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コーラス・ワールドワイドのインディーゲーム戦略を聞く。パッケージ版に注力するのは日本のコアゲーマーたちに喜んでもらうため

10/16(水) 18:02配信

ファミ通.com

取材:古屋陽一、文・取材:NiSHi

 海外ゲームやアプリケーションのパブリッシングを目的として立ち上げられたコーラス・ワールドワイド。会社立ち上げ当初は、モバイルゲーム市場を中心に展開していた同社だが、近年では家庭用ゲーム市場にも注力している。そんな同社の最高執行責任者の二宮文月氏と、カントリーマネージャーの大柳竜児氏にインタビューを実施。これまでの同社の取り組みや、これからのコーラス・ワールドワイドの目指すビジョン、そしてアジアのインディーゲーム市場について聞いた。


※インタビューは東京ゲームショウ2019前に実施しました。





家庭用ゲーム機向けにシフトすることで手応えをつかんだ


――2018年の始めにお話を伺ったときは、それまでの超ニッチ層をターゲットにしていたが、「コアゲーマーに受け入れてもらえるタイトルをリリースしていこう」という方針のもとNintendo Switchなどに注力していくという戦略をお教えいただきました。2018年の取り組みの手応えを教えてください。


二宮もともと当社は、モバイルゲーム市場をメインに、とにかくユニークなもの、ゲームとして尖った魅力のある作品を提供しようという方針のもと、活動してきました。2018年に関しては、コンソール市場での展開にシフトするという戦略のもと、Nintendo Switchやプレイステーション4、Xbox Oneでタイトルをリリースさせていただきました。

大柳なかでも、手応えを得たのは昨年(2018年)8月に配信した『ザ・ビデオキッド』です。同作は、プレイステーション4、Xbox One、Switchというマルチプラットフォームで、さらにグローバル展開をさせていただいて、売れ行きも好調でした。


――コンソール市場での活動は、ある程度手応えを感じられたのですね。


二宮そうですね。さらに言えば、『ザ・ビデオキッド』は、その後のタイトル獲得にあたっても大きな効果がありました。正直なところ、それまではデベロッパーさんとの契約が難航することも少なくなかったのですが、“『ザ・ビデオキッド』を3つのコンソール機でグローバル市場にリリースした“という実績があったので、デベロッパーさんも熱心に私たちの言葉に耳を傾けてくれるようになりました。その結果、『フォーゴットン・アン』や『ヴァンブレイス:コールドソウル』といった良質なタイトルを獲得することにつながったんです。



――プラスの循環ですね。


二宮はい。昨年の東京ゲームショウ2018では『フォーゴットン・アン』と『ヴァンブレイス:コールドソウル』の2タイトルを出展したのですが、見せている側の目線としても、これまでのタイトルとは反応がまったく違っていました。ブースを通りかかったお客さんが試遊台の様子を見て立ち止まって、そのまま列に並んでくださる方がものすごく多かった。そういった意味では、昨年の東京ゲームショウは、私たちにとって、大きな転換点になったかもしれません。



――コーラス・ワールドワイドさんのユニークさを象徴するタイトルとして、どうしでも『キティ パワーズ・マッチメーカー』を思い浮かべてしまうのですが、コーラス・ワールドワイドさんがここ1、2年発表されたタイトルは、よりユーザーさんに受け入れられやすいものを選ばれているという印象もあります。


大柳ゲーマーの皆さんに、“より受け入れられやすいタイトルをお届けする”ということで選んでいるところはあります。正直、少し前にリリースしていたタイトルたちは、少し尖り過ぎていたものが多かったかもしれません。ゲーマーを置き去りにするような、尖り過ぎているタイトルは、今後の弊社のラインアップには並ばないかな……と。そのひとつの理由として、モバイルゲーム市場では、実験的なチャレンジというのはいくらでもできたのですが、コンソール市場だと厳しいという面があります。ゲーマーの皆さんが考えられる、“おもしろさ”や“受け入れられやすさ”というのは大事にしていきたいですし、それに答えられるタイトルは探さざるを得ません。とはいえ、当社らしく、ほかのパブリッシャーが目をつけなさそうなユニークなタイトルはつねに狙い続けていきます。


――(笑)。タイトル選定はどのようにして行っているのですか?


