ここから本文です

博士課程を経ないノーベル賞受賞者が増加。文科省の大学院重点化政策の意義は?

10/11(金) 13:12配信

THE PAGE

 今年のノーベル化学賞は、リチウムイオン電池を開発した旭化成名誉フェローの吉野彰氏らが受賞しました。吉野氏は企業の研究者であり、大学院博士課程を修了して学位を得たわけではなく、自身の業績を論文として提出し学位を取得した、いわゆる「論文博士」です。

 日本は実学を重視していたこともあり、企業で研究をしながら、論文博士として学位を得る人は少なくありませんでした。しかし文部科学省は大学院重点化政策を掲げ、基本的に大学院の博士課程を修了した人に学位を授与するよう求めており、近年は論文博士の比率は低下傾向にあります。しかしながら、博士課程での教育を重視することが、学術成果に直結しているのかというと微妙なところでしょう。

 吉野氏は、京都大学工学部を卒業後、同大学で修士課程を修了した後、旭化成に入り、同社での研究成果をもとに、大阪大学から学位を授与されました。2002年に同じくノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏も、東北大学工学部を卒業後、島津製作所に入社しており、大学院での教育は受けていません。また、2014年に青色発光ダイオードでノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏も、1994年に徳島大学から博士号を授与されていますから、やはり企業在籍時の成果が学位の対象となっています(中村氏は米国籍を取得しており、ノーベル賞を受賞した時点ではすでに日本人ではありませんでしたが、日本で成果をあげた人物ということで取り上げます)。

 企業での研究を重視し過ぎると、実学に偏ってしまうという問題がありますが、ノーベル賞を受賞した研究成果を見ると、近年は実学寄りのものが多くなっているのが実状です。

 数少ない日本人ノーベル賞受賞者のうち、一定割合が論文博士であるという現実を考えると、大学院教育のみを重視するという文部科学省の方針について、一部から疑問の声が上がる可能性は否定できないでしょう。

 ノーベル賞の受賞者は時間をかけて選別されますから、受賞対象となる研究業績は、10~20年前のものになるのが普通です。吉野氏や田中氏、中村氏の研究も日本がまだ豊かだった時代の成果であり、今後は、日本人のノーベル賞受賞者数が激減するとの予測も聞かれます。

 十分な予算を基礎研究にかけられないという日本の現状を考えた場合、企業との連携強化について、再度、検討する必要が出てくるかもしれません。


(The Capital Tribune Japan)

最終更新:10/11(金) 13:12
THE PAGE

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事