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マーティン・スコセッシ監督「アイリッシュマン」で挑んだ“若返り手法”の裏側を明かす

10/17(木) 10:00配信

映画.com

 [映画.com ニュース] 巨匠マーティン・スコセッシ監督が、名優ロバート・デ・ニーロと22年ぶり、9度目のタッグを組んだ話題作「アイリッシュマン」がこのほど、第57回ニューヨーク映画祭のオープニングナイト作品として上映された。スコセッシ監督は、デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシらとともに、ニューヨークのリンカーン・センターにあるウォルター・リード・シアターで記者会見に応じた。(取材・文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)

【フォトギャラリー】第57回ニューヨーク映画祭の模様

 Netflix製作・配給による「アイリッシュマン」は、伝説的マフィアのラッセル・バッファリーノ(ペシ)に仕えた実在の殺し屋で、1975年に失踪した全米トラック運転組合委員長ジミー・ホッファ(パチーノ)の暗殺をはじめ、多くの殺人事件に関与したとされるフランク・“アイリッシュマン”・シーラン(デ・ニーロ)の人生を描いた作品。作家チャールズ・ブラントが、04年に発表したノンフィクション作品「I Heard You Paint House: Frank“The Irishman”Sheeran & Closing the Case on Jimmy Hoffa」をベースにしている。

 「僕とボブ(デ・ニーロ)は、95年『カジノ』の撮影後から、お互いの近況をチェックし、再びタッグを組むことを望んでいた」と語るスコセッシ監督。「当初は、フランキー・マシーン(=伝説の殺し屋フランク・マキアーノ)を描こうと思っていたが、ボブが僕に今作の原作を提供してくれた。その時のボブは、このキャラクターに強い愛着を感じているように見えた。だから、我々はあまり語り合う必要もなかった。それから、(当時のパラマウント・ピクチャーズ社長)ブラッド・グレイに電話して、スティーブン・ザイリアンに脚本を書かせた。それが、今から10年も前の話だよ」と温め続けてきた企画であることを明かした。

 資金調達の都合で長年製作は叶わず――しかし、Netflixのコンテンツ最高責任者テッド・サランドスが関わったことで、ついに企画が動き始めた。「その時点で、ILM(インダストリアル・ライト&マジック)のパブロ・ヘルマンが、“De-Aging Process”(俳優をCGで若返らせる特殊効果作業)を生み出していて、(キャラクターの若き日を)同じ俳優が演じるという問題を解決をしてくれた」とスコセッシ監督は振り返る。

 さらに「要するに、ボブ、アル、ジョー・ペシらに(CGを施すための)ヘルメットやテニスボールを乗せず、彼らの演技を邪魔せずに撮影できたんだ。2年前“De-Aging Process”のテストを行った。その時はかなりお金のかかる実験だったが、テッドとNetflixの方々は、この手法でやることを推してくれた」と告白。Netflixは、資金面のサポートだけでなく、クリエイティブな面でも、スコセッシ監督の手法に口出しをしなかった。

 パチーノは、実在の人物ジミー・ホッファ役について「確かにチャレンジはあったが、ジミー・ホッファのような人物は、彼のことよく知る人物、彼に関して記された本、あるいは映像として、記録が残されている」と説明。「我々は、それらの情報すべてを手に入れることができた」と膨大な資料から人物像をとらえていった。

 309シーンで構成されている本作は、117の異なったロケーションで108日間撮影を敢行。撮影中は移動することが多く、1日2、3回場所を変えながら、テイクを重ねていった。スコセッシ監督は「多くのトラックを用意し、9台のカメラを常に移動させていた。技術的な面では、(室内での)狭い角の部分をとらえるため、撮影監督のロドリゴ・プリエトが“Three Eyes Monster”(3つのレンズが付いたカメラ)と呼んでいるカメラを2台用意していた。だから、あるシーンでは、6つのレンズを駆使して撮影していたことになる」と教えてくれた。

 デ・ニーロが演じるフランク・シーランと、パチーノ扮するジミー・ホッファの“De-Aging Process”は、事前に「グッドフェローズ」の映像を使用して、テストが行われた。その映像を見せられたパチーノは「僕は、なぜボブが再び『グッドフェローズ』をやっているのかわからなかったよ(笑)」と回答。初見では、同映像が“テスト”だとわからなかったようだ。

 その“De-Aging Process”の撮影過程では、注意すべき点もあったようだ。

 スコセッシ監督「アルが椅子から立ち上がり、テレビに向かって叫んでいるシーンで、もうワンテイクを撮ろうとした。すると、ヘアスタイリストのゲイリー・イングリッシュがやってきて、『アルは、このシーンでは49歳の設定だよね。アルにそれを伝えるべきだ』と言われたんだ」

 その助言を受け、スコセッシ監督は「アル! 演技は全て良いんだが、ひとつ重要なことがある。椅子を立つ際、あなたは“49歳の設定”でいなければいけない」と告げ、現在79歳のパチーノに“立つ動き”を俊敏にするように促したそうだ。“De-Aging Process”の撮影手法は、まるでモデルに衣装やメイクを施すように、撮影クルーが俳優陣に付き添っていた。デ・ニーロは同映像をスクリーンテストで見ると「あと30~40年は、俳優として働けるね!」と笑顔で評価したそうだ。

 「アイリッシュマン」は、11月27日にNetflixで世界同時配信。なお、今回の会見には、製作のジェーン・ローゼンタール、エマ・ティリンジャー・コスコフも出席した。

最終更新:10/17(木) 11:55
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