二宮基本は、肌感覚ですかねえ(笑)。自分たちが実際に遊んでみてどう感じるか、というのは大きな選定基準になっていますね。

大柳海外のイベントなどにいくときは、最初は作品のビジュアルや、公式サイトに挙がっているスクリーンショットを何枚かチェックして、第一印象で“おもしろそうだな”というところをピックアップして、自分たちで直接見に行って、プレイした感覚が良好であれば、その場で交渉に入ります。


――ちなみに、実際に気に入って契約してみたけど、あとでいまいちだと感じたりすることもあるのですか?


大柳あります。そこはやはりインディーゲームタイトルなので、クオリティーが必ずしも担保されていないところがある。そこは、インディーゲーム業界のおもしろいところでもあり、読めないところでもありますね。


――そういった場合は、どのような対応を?


大柳もちろん限界はありますが、ユーザーさんにある程度満足していただけるようなクオリティーまで、できるだけ私たちが引き上げます。

二宮ほとんどゲームができあがってしまっている段階だと難しいですが、タイトルによっては、積極的にアドバイスさせていただく場合もあります。『ヴァンブレイス:コールドソウル』は、開発期間が長かったので、僕たちの意見は相当伝えました。その結果、リリースまでにより上質なタイトルに仕上がったと、開発会社のDevespresso Gamesの方も喜んでくれましたね。


――それはすばらしいですね。タイトルはどこで探すことが多いのですか?


二宮私たちはいまアジアでよくタイトルを探しています。アジアに行くと、アジアのタイトルはもちろんですが、世界中の良作がけっこう集まるんですよ。『ヴァンブレイス:コールドソウル』は、韓国のDevespressoGamesが開発しているのですが、これも昨年のアジアのゲームショウで見つけてきたタイトルです。今年発表した『コーヒートーク』も、インドネシアのToge Productionsという開発会社のタイトルですが、これもアジアのゲームショウで発見しました。まあ、アジアのゲームショウに限らず、私たちが数多くのイベントに足しげく通い続けきた成果が、徐々に現れてきているのかもしれません。



今後はパッケージ版も積極的に展開していく


――これまでの取り組みを経て、今後はどのような方針を考えていますか?


二宮今後は家庭用ゲーム機のパッケージ版を積極的に展開していきたいと思っています。その第1弾として、今年2月にプレイステーション4向けに『フォーゴットン・アン』を発売させていただいたのですが、今後その比率はどんどん増やしていく予定です。



――パッケージ版の展開に積極的な理由は?


二宮ユーザーさんに向けて、幅広い販路をご提供したいというのはあります。熱心なファンにフィジカルなものをお届けしたいという気持ちも強いですね。まあ、私も大柳も、もともとこの業界で長くパッケージビジネスを生業としてきたので、そちらのほうが得意ということもあるかもしれません。“ゲームを作って、受注を取って、全国からの受注本数を集計して、その本数分を製造して売る”というのがやりやすい。デジタル版はリリースするまで売れるかどうかわからないですし、リリースしても、極端な話0円で終わるという可能性も考えられます。

大柳さらに言えば、我々が日本で海外タイトルを売らせていただくための“付加価値”という側面もあります。

二宮それはありますね。パッケージ化すると、開発会社の方々にものすごく喜んでもらえるんですよ。インディーゲーム開発者の方とお話するときに、「パッケージ化の可能性もありますよ」というお話をすると、すごく喜ばれるんですよ。実際に、それが契機で契約が取れたタイトルもあります。インディーゲームの開発スタジオの人たちにとっては、自分のタイトルがパッケージになるというのは喜ばしいことなんだなと実感しました。

大柳デジタル版で販売するのだったら、極端な話、いまの時代だったら、どこの国にいてもオリジナルのスタジオやパブリッシャーが自力でできると思いますが、パッケージ化となると、現地の会社がやらなければいけないので、そこは大きな付加価値になるのかなとは思っています。そのため、パッケージ版のみのリリースというのも視野に入れているんですよ。


――パッケージ版のみのパブリッシングですか?


