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『HELLO WORLD』の伊藤智彦と『空の青さを知る人よ』の長井龍雪監督が語り合う、両作品の注目ポイント。2つの作品には不思議な共通点が?「なぜかシンクロしているんですよね」【インタビュー後編】

10/17(木) 18:30配信

超!アニメディア

 2019年9月20日に公開された『HELLO WORLD』の監督・伊藤智彦と、2019年10月11日から公開された『空の青さを知る人よ』の監督・長井龍雪。両監督は、互いに監督を務めたTVシリーズに各話演出・絵コンテで参加するなど、仕事の交流がある。それぞれの最新作を鑑賞したふたりが、相手の作品の注目ポイントを語り合うという豪華対談が、現在発売中のアニメディア10月号に掲載中。「超!アニメディア」では、本誌に入らなかった部分を含めたロング版を紹介。今回は後編をお届けする。

――伊藤監督の『HELLO WORLD』について、演出でこだわったことは?

伊藤 3Dが活きるのはなにか。ちょっと変わった映像空間を作ろうとか、多くの種類のカメラワークを使えるだろうから、これまでやっていないことをできるだけやってみようとしました。とくに“主人公が世界を飛び越えていくシーン”は、手の込んだものになっています。苦労したのは、3D動画のチェック。2Dの作画だと、レイアウトチェック後も、原画チェックで変更する場合がありますよね。でも、3Dでは「それをあまりしてくれるな」と、口を酸っぱくして言われました。

長井 「レイアウトの時点で決めてくれ」というわけですね。

伊藤 レイアウトを決めて、仮のラフな動きをつけたら、髪のなびきや顔の表情をつけるので「なるべく動かさないでください」と言われました。でも結果として、けっこう変えちゃいましたね(笑)。

長井 プレスコの音声に合わせてレイアウトを起こしていく感じですか?

伊藤 ラフな動きはプレスコで録音した声に合わせて芝居をつけていくので、なるべく尺(時間)も動かさないでほしいと。

長井 監督は、動画状態をチェックするということ?

伊藤 「ここで間を開けて手の上げ下げをしてほしい、動きをクイックに」など、口頭で指示します。画面を見ながら修正指示をするのですが、付きっきりではなく、事前に見ておき、週に1度か2度、まとまった数の動画に修正指示を出すという段取りでした。

長井 タイムシート(動きのタイミングやカメラワークなどを記入した指示書)が存在しないんですか?

伊藤 そうです。タイムシートに指示を書き込まなくてもいいので、その点は超楽です。でも、現場サイドからは、セリフに動きのタイミングを合わせるための「スポッティング」を要求されました。でも「音声があるのだから、聞けばわかる。セリフを聞くことでキャラクターの気持ちもわかるし」と、突っぱねました。CGスタッフには「面倒な監督だな」と思われていたかもしれませんね。

――ぜひ注目してほしいカットやシーンは?

伊藤 まず、話を楽しんでほしいのと、キャラクターは3Dですけど、あまりそれを気にしないで観てほしいですね。俺は(3Dアニメの)『スパイダーマン: スパイダーバース』以降、もう2Dだの3Dだのという垣根は関係ないのではないか、そういう戦い方をしなくてはいけないのではないかと思っています。

――サブキャラクターも魅力的ですね

伊藤 サブキャラは、扱い方が難しいです。どれくらい出番を作ったらいいのか。長井さんの最新作も、それを気にしながら観ていました。

長井 僕は、前作『心が叫びたがってるんだ。』が学校のクラス単位の群像劇だったので、「人数が多いときつい」という反省を踏まえて、今回はサブキャラクターの人数を絞ることにしました。でも、サブキャラは、インパクトがあって、ちゃんと使えていれば、出番の大小は関係ないと思う。

伊藤 メインキャラの少なさとサブキャラの感じは、長井さんも同じようなことを考えているなと思いました。

長井 映画っぽさというか、2時間弱で描ききれるキャラクターの数ってどんなものだろうと、今でも試行錯誤している最中です。とりあえず今回はこんな感じでやってみました。

――それでは、長井監督の『空の青さを知る人よ』をご覧になった伊藤監督の感想は?

伊藤 原作者である「超平和バスターズ」の3人(長井龍雪・脚本の岡田麿里・キャラクターデザインの田中将賀)がちょっぴり大人になって、子ども目線ではないところへ踏み入ったのが良かったです。これまでは、中高生の子ども目線から見たときに「大人=邪魔な対象」と映ることが多かった印象があります。今回は「大人もやさしい目線で見つめよう、君たちの苦労もわかるよ」といった感じがあって。そこに「超平和バスターズ」の3人の『年齢を重ねた感』というものを感じます。

長井 そうですね。そういうふうに、人はだんだん大人になっていくんですね。

伊藤 それは意識してやっていたのですか?

長井 今回、このチームでの作品では初めて30代のキャラクターがメインで登場しますが、高校生より自分の年齢に近いほうが素直に描ける感じはしました。これまで頑張って高校生を描いていたのは、けっこう無理していたんだなと(笑)。

伊藤 アニメを作っている者はみんなそうじゃないですか(笑)。

長井 高校生を描くことにあまりにも慣れていたから、30代を動かすのはこんなにも動かしやすいのかと思いました。

伊藤 俺も、30代のキャラクターを「わかるわかる」という気持ちで観ていました。また「秩父って、そんなに東京から遠いんだ」とも思いましたね。

――長井監督が『空の青さを知る人よ』制作でのこだわりのポイントは?

