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世界を支配するために通貨を作った「イスラム国」

10/19(土) 7:00配信

CoinDesk Japan

過激派組織ISIS(いわゆる「イスラム国」)はシリアとイラクの大部分を支配しようと考え、自動車爆弾と自爆攻撃に加えて、巧妙な武器を使った。通貨だ。

ISISはイスラム教の過激な解釈の下での世界統一を目指した。そして、イラクとシリアに排他的で暴力的な社会と、筆者が「ISISコイン」と呼ぶ経済実験を作り出した。

10種類の硬貨

ISISコインは約1000ドルから数セントまで、10種類のコインで構成された。ISISはアメリカ、イラク、シリアの通貨を金貨、銀貨、銅貨からなる独自通貨に置き換えようとした。

当時、ISISは3万4000平方マイルの、石油が豊富な領土を確保していた。独自通貨ディナールを使って石油取引を行うことで、ドルを石油ビジネスから排除し、アメリカ経済を不安定化しようと考えていた(ISISはオイルマネーを中心とする経済システムをアメリカの「アキレス腱」と呼んだ)。

ディナールは、中世のイスラム帝国「ウマイヤ朝(Umayyad Caliphate)」の硬貨をモデルにした。ウマイヤ朝の指導者アブドゥルマリク(Abd al-Malik ibn Marwan)は、中東に散らばったイスラム教徒を経済的に結びつけるために硬貨を発行した。

2015年、ディナールはISISの支配下にある一般市民に義務付けられた。最盛期、ISISはイラクとシリアで1000万人を支配し、ISISディナールは近代史上、最も野心的な経済実験となった。

一方、シリア北部の自治領「ロジャヴァ」に住む筆者は、ISISと戦うシリア民主軍が管理する施設で捕虜のモハメド・ナジャール(Mohammed Najjar)と面会した。ナジャールは写真撮影や動画撮影を拒否した。彼は筆者の音声レコーダーにもナーバスになり、ISISからの報復を恐れて名前を公表しないことを要求した(よって、モハメド・ナジャールは仮名だ)。

ナジャールは石油関連の仕事をしていた。石油はISISにとって最も収益の高い輸出品であり、通貨ディナールの心臓だった。筆者が彼の前のテーブルに銀貨を置くと、ナジャールは笑った。銀貨は幅の広い硬貨で、直径は約1センチ。勤勉と慈善を賞賛する一節がアラビア文字で刻まれていた。

「イスラム国ではこれは失敗だった」と彼は笑いながら言った。

「うまく行かなかった」

2015年に公開されたプロパガンダ映画『The Return of the Gold Dinar(ディナール金貨の復活)』の中で、ISISの金融実験は2001年のアメリカ同時多発テロに続くものであり、アメリカ経済との全面戦争における新しい武器とされた。

「ドキュメンタリーを見たか?」とナジャールは目を輝かせて筆者に聞いた。

「世界経済を破壊する計画だった」

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最終更新:10/23(水) 10:46
CoinDesk Japan

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