二宮そうです。“日本でもすでにデジタル版が配信されているけれど、パッケージ版はない”というものの中から、良質なタイトルをパッケージ化するということも考えています。かなり早い段階から交渉しているタイトルだと、いままで通り当社がデジタル版の権利も取得するのですが、あとから気づいて、すでにリリースされているけれど、「これはパッケージでもまだいけそう」というタイトルに関しては、積極的にデベロッパーさんに声をかけて、パッケージ化するという活動を行っていく予定です。

大柳“パッケージ版のみ”として、現在進行中のタイトルとしては、11月14日発売予定の『きみのまち ポルティア』があります。こちらは、デジタル版は開発元のTeam17 Digitalが自社で配信しているのですが、プレイステーション4のパッケージ版は、当社が担当します。また、アルファ・システムさんから、『シスターズロワイヤル 5姉妹に嫌がらせを受けて困っています』のプレイステーション4版が2019年1月30日に配信予定なのですが、 そちらのパッケージ版も当社で手掛けます。もともと同作は2018年6月にNintendo Switch版がリリースされていたのですが、今回プレイステーション4版の配信にあわせて、デジタル版はアルファ・システムさんで、パッケージ版は当社で……との座組になりました。もちろん基本はデジタル版での提供を重視しており、デジタル・パッケージ同発タイトルも増やしていきます。先日発表させていただいた『メガクアリウム』や『ヘッドライナー:ノヴィニュース』といったタイトルはパッケージとデジタルの両方でリリースします。ちなみに、今年のゲームショウでは、KONAMIさんブースも含めると、10タイトル出展する予定でいるんですよ。

『ダンジョン マンチーズ』や『コーマ2』など、コーラスワールドワイドがパブリッシングするアジア産注目タイトルの開発者に直撃2連発!!【TGS2019】
https://www.famitsu.com/news/201909/26184055.html
『シスターズロワイヤル』開発元のアルファシステムに聞く。PS4版リリースの背景と今後の展開、そしてあのシリーズ作についても語った!【TGS2019】
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――先ほど『フォーゴットン・アン』や『ヴァンブレイス:コールドソウル』でさらにワンランク上のタイトルを、というお話がありましたが、さらにまた上を目指すために付加価値としてのパッケージ戦略という側面もある?


大柳それはもちろんあります。

二宮いまの弊社のタイトルを判断基準として、“パッケージにしたいタイトル”、というものはあります。

大柳ヨーロッパでは、“リミテッドエディション”として、ソフトに付加価値をつけて提供するというビジネスが盛んですが、その延長線で取り組もうと考えています。パッケージのディスクで欲しいというユーザーさんはもとより、CDやアートブックなどの特典を望んでいるユーザーさんに喜んでもらいたいという思いもありますね。私たちは基本的に何万本も売れるようなタイトルは持っていないので、わかっている方に向けてしか出せていないというところはあります。であれば、わかっている人たちに満足してもらえるようなモノを作ろうと思っています。



――なるほど……。では、ひとつの例として『きみのまち ポルティア』では、どういった特典がつくのですか?


大柳『きみのまち ポルティア』は、サウンドトラックとしてSONOCAカードを付けようかなと思っています。CDディスクにしようかとも考えたのですが、タイトルによって変えたほうがいいかなと思いまして。『きみのまち ポルティア』に関しては、ゲーム内容は大人向けなのですが、一方で『マインクラフト』のような、いわゆるサンドボックス的な要素もあり、ビジュアルもかわいくて、魅力溢れるタイトルなんです。そこで、流通さんと相談したところ、「パッケージ化したら、購入しやすく定番となりそう」というお話をいただいたので、パッケージ版の価格もデジタル版とほとんど変わらず、なおかつ、かさばらないような形で、ダウンロードカードの特典を付けることにしたんです。

