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【吉野氏ノーベル賞】浜通り創生につながる(10月11日)

10/11(金) 9:19配信

福島民報

 今年のノーベル化学賞は、旭化成名誉フェローの吉野彰さんら三人に贈られる。充電して何度も使えるリチウムイオン電池の開発が認められた。小さくて軽量で、蓄える電気の量が多い。スマートフォンやノートパソコンを普及させ、IT革命をもたらしたと言える。

 吉野さんは一九八一(昭和五十六)年からリチウムイオン電池の開発に取り組み、一九九一(平成三)年、現在の炭素材料を使った製品発売にこぎ着けた。電極に使う材料が定まらずに苦労を重ねたときにも、安全性を最優先に考えた。さらには、研究が需要とどのようにつながるかを常に意識していたという。企業人のかがみである。

 今回のノーベル賞は、米国の大学の研究を日本の企業が発展させた。当初からの共同研究ではないが、産学連携が実を結んだ。

 浜通りに新産業を集積する福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想で、復興庁は国際教育研究拠点整備を検討している。教育環境の拡充と併せ、育った人材を地元に定着させる雇用の場が欲しい。

 いわき市は、バッテリーバレー構想を進めている。リチウムイオン電池などの充電可能な二次電池製造と関連産業の集積を目指す。IT機器だけでなく、家庭の蓄電池や医療機器、航空宇宙分野など活用できる分野は幅広い。中でも電気自動車は、地球温暖化防止に役立つと期待が高い。構想実現は大きな雇用創出につながる。

 進出企業と教育研究拠点との共同研究は、地域発展の好循環を生む。現在、国内のバッテリー関連産業のほとんどが西日本に立地している。大規模災害発生時のリスク分散の観点からも有益だろう。

 構想をけん引する推進機構は、二〇一六年から「いわきバッテリーバレーフェスタ」を毎年開催する。蓄電池を組み立てたり、移動支援ロボットに試乗したり、来場者は楽しみながら最新技術を学ぶ。機構の代表理事を務める庄司秀樹さんは、いわき市の東洋システムの社長として、リチウムイオン電池の試験装置開発を手掛ける。吉野さんと親交が深く、十一月に開催する同社の創立三十周年記念行事に招待している。

 吉野さんは十日の会見で、研究開発をマラソンに例えて「必ずどこかにゴールがあり、宝物がある。自信を持てれば、苦しくても乗り越えられる」と語った。浜通りの復興創生への道は険しいが、乗り越えた先に大きな宝物があると信じる。(鈴木俊哉)

最終更新:10/11(金) 9:19
福島民報

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