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地方中小企業の人材難を救うのは「副業人材」? 千葉県銚子市の挑戦

10/17(木) 7:00配信

ITmedia ビジネスオンライン

 地方企業が抱える人材不足は、その経営をサポートする信用金庫にとっても喫緊の課題となっている。中小企業は自社の即戦力となり、イノベーションを起こせる人材を求めているが、そうした人を都会の企業と競い合って獲得するのは難しい。そんな現状を打破すべく、千葉県銚子市では信用金庫などが「フルタイム正社員」以外の方法に注目。「副業人材」の活用に向けて動き出した。

副業マッチングプラットフォーム「Skill Shift」

 銚子信用金庫(以下、銚子信金)が目を付けたのは、人材会社のスキルシフトが運営している副業マッチングプラットフォーム「Skill Shift」。副業先を探す都会のビジネスパーソンと地方の中小企業を結び付けるサービスで、2017年12月のサービス開始以来、さまざまな地域に副業人材を送り込んでいる。銚子信金は、これが市内の中小零細企業の経営をサポートする手段にならないかと考えたのだ。

 Skill Shiftに注目したきっかけは、市が中小企業向けに開いたセミナー。当時からSkill Shiftを活用していた銚子スポーツタウンの小倉和俊さん(代表取締役CEO)が副業人材の活躍について語るのを聞き、検討を始めたという。

開業から間もないスポーツ合宿施設の経営を5人の副業人材がサポート

 銚子スポーツタウンは、廃校になった高校をリノベーションし、2018年にオープンした合宿施設。広いグラウンドに体育館、食堂、宿泊施設などがそろっている上、住宅地から離れているため、早朝や夜間でも周囲を気にせず練習できるという。利用者は首都圏の小中高校や大学のスポーツチームなどだ。取材時も野球、バスケットボール、空手のチームがそれぞれ練習を行っていた。

 同社の代表取締役である小倉さんは、銚子市内で50年ほどリフォーム専門店を経営していたが、野球が盛んな銚子市を「スポーツで活性化したい」と新会社を設立。廃校のリノベーションに乗り出したという。

 銚子スポーツタウンの正社員は数人で、他には清掃や調理を担うパート社員と、5人の副業協力者がいる。しかし、立ち上げ当初、小倉さんには「副業人材を活用しよう」という発想はなかったという。施設を運営していく中で「イベント企画にスポットで協力してくれる人がほしい」と思うようになり、スタッフ採用について相談していたスキルシフトの営業担当者を通じてSkill Shiftのことを知ったそうだ。「まさにこれだ!」と思い、すぐ募集に乗り出したという。

 「スポーツイベントなどを開催すれば、一泊二日で100人単位の集客もできるのですが、会社にはイベントの企画運営ができる人がいないんです。しかし、スタートしたばかりなので、施設を運営していくための必要最低限の人間しか雇えない。イベントごとの単発でいいから企画運営をやってくれる人がいればいいな、と思っていました」(小倉さん)

 働き方は「月1回現地でミーティング」、謝礼は3万円といった条件で募集を始めると、すぐに8人ほどの応募があった。小倉さんによれば、応募理由は「自分の力試しをしたい」「地方活性化や社会課題の解決に携わりたい」といったものが多く、謝礼の金額はあまり重要ではなかったという。

 面接を経て2人を採用した後、Webマーケティングやサイト構築ができる人材の募集もはじめ、さらに3人の採用を決めた。最初から「副業人材を5人採ろう」と決めていたわけではなく、やりたいことが明確で、「ぜひ一緒に仕事をしたい」と思える人を採用していった結果という。

 「求めていたのは自ら企画して実行できる人なので、『言われればやります』という方はお断りしました。逆に、『今こういう仕事をしているので、ここではこういうことができます』と言ってくれる人とは、面接しているときから『こんなことができそうだね』とどんどん話が膨らんで。『採用しないわけにはいかないな』と思いましたね」(小倉さん)

 活躍中の副業人材の経歴はさまざまだ。例えば、イルカウォッチングなど銚子市ならではのアクティビティーを組み込んだ宿泊プランを提案してくれたのは、Webメディアに勤務する会社員。周囲の地形を生かした長距離マラソン大会を企画した人はスポーツ関係の仕事をしているし、SEO対策やWebサイト改善に協力してくれている人も、Webメディアに勤めている。おのおのが本業で培った知見を、少しずつ銚子スポーツタウンに提供してくれている。

 5人とのやりとりは、Skypeやメッセンジャーがメイン。実際に銚子スポーツタウンに訪れるのは月に1度で、それぞれのタイミングで小倉さんや関係者とミーティングを行っている。

 小倉さんは「『こういうのできました!』って企画書を送ってきたりして、土曜日になるとピンピンピンピン、メッセンジャーの通知がどんどん来るんだよ」と話す。昼間は本業に集中し、夜などに副業の準備を進め、週末になると小倉さんに連絡を取る――という人が多いようだ。また、地元では得られない情報を、東京にいる副業人材が提供してくれることもあるという。

 「彼らは『こういうところに営業した方がいいですよ』なんていうメールをポンと送ってくれたりするんです。われわれが取引のある銀行も同じ情報を持っていたりするのですが、縦割りになっているから、私たちにはそういう情報は伝わってこないんですよね。地元の銀行よりも東京に住んでいる若者の方が、仕事につながる情報を教えてくれることもあるんです」(小倉さん)

 副業人材として迎え入れなければ、関わることもなかったであろう都会のビジネスパーソンの視点や発想は、小倉さんらにとって大いに刺激になり、実利ももたらしているようだ。

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最終更新:10/17(木) 7:00
ITmedia ビジネスオンライン

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