二宮ちなみに、8月29日に発売した『ヴァンブレイス:コールドソウル』は、ブックレット入りCDという本格的なアイテムを作りました。


――今後付加価値を付けるために、パッケージ版の特典を何にするかで議論する……というのは、楽しみでもあり苦しみでもありそうですね。


大柳デジタル版と比べると、金額的にはどうしてもパッケージ版のようが割高にはなってしまいますからね。その金額差を埋めて、ユーザーさんに喜んでいただけるようなセットにしないといけないという苦労はありますね。


――コーラス・ワールドワイドの今後の方針としては、出すタイトルは基本全部パッケージ化する感じですか?


大柳そういうわけではありません。先ほども言いましたが、デジタル版での展開がビジネスの中核です。パッケージ化に向いたタイトルは積極的に検討していきます。このあたりの需要は流通さんとも相談をさせていただいてラインアップを考えています。パッケージ化はタイトルの拡販につながる有効な施策なので、積極的に増やしていきたいですね。


アジアのインディーゲームは思いもよらないような発想のタイトルが多い


――実際のところ、パッケージ版がビジネスになるということは、それだけ海外のインディーゲームが日本でも受け入れられていることの証なのかも……という気もします。いまのインディーゲーム界隈をどのように捉えていますか?


二宮海外で家庭用ゲーム機向けのインディーゲームが増えているということはあるかもしれません。これは私たちの肌感覚になってしまうのですが、たとえばアジアひとつとってみても、最初に私たちが行き始めたときは、ほとんどがモバイルかPC向けでの出展でした。それが今年のゲームイベントでは、ほとんど皆さん、Nintendo Switchでの出展だったんです。それは、インディークリエイターの皆さんも、昨今のモバイルゲーム市場はきびしいということがわかったのと、Switchに参入しやすいように、任天堂さんががんばってくださっているというのが大きいかと思います。

大柳ちなみに、今回の東京ゲームショウに参考出展する『ダンジョンマンチーズ』は、アジアのインディーゲームの勢いを感じさせるタイトルです。同作を開発しているのはmaJaJaという台湾のインディーゲームスタジオなのですが、クオリティーがすごく高いですし、とにかく切り口がおもしろいんですよ。アジアには、日本のインディーゲームからはなかなか生まれてこないような発想でありつつも、ビジュアルは日本のユーザーが見ても「いいね」という印象を持ってもらえるタイトルが多くて。『ダンジョンマンチーズ』自体は横スクロールのハックアンドスラッシュ系アクションRPGなのですが、ダンジョンにいるモンスターを倒してそれを食材にして料理を作って食べていくと、そのモンスターの能力がキャラクターに付与されていって強化できるんです。


――伺うだにおもしろそうですね(笑)。では、最後に今後の展望をお聞かせください。


大柳次世代プレイステーションを始めとする新世代ゲーム機でもパッケージというかディスク版は併売されるようなので、なるべく早く取り組むことができるといいなと思っています。ハードルが高くないといいな、うまく波に乗れるといいなと(笑)。個人的にはXboxのプラットフォームに思い入れがあるので、Xboxの今後の展開に期待したいですね。とくに注目しているのはサブスクリプションサービスの“Xbox Game Pass”です。日本ではまだサービスインしていませんが、“Xbox Game Pass”にタイトルを乗せられれば大きいのではないかと。もちろん、Nintendo Switchにも期待しています。いまのインディーゲームを語ろうとすると、Nintendo Switchは外せないですから。

二宮新しいプラットフォームが出るときには、乗り遅れないように、できるだけローンチに近く出せれば……というのはあります。たとえば当社の『デ・マンボ』は、ニンテンドースイッチのローンチからそこまで時間が経っていないタイミングでリリースすることができ、よいスタートを切ることができました。そういった、フットワークの軽さというのは、コーラス・ワールドワイドの身上と言えるのかもしれません。

最終更新:10/16(水) 18:02
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