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引きこもり〈上〉「救済」から「生きる支援」へ 居場所は見つめ直す場

10/18(金) 17:44配信

福祉新聞

 「引きこもり」が改めて話題に上がっています。今年3月、内閣府は40~64歳の引きこもりが61万人だとする初の推計を発表。5月には川崎市で引きこもり状態とされる男(51)による小学生ら殺傷事件が発生し、引きこもりをめぐる議論が活発になりました。引きこもりの当事者は「安心できる居場所」を増やすよう求めています。その背景にはどんなことがあるのか、当事者や福祉現場の取り組みを3回に分けてご紹介します。 

 「あなたは大丈夫よね?」。通算で約10年引きこもった都内のKさん(男性・39歳)は川崎市での事件後、親戚からこんな言葉を掛けられた。一歩踏み出そうと当事者会をネットで探し、6月から参加し始めた。

 その一つが2010年以降、首都圏を中心に広がっている「ひきこもりアノニマス(HA)」だ。アルコールの依存症者が匿名で参加するアルコールアノニマス(AA)の引きこもり版と言える。

 参加者が依存症の回復プログラム「12ステップ」を応用したテキストを読み上げ、各自が経験を語るのが基本だ。言いっ放し聞きっ放しで他人に意見をしないミーティングを定期的に開く。

 高校を中退し、就職しても人間関係でつまずいて長続きしなかったKさんは言う。「もう一度働きたいが年齢的に焦りがある。もう失敗したくないので、今はじっくり自分を見つめ直したい」。

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 引きこもりを語る上で、この「見つめ直す」はキーワードの一つだ。従来、引きこもり状態から「救済」することが支援の主眼だったが、昨今は当事者が自分を見つめ直し、生きることそのものを支える「生きる支援」に軸が置かれる。

 同じような経験をした仲間と出会える場が不可欠だとの認識が広がり、当事者が情報交換などのため主宰する「当事者会」を含め、この10年ほどで公的・私的を問わず「居場所」が増えた。

 その活動内容はさまざまだが、程度の差はあれ、他者との交流を経て自分を見つめ直す場となっている。

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 障害者総合支援法に基づく地域活動支援センター「つながるcafe」(横浜市)もその一つだ。

 うつ病や引きこもりの経験者が通い、楽器演奏や絵画などを共に楽しむ。安心できる場であることがウリの一つだ。

 もう一つの核が当事者同士の「語らいの場」だ。テーマは「生きる意味とは」「孤独感・孤立感」など。経歴や年齢などを明かさずに話しても構わない。

 好きなときに来て好きなときに帰っていいが、単なる居心地の良い場とも言い切れない。

 「あなたにとってどんな場所?」と尋ねると、当事者から「本当の自分を知る場」「自分を試す場」という答えが返ってくる。

 支援センター職員の浜田房子さんは「ここでは結果的に自分を見つめ直さざるを得ないようだ。逆に、就労などすぐ目に見える結果を求める人は他の場所を選ぶ傾向がある」と話す。

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 「無条件で誰かに肯定された経験が乏しい」「完璧な自分でなければ愛せない」「自分に自信が持てず人と会うのが不安」--。引きこもり経験者の多くはこんな風に自分を分析する。

 居場所が増えたとしても、渦中にある人が最初の一歩を踏み出すには心理的・物理的な障壁がある。そんな障壁を取り払おうとする取り組みが広がる。

(つづく)

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最終更新:10/21(月) 10:58
福祉新聞

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