長井 主人公たちの楽器演奏シーンは、絵コンテに合わせた形でプレイヤーが実際に演奏する様子を撮影し、その映像を元にアニメ映像を作る「ロトスコープ」技法で作っています。技術的に大変で、作画スタッフには苦労をかけました。あとは、なるべくカット数を減らすことを意識的にやっています。

伊藤 今作は何カットですか?

長井 1200カットくらいです。前作『心が叫びたがってるんだ。』は1700カットあって、作画スタッフにキレられそうになりました(笑)。

伊藤 え、誰に(汗)

長井 もちろん、田中将賀さんです。TVシリーズは、なるべくカットを刻み、カットの数でリズムを作って20分を一気に見せきります。それをずっとやってきていたので、カットを減らすのは難しかったです。

伊藤 今回は、ロングショットの絵が多かった気もしますが?

長井 TVシリーズは、作画スタッフの労力を考えて、バストショットで済むものはなるべくそうしますが、劇場作品はTVと違う構図にしたくなります。大画面になるので、引き(ロング)の絵にしたい。でも、それがのちのち自分の首を絞めることになるんです(笑)。同じ尺(時間)が流れるのだから、カット数が少ないからといって、フィルムを埋めるために必要な絵の枚数が減るわけではないんです。

伊藤 そうなんですよね。

――では、苦労されたところは?

長井 やはりロトスコープで制作した演奏シーンは大変でした。でも、演奏シーンは、本作のメインではないんですよね。

伊藤 俺は、冒頭を観て、演奏がメインかと思いました。裏切られた。そういう意表のつき方だったかと。そこも面白かったです。

長井 (笑)。

――今作はどんな形で生まれたのですか?

長井 最初は、本当にざっくりしたものです。「秩父で高校生が出てきて」という感じ。今回は、ひとつの区切りとして「秩父から出て行く話にしよう」という話から始まりました。そこからみんなで話しているなかで「出て行くほど地元も悪いところじゃないよね」といった話になりました。そういうところから30代組のキャラクターが生まれました。自分たちが生きる場を肯定する30代組と、自分たちを束縛する場から出て行きたい若者。「両者を平行して描くことでなにかが生まれないかな?」ということで、今作の話になりました。

――注目してほしいポイントは?

長井 田中さんが描くキャラクターの表情を観ていただければな、と思います。

――『HELLO WORLD』はプレスコとのことでしたが、『空の青さ』の収録はアフレコですか?

長井 アフレコです。でも、映像がほとんど完成していないままの録音だったので、プレスコと変わらなかったかもですけど(笑)。

伊藤 アフレコの絵に合わせたのかと思うと、俳優さんはお上手でしたね。

長井 それは、僕もびっくりしました。

――2作品には共通するものが多いように思うのですが、いかがですか?

伊藤 俺の『HELLO WORLD』は、10年後から来る者を描く話。長井さんの『空の青さを知る人よ』は、13年前から来る者を描く話。それが続けて公開されるんですよね。

長井 そう言われればそうだ。同じ東宝映画だし、重なる点が多いですね。

――2作品に共通する未来や過去から訪れる者には、どのような意味があるのですか?

長井 僕の話はファンタジーですが、30代になったキャラクターと13年前の人物を登場させることで、両者の違いを際立たせます。

伊藤 俺は「年齢の離れた同一人物キャラクターの主人公」が好きなんです。『世紀末オカルト学院』にも登場しているくらい、好きなネタなんです。今回は「ふたりが一緒になにかをすることにしよう」ということが始めに決まりました。

長井 その企画から伊藤さんのオーダー?

伊藤 「未来から来る者と一緒になにかをする話はどうですか?」と提案すると、東宝のプロデューサーが、未来から来た者に「お前が住んでいる世界は仮想世界だ」と言わせましょうよと、ドヤ顔で言われて。

長井 いきなり、そんな物語の核心のところを!?

伊藤 「それいいじゃないですか!」ということで、そこからあとの話を作りました。長井さんの作品も、年を取ったキャラクターにはうまくいかないことがいっぱいあるじゃないですか。そのギャップがいいんです。年を取ってからとくにそう感じます。「本当にわかるわ~」と。自分と重ねて観ますよね。

――この2作品は、そうした共通項を見比べてみるのも面白いかもしれませんね。

伊藤 未来や過去のキャラが現在の世界を訪れるという外形的な部分だけでなく、ほかにもいろいろな共通項があると思いますよ。どちらも、キーアイテムが“ノート”ですし。

長井 そうですね。

伊藤 俺が長井さんの新作を観ていて一番ドキッとしたのはそこです。なぜかシンクロしているんですよね。2作品を鑑賞し、共通項を探し出してニヤニヤしてください。でも、見つけた共通項を決して我々に伝えないでください。ツイッターで報告とか絶対しないでください。

長井 聞きたくないですね(笑)。

――では最後に、読者にメッセージをお願いいたします。

伊藤 中高生をメインターゲットにして作られています。「こんなことをできるといいな」
を叶えられる作品を作っているので、気軽に観てもらいたいです。難しい言葉はいっぱい
登場しますが、そこは勉強してください(笑)。

長井 こちらは、難しい言葉とか一切ありません。高校生になっても、大人になっても、
悩んでいることはみんな一緒なんだぜ、みたいな話なので、気負わず観ていただければ。

伊藤 ぜひ、続けて劇場へ行きましょう!

長井 公開時期は少しずれますけどね。

(C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
(C)2019 SORAAO PROJECT

草刈勤

最終更新:11/8(金) 0:45
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