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台風19号、茨城県北大規模浸水 「まさか自分が…」 片付け進むも日常遠く

10/20(日) 5:00配信

茨城新聞クロスアイ

河川の氾濫によって濁流が押し寄せ、大規模な浸水被害に見舞われた常陸太田、常陸大宮、大子の茨城県の県北3市町。台風19号の襲来から1週間となる19日、住民は灰色の雨雲の下、黙々と片付けを続けた。作業は少しずつ進むが、日常を取り戻すまでの見通しは容易に立たない。

■全部水に

前夜からの細かな雨が降り注いだ。
常陸太田市松栄町の団体職員、綿引悦朗さん(65)は自宅前に積み上がった大量の災害ごみの中から、学生時代に描いた油絵を取り出し、寂しげにつぶやいた。
「全部水に漬かった。捨てるしかない」
京都で染色の仕事をしていた当時の図案や画集なども泥水をかぶった。

久慈川と支流の浅川が合流する地点に位置する松栄町は、久慈川上流部の決壊現場から5キロ以上離れているが、濁流が押し寄せた。

家族4人で暮らす綿引さんの自宅は敷地が高いものの、床上60センチほど浸水。農業を営む妻の実家や農機具を保管していた倉庫にも水が入った。

「水が来るとは想像していなかった」

避難所で2晩を過ごし、今は自宅に戻った。

2015年9月の常総水害の際は仕事仲間らと共に、ボランティアを受け入れて被災現場に派遣するサポートセンターを立ち上げ、半年間にわたって連日、支援に走り回った。あれから4年、今度は逆の立場になった。

「まさか自分がこんなことになるなんて…」

自宅の片付けは知人らの助けでめどが立ったものの、家の修繕などはこれからだ。

「落ち着くのはまだ先。地域にとっても1人でも多くの手助けが必要だ」

■早く再開

水戸市と県北山間部を南北に結ぶ国道118号。ガードレールには漂着した稲わらが風に吹かれたままの場所が残る。

常陸大宮市山方のそば店「麦藁」。3年ほど前に開業し、地元の住民や観光客に親しまれてきた。

ひたちなか市の自宅から通う店主の前田章裕さん(48)は、腰の高さまで浸水し、めちゃくちゃになった店内を見てがく然とした。

テーブルやイス、畳を搬出し、軽トラックで災害ごみの仮置き場まで自分で運んだ。障子など使えるものは丹念に洗った。妻の未華さん(36)と共に、ひたすら片付けに取り組む。

店内の修理にも取り掛かっているが、調理器具は全て交換するほかない。資金をどうするかが最大の悩みだ。

新そばのシーズン開始が目前に迫り、気持ちは焦る。「しばらくはきれいにするしかないが、一刻も早く再開したい」

■次が心配

月待の滝に近い大子町川山の和田一郎さん(74)方は久慈川と生瀬川に挟まれる形で立ち、両側から水が流れ込んだ。

過去に繰り返し水害に遭っている。30年ほど前に数十センチ土盛りして家を建て替えてからは水が出ても玄関先までだったが、今回は床上約40センチが浸水した。

親類や地元の人たちの助けを借り、数日かけて家具などを運び出した。1週間が過ぎ、「気持ちは少し落ち着いた」。避難先から自宅に戻ったのは3日前だ。

「大変なことになっている大子町の中心部に比べ、ここはまだ…」。和田さんは穏やかな表情で話す。

町内で暮らす長男の真一さん(43)は台風が襲来した12日夜、実家を訪れ、両親を避難させた。

水が引いた後、すぐ隣を流れる久慈川を見ると、巨岩が100メートル上流から流されていた。真一さんは両親を気遣う。「次の豪雨が心配だ」(川崎勉)

茨城新聞社

最終更新:10/20(日) 5:05
茨城新聞クロスアイ

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