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オーストリア総選挙、クルツ首相が圧勝も連立は難航か

10/11(金) 14:01配信

ニュースソクラ

【欧州から】躍進「緑の党」が政権入りなら、欧州政治の先駆けに

 9月29日、オーストリアで総選挙が行われた。今回の選挙は、昨年の総選挙後オーストリアの政権を担っていた、クルツ国民党党首を首班とする、国民党、自由党の連立政権の瓦解に伴うものである。

 クルツ政権は昨年の総選挙により誕生したが、本年5月、連立パートナーの自由党の前党首シュトラッへが、ロシアの企業関係者から不正政治献金供与の申し出を受けている状況を撮影したビデオが公開されたのをきっかけに、連立政権が解消され、これまでの連立相手・自由党を含めた野党からクルツ首相に、不信任案が提出され成立し、解散総選挙となった。

 若干33歳のクルツ党首に対する有権者の人気は高く、今回の総選挙の結果も、それを裏付ける格好となり、クルツ党首の率いる国民党が大勝した。国民党の獲得議席数は、前回比9議席増の71議席。一方、国民党がかつて大連立政権を組んでいた社民党は、5議席減の40議席。

 また党首スキャンダルで連立を解消した自由党は、10議席減の31議席となった。また前回の総選挙で議会での議席をすべて失っていた緑の党は、今回はなんと26議席獲得し、驚異的な議会復帰を果たした。

 オーストリア議会の総議席数は183議席で、クルツ国民党は大勝したものの71議席を獲得したに過ぎず、過半数の92議席に足りない。これからクルツ党首は連立工作にかかるが、連立政権作りは容易ではない。議会の過半数を確保するための連立相手の候補は、社民党、自由党、緑の党の3党である。

 社民党と連立した場合、連立与党の議席数は111議席となる。また自由党との連立では102議席、緑の党とでは、97議席で、いずれも過半数議席数92を超える。しかし、いずれの党とも、連立を困難とする問題を、クルツ国民党は抱えている。

 小さな政府、ネオリベラルな経済政策を唱えるクルツ国民党は、大きな政府のもと社会福祉充実を進めようとする社民党とは政策が著しく異なり、クルツが、党首就任後同党との大連立を解消したのもこのためであった。したがって、クルツ党首にとって、社民党との連立は好ましい選択肢ではない。

 政策的に近いのが自由党であるが、前党首シュトラッへのスキャンダル勃発後も、シュトラッへ前党首による党資金の私的流用などの不正が発覚し、シュトラッへ前党首は政界を引退した。このため、同党は党の再建を最優先とする方針で、仮に国民党から連立の申し出があっても、断る方針で党の大勢が一致している。

 緑の党は、前回の欧州議会選挙に引き続き今回の選挙でも圧勝した。緑の党の躍進は、オーストリアのみならず、欧州全体でみられる。この夏、パリで40度を越える最高気温を記録し、欧州全体で地球の温暖化に対する強い危機感が広がっていることがこの背景にある。

 ドイツでは、緑の党への支持率が、メルケル首相の率いる保守党、CDU/CSUと横並びになるところまで伸びている。今回オーストリアで緑の党が大躍進したのは、選挙戦後半に環境問題に焦点を当てた国連総会が開催されたことに加え、スゥェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥンベリの呼びかけに応じた中学生・高校生らのデモが、欧州全土で行われたことも影響しているといわれている。

 総選挙直前の9月27日、オーストリアでかつてない規模の中学生・高校生などのデモが行われ注目を集めた。オーストリアでは、16歳以上の国民に選挙権が与えられており、若年層の支持が、緑の党の躍進につながったのではないかと推測される。

 クルツ国民党の連立パートナーの現実的候補に緑の党も上がりつつある。緑の党との連立を考えるうえでの、最大の障害は難民受け入れ問題である。クルツ党首は、難民受け入れ問題につき極めて慎重で、難民の大量流入を防ごうとしている。一方、緑の党は人道的立場から難民の受け入れに前向きの姿勢をとっている。この食い違いをどう克服するかが、連立交渉の大きな課題となろう。

 ドイツでは、来年末政界引退を表明しているメルケル後の政権として、保守・緑の連立政権の誕生が取りざたされている。オーストリアで、もし国民党・緑の党連立政権が実現すれば、その先駆けとなろう。

 2000年に、極右・ポピュリスト政党と評される自由党と国民党の連立政権を誕生させたオーストリアは、その後の欧州における極右・ポピュリスト政党の政権参加の先駆けとなったが、今回も同様、緑の党の政権参加の先駆けとなるのではあるまいか。

■茶野 道夫(ウィーン在住コンサルタント)
日系金融機関のウイーン駐在代表を定年退職後、不動産投資コンサルタント。日系金融機関のウイーン駐在代表をつとめた後、定年退職。ウイーンで、不動産投資コンサルタント。英、独、仏、西、伊、露語に通じ、在欧経験は30年を超えた。英国、スペインにも勤務。

最終更新:10/11(金) 14:01
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