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韓国法相辞任 保守系メディアの支援報道が仇に

10/17(木) 10:40配信

ニュースソクラ

【ソウル発】腹心切った文大統領

 8月9日に法務長官(法相)内定者として指名されて以来、韓国社会を混乱に陥れた曹国(チョ・グク)氏が、14日に法相を電撃辞任した。大統領府の関係者は、「辞任決定はあくまでも曹国長官本人の決定」と強調したが、その言葉をそのまま信じるメディアはほとんどなさそうだ。

 曹国氏の辞任の翌日の15日、「朝鮮日報」は大統領府が曹氏に辞任を促していたと報じた。最近の各種世論調査で与党と大統領の支持率の同時下落が続く中、総選挙に対する危機感を感じた大統領府が直接事態収拾に乗り出したものとみられるという分析だ。

 同紙は、与党の主要関係者の話を引用し、「大統領府がかなり前から曹国長官の辞任を準備し、日程を打診してきた」とし、「辞任の日付を3日ほど曹国長官に提示した」と伝えた。

 曹国は、大統領府が渡した3つの日付の中で一番速かった14日を辞任の日として選んだということだが、これに対して同紙は、「15日に予定された法務部に対する国政監査が負担になった」と理由を推論した。 国政監査で嘘をつけば、少なくとも1年~10年の懲役刑に処されるからだ。

 「東亜日報」は、曹国辞任の変曲点となったのは、3日の光化門と5日の瑞草洞でそれぞれ行われた大規模な集会だったと報じた。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が集会を見て「意見収集」に乗り出し、独自の世論調査を通じて曹長官と文大統領に対する支持率を調べたという。

 調査の結果、曹氏が長官職を維持すべきだという回答は30%台に止まり、文大統領と与党の支持率もさらに下落した。文大統領の核心支持基盤である全羅南北道の支持率も50%台を割り、首都圏で与党の共に民主党の支持率が第1野党の自由韓国党の支持率より低いという結果が出たという。

 日増しに悪化する国民世論が、文大統領が決心を固まる契機となったと、同紙は説明している。

 曹国長官の任命によって多数の韓国国民が政権に背を向けたことを痛感した文大統領は、曹氏の辞任直後、首補会議(大統領府秘書室の首席補佐官会議)を通じて、「国民の間に多くの葛藤を引き起こした点について、非常に申し訳なく思う」というメッセージを伝えた。

 同時に、曹国問題をめぐる検察とメディアの報道態度に対して強い遺憾を示した。特に、「言論は自ら深く省察し、信頼されるために自己改革のために努力してほしい」などと発言し、メディアに対する警告を発した。

 曹国氏が法務長官に指名されてから66日間、韓国メディアは曹国関連記事で埋まり、すべてのイッシューが吸い込まれた。直前まで猛威をふるったボイコット・ジャパン運動は跡形もなく消え去り、GSOMIAの破棄決定、北朝鮮のSLBM挑発、およそ30年間未解決事件だった華城連続殺人事件の真犯人が明らかになったニュースさえも単発性の話題に止まった。

 曹国関連ニュースの前にはいつも『単独』『緊急』という修飾語がつけられて、新聞1面に飾られたり、ニュースのヘッドラインで言及された。韓国の政界では『曹国ブラックホール』という言葉が出るほど、メディアの報道は過熱した。

 9月6日、国会で開かれた人事聴聞会で与党議員たちは、ネイバーのニュース検索を用いて、曹国氏の長官指名後の20日間で計12万7千件の関連ニュースがあったと主張し、メディアが意図的に 曹国氏をあら捜ししていると批判した。

 一方、自由韓国党は、同じ内容の記事が何度もさらされているネイバーのニュース検索の限界点を指摘し、韓国言論財団が運営する検索プログラムを使用して曹国関連ニュースを分析した結果を発表した。それによると、20日間、計5899件、1日平均190個の曹国関連ニュースが報道されていた。

 韓国メディアの曹国氏関連の報道競争は、曹国氏と文政権に不利な国民世論形成に寄与したのは確かだ。そのうえ、政権寄りの「ハンギョレ新聞」と「KBS」内部ですら、政権の機嫌をうかがって曹国関連記事を防ぐ編集部に対する若い記者たちの集団反発の動きが激しくなり、メディアの公正性が問われる事態になった。

 その後、政権寄りのジャーナリストたちが反撃に入った。「ハンギョレ新聞」は11日の1面記事で、過去史調査委員会が作成した建設業者のユ重天(ユン・ジュンチョン)氏の政府高官に対する賄賂事件(朴槿恵政権の金学義法務次官に対して性的接待があったという事件)の文書に、ユ錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長の名前が言及されたと『単独』報道した。

 報道は、直後に大きな反響を呼び起こしたが、いざ当事者の尹重天氏が「尹総長に会ったことがない」と明らかにし、尹総長の信用を失墜させるための偽記事だという陰謀説が浮上した。

 また、与党の次期大統領選挙の有力候補であり、個人ユーチューブチャンネルを運営している柳時敏(ユ・シミン)元議員は、「マスコミと検察が深く癒着している証拠がある」として、KBSを攻撃した。

 柳氏はKBSが曹国氏の夫人のファンド投資を担当していた証券会社の職員とのインタビューを検察に流したと主張し、KBS社長を名指しし、この問題を徹底的に調査すべきだと警告した。

 KBS社長は、曹国特別取材チームを解体させ、真相調査チームを組織すると明らかにした。これには、KBS内部から強い反発が出て、内紛に発展した。

 結局、冷めないメディアの報道熱とこれを防ごうとする政権と与党関係者の動きが、韓国人の怒りという火に油を注ぐ形になり、政権が揺さぶられるほど支持率が急落した。

 しかし、曹国氏の辞任直後の出た文在寅大統領のメッセージには、国民に対する謝罪よりは検察とメディアを非難する内容が目立った。

 これは、10月中に国会本会議の通過を目標に司法改革法案を推し進めて、言論関連省庁を通じてメディアに対する影響力をさらに高めていくという意志と読むことができる。結局、メデァイと文在寅政権の戦いはこれからが正念場になりそうだ。

朴英南 (ジャーナリスト 在ソウル)

最終更新:10/17(木) 10:40
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