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佐々木朗希の登板問題に見る「高校野球の古い価値観」 日程緩和は根本的な解決策でない

10/17(木) 12:10配信

REAL SPORTS

ドラフトの最有力候補の一人、佐々木朗希。高校野球岩手大会決勝戦で、この最速163キロ右腕の登板を回避したことが、さまざまに議論を巻き起こした。その中でも多く見られたのが、高校野球の過密日程を問題視するものだ。確かに、もっと余裕のある日程が組まれていれば、佐々木が決勝のマウンドに立つことはできたかもしれない。だが、果たして日程の緩和が、この問題の根本的な解決策といえるだろうか――。

現代の高校野球、そして、それを見るメディアやファンの意識の在り方について、あらためて見つめ直すべきではないだろうか。


(本記事は、7月30日に『REAL SPORTS』で掲載された記事に一部、加筆・修正を行って掲載しています)

「負けた」という結果ありきの批判

7月25日に行われた全国高校野球選手権岩手大会決勝が、物議を醸した。

決勝に進出した大船渡・國保陽平監督はこの試合、最速163キロ右腕のエース・佐々木朗希を最後まで出場させることなく、花巻東に2対12で敗れた。

「佐々木、登板せず」の一報は試合終了後どころか試合中から全国に速報され、結果的に大差で敗れたこともあり、賛否両論を巻き起こす結果となった。

試合後、國保監督は佐々木の登板回避について「故障を防ぐために私が決断した」と断言。佐々木自身の身体の状態はもちろん、前日の準決勝で129球を投げて完封していること、当日の気温の高さなどを理由として挙げた。

この決断を支持する意見、反発する意見の双方が噴出しているのは、個人的には理解できる。多くのメディア、著名人がそれぞれの立場、考え方を発信してきたので、本稿でそこに言及するつもりもない。

ただ、かといって筆者が「中立の立場」かというと決してそうではない。最初に自分の立場を明確にしておくのであれば、國保監督の決断を支持したいと考えている。

國保監督も試合後にコメントしていたようにこの試合、佐々木は「投げようと思えば投げられる」状態にあったという。それでも、佐々木という才能あふれる投手の将来を考えた上での決断に、誰が文句を言うことができるだろうか。

事実、決勝戦直前までは國保監督への逆風は決して強くなかった。「登板回避」という意味では7月22日に行われた準々決勝・久慈戦でも同様だったが、この試合で大船渡は「佐々木抜き」で延長11回を戦い、6対4で勝利を収めている。佐々木を温存して、なおかつ勝利する。選手の将来を守ることとチームを勝利に導くこと、それを両立させたのだ。

批判が噴出したのはやはり、「負けたから」だろう。甲子園出場がかかる一戦で絶対的な力を持つエースを投げさせずに結果として大敗。これには「敗退行為だ」「佐々木ひとりの人生のために他の選手の夢をつぶした」などといった心無いバッシングも飛び交った。

しかし、敗戦という結果を踏まえてのバッシングはやはり結果論でしかない。恐らく、決勝戦に勝利していれば世間の風向きは大きく変わっていたはずだ。「佐々木朗希という逸材の将来を守り、なおかつチームを甲子園と導いた」として、國保監督の采配は絶賛されたに違いない。

だから「負けたから」という現象ありきで大船渡を批判する意見には、「そういうふうに考える人もいるだろうな」とは思っても、賛同はできないのだ。

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最終更新:10/17(木) 13:23
REAL SPORTS

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