軟調になり1か月で17%ほど下げた。そして暗黒の木曜日。ウォール街に群衆が集まり騒然となり、400人の警官が出動して警戒に当たった。この日だけで11人の投機家が自殺したとされる。翌週は、もっとひどい暴落が待ち受けていた。

 1日に発表された米製造業景況指標が10年ぶりの低水準になり、米国株が下げ、欧州や日本の市場にも波及する場面があった。世界経済の減速は、誰の目にも明らかだ。米中貿易戦争が下押し要因になっていることも。

 世界貿易機関(WTO)は1日、19年の世界貿易(取引量)の見通しを、4月時点の2.6%増から、10年ぶりの最低水準の1.2%増に下方修正した。国際通貨基金(IMF)は、昨秋以降4回下方修正した19年の世界経済成長率見通しを、7月時点の3.2%から、さらに一段階引き下げるという。

 出だしから波乱含みの10月は、前途も多難。米国も中国も弱い景気指標が相次ぐ中、10日から閣僚級の米中貿易協議が始まる。手打ちできればよいが、交渉決裂や再交渉となれば、市場に激震が走りそうだ。

 27日には、アルゼンチン大統領選挙がある。予備選結果から、左派ポピュリスト候補が優勢だ。すでに通貨危機が進行していて、同国史上9回目のデフォルト(債務不履行)は不可避との見方が強い。そうなれば、新興国全般の資本調達に悪影響は避けがたい。

 31日にはBREXIT(英国のEU離脱)の期限がくる。ジョンソン英首相が出した最終案にEUは冷たい。「合意なき離脱」となれば混乱必至で、ダメージは英国、EUに止まらない。日本の消費増税の反動も、10月リスクの1つだ。

 イランとサウジアラビアの対立がエスカレートする中東の地政学リスクは、目を離せない。香港騒動の行方も要注意だ。中国がしびれを切らせて強硬策に出ると、米中関係は、修復どころではなくなる。

 加えて、これまでも、その言動が攪乱要因になってきたトランプ米大統領が、下院で弾劾調査が始まったことで、何をしでかすかしれない“トランプ・リスク”も高まった。

 90年前のウォール街の暴落は、世界を巻き込む大恐慌に発展したが、さまざまな解釈がある。ミルトン・フリードマン教授は、連邦準備制度(FRB)のミスで、普通の不況を大恐慌にしてしまった、という。通貨量を増やすべきところを、絞ったからと。

 リーマン危機後の世界不況で、FRBもECB(欧州中銀)も日銀も、こぞって利下げし、バランスシートを膨らませ、非伝統的金融政策で対応した。だが、次の世界不況が来ても、中銀の手段は少ない。FRBの利下げの余地は限られる。ECBや日銀はマイナス金利の深掘りなどに手をつけるしかないが、金利を下げすぎると逆に景気を悪くする、という学者もいる。

 チャールズ・キンドルバーガー教授は、覇権国の不在を世界恐慌の要因と見た。覇権国だった英国が力を失う一方、経済力で英国を凌駕した米国に、その地位に就く意志も準備もなかった。国際的な最後の貸し手がいないまま、危機が広がった。

 リーマン危機後の米国は、G20(20カ国・地域)サミットを緊急招集するなど国際協調を先導した。いざという時、同じ役割を「アメリカ・ファースト」のトランプ政権に期待できるだろうか。

 リーマン危機からの回復では、4兆元の景気対策を打った中国の貢献も大きかった。今の中国は経済減速が急で、むしろ世界経済の足を引っ張りかねない。

 10月を無事、乗り切れるだろうか。世界経済は正念場だ。

■土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)

最終更新:10/10(木) 14:03
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