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日本人が弱い金融リテラシーの分野と特徴を解説

10/16(水) 7:11配信

マイナビニュース

日本人が弱い金融リテラシーの分野と特徴を解説

お金に関する知識や判断力を意味する金融リテラシー。他国に比べ金融リテラシーが低い傾向にある日本ですが、では「どのように低いのか」、「どういった分野が他国に比べ苦手なのか」具体的に見ていきたいと思います。

米国調査やOECD(経済協力開発機構)調査と比較

2016年に行われた大規模な金融リテラシー調査(金融中央広報委員会)では様々なクイズや質問形式で25,000人もの対象者に調査が実施されており、それがスコア化されています。そして一定の質問は他国で行われている調査と整合性が保たれており比較することが可能です。もちろん、日本は全てにおいて他国に劣っているわけではありません。

例えば、「金利」に関する質問への正解率は多くの国よりも日本の方が高い正解率を誇っています。以下、実際の問題です。皆さんも考えてみてください。


100万円を年率2%の利息がつく預金口座に預け入れました。それ以外、この口座への入金 や出金がなかった場合、1年後、口座の残高は幾らになっているでしょうか。利息にかかる 税金は考慮しないでご回答ください。
A.102万円
B.102万円以外
(一部筆者編集)


OECD加盟で同調査を行った14カ国の平均正解率は58%のところ日本は66%となりました。なお、正解はAです。単純に100万円の2%が2万円であり、それ以外の要因を考慮しなければ102万円となります。

「金融リテラシー」と一言にいってもお金を管理する、計算をする、適正な判断をするなど様々な要素があり、育ってきた環境や国の文化なども大きく影響しそうですね。

日本人が弱い金融リテラシー分野2つ

今回は私達の弱点を知ることが大きなテーマなので、各国の平均よりも大きく平均点が下回るものを2つ紹介します。1つはお金への注意力です。


自分のお金の運用や管理について、十分注意している
(あてはまる) (どちらともいえない) (あてはまらない)
(一部筆者編集 実際は5段階で回答)


上記質問に対して各国8割以上の人が「あてはまる」と回答している中、日本は6割未満に。調査結果を素直に受け止めれば、お金の運用や管理について自信の無さが表れています。もう1つはインフレに関する問題です。


高インフレの時には、生活に使うものやサービスの値段全般が急速に上昇する。
(正しい) (間違っている) (分からない)


正解は「正しい」ですが、「正しい」を選んだ割合は約6割で3割以上の人が「分からない」と回答しています。OECD諸国の正解率は8割に達しているため、大きく差が生じた格好です。

日本人はインフレへの理解が乏しい

2つの結果を簡潔にまとめると「お金の運用や管理に注意しておらず、インフレへの理解が乏しい」というのが典型的な日本人の金融リテラシーの弱点といえそうです。
この原因を探ってみたいと思います。

まず、私達日本人は様々な調査結果から「投資に保守的で元本保証を好む」傾向が指摘されています。投資というとギャンブルと感じる人も少なくなく、また銀行への信頼度が高いため、ほとんどの人がお金の管理は「銀行の普通預金や定期預金」を中心に行っています。この傾向は金融リテラシー調査でも明らかになっています。

古くまでさかのぼると、第2次世界大戦からの復興がいち早く進んだのは日本人が勤勉で熱心に貯蓄を行っていたからという指摘もあるぐらいです。

そういった背景があり、筆者自身もそうでしたが、学生から会社員(社会人)となり、便利な銀行に総合口座を開設し、給与振込口座として活用する。それ以外の金融商品はじめ他の選択肢について考えが及ばない、または考えるまでに一定の期間を要する。といった経過を辿った人が多いのではないでしょうか。

若者はインフレの経験がない

また、インフレについてはより明確です。日本が長きに渡りデフレ(物価下落が続くこと)の状況にあったためです。例えば1970年代や1980年代の高度経済成長期、その後のバブル景気などの経験がある世代は土地の高騰など一定の物価上昇を経験していますが、20代や30代を中心とする若い世代は「インフレ」の経験がなく、「分からない」と回答するのもしかたないでしょう。

特に21世紀に入ってからはインフレどころかデフレの傾向が強かったため、一部、超低金利に嘆く人がいたとしても、買い物に行く都度、安い商品やサービスが提供されているため、お金の価値(購買力)が劣っていくという感覚もなく、銀行にお金を預けているだけという状態にそれほど違和感はなかったでしょう。

これは1つ目の「お金の管理や運用に注意していない。」ということにもつながりそうです。「注意していない」のではなく「注意する必要がそれほどなかった」と見ることもできます。1つの仮説に過ぎませんが、私達が日本人として日本で生活してきた結果が、2つの質問の低い正答率に表れているだけなのかもしれません。

環境変化は私達の金融リテラシーを高める好機

金融リテラシー調査から分かった2つの弱点について分析してきましたが、では私達は今現在、どのような状況に身をおいているでしょうか。

消費税は8%から10%に上昇し、2011年に急激な円高を付けた以降、長いスパンでみると円安トレンドにあり輸入に頼っている食品やエネルギーなどはじりじりと価格が上昇しています。また首都圏や商業圏を中心に不動産価格も上昇しています。

加えて、政府はNISA(つみたてNISA)やiDeCoといった枠組みを使った老後への備えを促しています。2つの弱点を生み出した経済的な環境は大きく変わりつつあります。金融審議会のレポートで「老後2,000万円問題」が取り上げられた以降、つみたてNISAの口座開設数は各金融機関で急増しているようです。

インフレなどを視野に入れながら、お金を管理しようという意識が高まっている人が増えているのではないでしょうか。「日本人は金融リテラシーが低い」ということを前提にしていますが、こういった環境変化が金融リテラシーを高めてくれるかもしれません。

「金融リテラシーを高める」というと難しいことに取り組むような印象がありますが、今の環境に合わせてやるべきことをやる。こういう発想が大切です。ぜひiDeCoやNISAといったところからまずは取り組んでみてください。


筆者プロフィール: 内山貴博

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。

内山貴博

最終更新:10/16(水) 7:11
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