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ノーベル化学賞、日米の科学者3人に リチウムイオン電池開発

10/10(木) 12:26配信

BBC News

ポール・リンコン、BBCニュースウェブサイト科学編集長

スウェーデンの王立科学アカデミーは9日、リチウムイオン電池の開発に寄与した3人にノーベル化学賞を贈ると発表した。リチウムイオン電池が「モバイルの世界を可能にした」と評価している。

米テキサス大学オースティン校のジョン・B・グッドイナフ教授(97)、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校のM・スタンリー・ウィッティンガム教授(77)、そして日本の旭化成名誉フェローで名城大学教授の吉野彰氏(71)の3人。900万スウェーデンクローナ(約9700万円)の賞金は3人で分け合う。

グッドイナフ氏は、ノーベル賞受賞時の年齢としては史上最高齢。

リチウムイオン電池は軽く、再充電が可能な電池で、携帯電話やラップトップ、電気自動車(EV)などに利用されている。また、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの蓄電にも活用されている。

ノーベル委員会は声明で、「リチウムイオン電池は世界中で、私たちがコミュニケーションを取り、働き、勉強し、音楽を聞き、情報を検索するのに使う携帯電子機器に電力を供給している」と説明。

オロフ・ラムシュトロム委員(米マサチューセッツ大学)は、リチウムイオン電池が「モバイルの世界を可能にした」と話した。

また、サラ・スノージラップ=リンス委員(ルンド大学、スウェーデン)は、「私たちは技術革命にアクセスできるようになった。受賞者は軽くてさまざまな端末で利用できる可能性のある電池を開発した」と評価した。

■リチウムイオン電池の誕生

リチウムイオン電池の基礎は1970年代、石油ショックの最中に生まれた。英ノッティンガム生まれのウィッティンガム氏は、化石燃料に依存しないエネルギー技術の開発を進めていた。

ウィッティンガム氏は、エネルギーの豊富な二硫化チタンという物質を発見し、リチウム電池のカソード(正極)として利用した。

一方、アノード(負極)には金属製のリチウムを使った。リチウムは電子を放出する作用が強く、電池に使うには非常に有用だ。

リチウムの利用によって、新しい電池は2ボルト(V)超の出力が可能になったが、同時に爆発しやすいという特性も備えてしまった。

ドイツ生まれのアメリカ人グットイナフ氏は、カソードを二硫化チタンではなく金属酸化物に置き換えることでリチウム電池を改善できるのではないかと考えた。

さまざまな金属を試した結果、グッドイナフ氏は1980年、コバルト酸リチウムによってリチウム電池の出力を4ボルトまで押し上げることに成功した。

大阪生まれの吉野氏は1985年、この研究を元に、世界で初めて商業化に耐えられるリチウムイオン電池の開発に成功した。

ソニーは吉野氏の研究成果を受けて、1991年に初めて、リチウムイオン電池を発売した。

■「あらゆる場所で」

ノーベル委員会のラムシュトロム委員は、「これはとても、とても良い電池だ。高出力でエネルギー効率も高く、あらゆる場所で使われている」と話した。

イギリス王立化学協会のデイム・キャロル・ロビンソン教授は、「彼らの先駆的な研究は、どこを見ても使われている。あなたのポケットの中の携帯電話からEV、未来の家庭向け蓄電設備にいたるまで、化学がどうやってこうした道を切り開いているのかを示す非常に良い例だ」と話した。

アメリカ化学協会のボニ-・カーペンター会長は、「過度の気候変動による脅威が増す中、今日の発表はエネルギーの携帯性に光を当てるすばらしいものだ。世界中でコミュニケーションや運輸、生活の根幹を支える機器をこれまでにないほど進化させてくれた」とコメントした。

イギリス王立協会の会長を務めるサー・ヴェンキ・ラマクリシュナン教授は、「たった一人の努力が科学の重大な発見に結びつくことは非常にまれだ。今年のノーベル化学賞がこのような形で分かち合われたのはまさしくこのことを示している」と述べている。

(英語記事 Lithium-ion batteries take chemistry Nobel)

(c) BBC News

最終更新:10/10(木) 17:42
BBC News

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