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「山之口貘詩集」 沖縄よ、傷は深いと聞いているが 【あの名作その時代シリーズ】

10/14(月) 18:00配信 有料

西日本新聞

笑顔の絶えない元気いっぱいの沖縄のオバアに出会った。「今、87歳。でもまだ自分でメシ炊くよー。現役さー」

 「あの名作その時代」は、九州を舞台とした作品、または九州人が書いた著作で、次代に残すべき100冊を選び、著者像や時代背景、今日的な意味を考えながら紹介するシリーズです。西日本新聞で「九州の100冊」(2006~08年)として連載したもので、この記事は07年9月9日付のものです。

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 真夏の沖縄で、一本の木を探した。

 名前は「うむまあ」。那覇市で尋ね歩いたが見つからない。「モモタマナ」という和名を告げると、ようやくある男性が公園に案内してくれた。

 幹から水平に伸びた枝に、大人の手のひらよりも大きな葉を茂らせたうむまあは、立派な木陰をつくる木だった。詩人、山之口貘が「世はさまざま」に書いている。

 〈木としての器量はよくないが詩人みたいな木なんだ/いつも墓場に立ってゐて/そこに来ては泣きくづれる/かなしい声や涙で育つといふ/うむまあ木といふ風変りな木もある〉

 大きな葉は、陽光を透かして柔らかく輝いていた。全体におおらかで優しい風情がある。貘の詩を思わせる木だった。

     ◇

 十九歳で沖縄を出て、五十九歳で他界するまで、貘は東京でつつましく暮らしながら、詩を書いた。「精神の貴族」と仲間から慕われた人柄は真っすぐで温かく、すがすがしかった。貧しくも実直な生活に材を採った詩は、柔らかく膨らんでいる。 本文:2,525文字 写真:1枚

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西日本新聞

最終更新:10/14(月) 18:00
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