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日本も採用、ステルス戦闘機「F-35B」に迫る(6)着陸できる場所できない場所

10/17(木) 8:48配信

マイナビニュース

いまさらこんなことを書くのも何だが、F-35Bの表芸は短距離離陸・垂直着陸(STOVL : Short Take-Off and Vertical Landing)である。ところが気をつけないといけないのが、この垂直着陸。

地中海と太平洋を結ぶ作戦を支援するため、米国第5艦隊作戦エリアに配備されるAV-8BハリアーII 写真:US Navy

過熱に御注意

すでに書いている通り、F-35BがSTOVLを行う際は、コックピットの背後にあるリフトファンを作動させるとともに、エンジンの排気ノズルを偏向させて真下に向ける。これにより、下向きの排気で機体を支えられるようになるので、前進速度によって主翼が揚力を発生することがなくても浮いていられる。


つまり、F-35BはAV-8Bよりも熱い排気ガスを、しかも大量に吹き付けていることになる。すると、滑走路のアスファルト舗装、あるいは空母や強襲揚陸艦の飛行甲板は、その熱い排気ガスによる加熱に耐えられないと困る。そこで、飛行甲板のうち着艦ゾーンだけ、耐熱処理が施されている。

これが問題になるのは、垂直着陸あるいは垂直着艦の時だ。なぜかというと、同じ場所が長時間にわたって連続的に、高温の排気ガスを浴びることになるから。

実際にF-35Bが垂直着艦を行っている模様を撮影した動画は、動画サイトを見ればたくさん出てくる。まず艦の左舷側でホバリングしつつ、艦と行き脚を揃えたところで、スーッと右側に横移動して飛行甲板の真上に移動する。それからおもむろに推力を絞って降りてくる。それを見ると、飛行甲板の上でホバリングしている時間が意外と長い様子がわかる。その間、甲板は排気ガスを浴び続けるのだから大変だ。

使用している耐熱コーティングは、米英で違いがある。米海軍は、Thermion 社製の SafTrax TH604 Nonskid Coating という製品を使っていて、セラミックとアルミを混ぜた素材を飛行甲板に吹き付けている。一方、英海軍はアルミとチタンの混合物を飛行甲板に吹き付けている。どちらも、素材を熱して吹き付ける手法である。

余談だが、鉄の融点は1,536度、チタンの融点は1,666度だそうだ。

穴開き鉄板の上には降りられない

ここから先は余談。

第2次世界大戦中、日本軍と米軍の間でべらぼうな差があったのが、飛行場を急造する能力だった。いうまでもなく米軍のほうが早い。ブルドーザーを持ってきて機械力で土地を均したところに、舗装する代わりに穴開き鉄板を敷いて滑走路を造ってしまう。もちろん、アスファルト舗装の方が平滑性に優れているし、大型の爆撃機になると穴開き鉄板では耐えられないが、小さくて軽い戦闘機ぐらいならなんとかなる。

ところが、ハリアーやF-35BみたいなジェットSTOVL機は、穴開き鉄板の上には垂直着陸できない。一見、「狭いスペースでも穴開き鉄板を敷いて発着場を確保すれば使えるのでは?」と思いそうになるが、実際にはそれができない。

理由は簡単。機体を支えるためにエンジンやリフトファンの排気を地面に向けて吹き出しているのだから、そこに穴開き鉄板なんか敷いてあった日には、穴開き鉄板が舞い上がってしまう。しかも、ただの鉄板よりも始末が悪い。穴がたくさん開いているから、その穴を通って、吹き付けられた排気が鉄板の下に入り込む。そして鉄板を下から持ち上げてしまう。


著者プロフィール


井上孝司

鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。

マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。

井上孝司

最終更新:10/17(木) 8:48
マイナビニュース

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