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「前回は大丈夫だった」「周りは逃げていない」災害から命を守る行動を遅らせてしまう“正常性バイアス”

10/18(金) 15:02配信

AbemaTIMES

 台風19号の影響により氾濫した阿武隈川に合流する逢瀬川が流れる福島県郡山市。12日午後4時40分の段階で、およそ3万5000世帯、8万人超のお市民に避難指示が出されていた。しかし台風が過ぎ去った13日、冠水した住宅からは逃げ遅れたとみられる遺体が見つかった。郡山市の阿武隈川周辺はハザードマップで危険性が示されていたほか、当日には避難勧告・避難指示も出されていた。しかしある住民は「前回(1986年)の8.5水害では床上64cmの浸水だったので、今回もそのくらいかなと思って」と話した。気象庁や自治体、そしてメディアが「命を守る行動」を呼びかける中、どうしても遅れがちになる避難。そこにはどのような課題があるのだろうか。

【映像】島崎氏による解説

 名古屋大学特任准教授の島崎敢氏は「どのくらいの方が逃げたのか、実際のデータが出ていないのでなんとも言えないが、かなりしっかり報道しているという印象を受けたし、多くの方にはちゃんと情報が伝わり、行動にもつながったのではないかと見ている。ただ、やはり逃げ遅れた人がいるし、どうすればそういった方たちを出さなくて済むか、という課題が残されている」と話す。

 読売新聞によれば、気象庁の梶原靖司予報課長は「狩野川台風が“パワーワード”になり、“伊豆半島のことだから”と受け止められたのかもしれない」と述べたという。また、次々とエリアメールが送られてくることに対し、「アラートずっと鳴っててうるさかったから切った」「これ寝るなら速報アラート切ってから寝ないとうるさくて寝れんやつや…」「アラート祭りでバッテリーなくなっちゃうね。出先ならアウト」といった声もあった。

 島崎氏は「人の頭の中には直感的な処理と論理的な処理の2つの情報処理チャンネルがあり、前者が優位だと言われている。一度“他の場所だ”というイメージが入ってきてしまうことで、その先の論理的な処理を止めてしまうということだ。例えば勧告という言葉に馴染みがないため、“避難指示”よりも“避難勧告”の方が強い意味を持っていると勘違いしてしまうケースもある。今回も、そのように考えた人がいた可能性はあると思う。また、専門的には“正常性バイアス”と呼ばれているが、自分が死んでしまうかもしれないと考えるのはストレスなので、“まだ大丈夫だ”と思い込む心理がどうしても働き、“嘘なんじゃないか”と思い込み、“前回は大丈夫だった”“周りの人もまだ逃げていない”など、それを裏付ける情報を探してしまう。心を守る機能として人間に自然に備わっていることを知っておくといいと思う。エリアメールが“うるさかった”と言うが、静かになって欲しいから移動するというモチベーションも働くと思う。日本人は同調圧力を気にするので、“迷惑をかけてはいけない”という気持ちに訴えるのも手だ。例えば“他の人も避難しているよ”“あなたが逃げないと他の人に迷惑がかかる”という情報が効くと言われている」と話す。

 「防災は100m位置が違うだけで状況が変わる。家族構成やそれぞれの体力によっても状況が変わるので、正解はない。差し迫ってから情報収集しても仕方ないし、情報発信する側も個々に最適化した情報を出せない。例えば発信者側はハザードマップの調べ方の情報を出し、受け手の側は事前に十分な情報を手に入れておくということが必要だ。日本の行政は非常に優秀だが、命に関わることであるにもかかわらず多くの人がそこに囚われ過ぎだと思うし、まず自分で調べ、危ないと感じたら早めに逃げる方がいい。避難勧告が出るまでは避難してはいけないというルールはないし、安全な場所であれば、避難所ではなく友達の家でもいい。もっと言えば、人口が減少していく社会でもあるので、大前提として危険な場所には住まない方がいい」。

最終更新:10/18(金) 15:02
AbemaTIMES

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