ここから本文です

綾野剛&杉咲花、『楽園』で感じた“魂の共鳴”「いつか共演したかった」

10/20(日) 21:30配信

Movie Walker

ベストセラー作家、吉田修一の短編集「犯罪小説集」を瀬々敬久による監督・脚本で映画化した『楽園』が10月18日(金)より公開となる。2つの事件をモチーフに、関係者たちの心の傷やもがきが明らかとなる衝撃作で、実力派俳優の綾野剛と杉咲花が初共演を果たした。孤独や痛みまでをしっかりと体現できる、繊細な演技力に定評のある2人だが、インタビューを試みると「いつか共演したいと思っていた」と相思相愛であることを告白。撮影現場で感じた、“魂の共鳴”について語った。

【写真を見る】どこか似た空気も感じさせる、綾野剛と杉咲花。映画に託した想いを語った

青田に囲まれたY字路で起こった少女失踪事件。12年後、事件が未解決のまま、再び惨劇が巻き起こる。事件の容疑者として、住民の疑念から追い詰められていく青年の豪士<たけし>(綾野)、失踪した少女の親友として心に傷を負ったまま成長した紡<つむぎ>(杉咲)、Y字路に続く集落で孤立を深めていく男、善次郎(佐藤浩市)。3人の決断と運命を描く。

■ 「杉咲さんの本質は、ものすごく明るくてチャーミング」(綾野)

綾野は「授賞式などで顔を合わせるたび、『いつか共演したいね』と話していたんです。杉咲さんが出ている作品も観ていますし、共演を願っていました」と念願叶っての共演となったという。「それに『楽園』という作品でご一緒できたのも、なんとなく僕ららしい感じがして。すごくいいスタートになったんじゃないかなと思っています」とニッコリ。杉咲も「私もいつかご一緒したいという、本当に同じ想いだったんです。こんなに早く叶って、すごくうれしいです」と笑顔を見せる。

実際に共演した感想を聞いてみると、綾野は「魅力的な女優さんです。またすぐにご一緒したい」と切りだし、「杉咲さんってちょっと、闇が深そうでしょう(笑)?周囲も巻き込んでしまうような、闇を表現できる方。でも杉咲さんの本質は、ものすごく明るくてチャーミングなんです。いつも誰かを思いやる気持ちを持っている方で、僕もそれをひしひしと感じていました。だからこそ、現場のみんなは杉咲さんが大好きだし、映画にも愛されるんだと思います」と語る。

照れ笑いを見せた杉咲は「綾野さんと共演させていただいて、勉強になることがたくさんありました。勝手なイメージで、綾野さんはカメラが回っていない時にもその役として現場にいらっしゃる方なのかなと思っていたのですが、カメラが回っていない時はとても気さくで優しい方なんです」と驚いたという。綾野が「ヤバい奴だと思っていた?」と楽しそうに笑うと、杉咲は「思ってないです(笑)!」と破顔しながら、「クランクインの日には椅子が2つ並んでいて、綾野さんが座っていらしたのですが、ちょっと隣に座りづらいなと思って、その周囲をフラフラと歩いていたんです。そうしたら綾野さんが『こっち、来なよ!』と話しかけてくださって。映画とは関係ない話もたくさんしましたし、ものすごく優しくしてくださいました。うれしかったし、びっくりもしました」と語る。

■ 「綾野さんのおかげで、苦しい感情が表現できた」(杉咲)

大きな孤独を抱えた豪士と紡だが、なぜがお互いにだけは心を開いていく。綾野は、豪士にとっての紡を“希望”。杉咲は、紡にとっての豪士を“分身”と表現する。魂が共鳴していく2人を演じたが、現場では綾野と杉咲も同じような引力を感じたという。綾野は「どのシーンを生きていても、お互いが感じていることを、お互いが認知できていたような気がする。それって最強ですよね。そういった静かだけれど、確かなコミュニケーションがあった」と述懐。

「例えば僕が行き過ぎたとしたら、杉咲さんがすっと離れてみたり、その逆があったとしてもお互いにコントロールできる信頼。相性がよかったと言えばそれまでですけれど、年齢関係なく役者としてこういう関係性が大事なんだろうなと思えることがたくさんあった。言葉にするのは難しいですが、冷蔵庫を開けたらすぐ閉めるとか、家に上がったら靴を揃えるとか…(笑)、日常生活でもちょっとしたことが合う、合わないってありますよね。言葉にしなくてもわかり合えるというか『ああ、さすがだ』と、心のなかにポッと温かなものが灯るような瞬間がありました」と語る。

杉咲は「現場で誕生日を迎えて、綾野さんにお祝いしていただいたのですが、プレゼントを2つも用意してくださったんです」と微笑み、綾野も「どちらがいいか選べなかっただけなんです。『どっちがいい?』と聞いたら、『どっちも好きです!』というので、『じゃあ、どちらも!』とプレゼントしました」と大きな笑顔。続けて、杉咲が綾野への感謝を溢れさせた。

「その日は綾野さんも私も夜からの撮影だったので、綾野さんがお昼にご飯に誘ってくださって。誕生日のお祝いをしてくださったんです。実はその夜は、豪士の壮絶なシーンの撮影でした。綾野さんは『いますごく楽しいけれど、今夜はそういったシーンをとるから、その落差がよい方向に向かうと思う』とお話しされていて」と食事中の綾野の言葉を思い出しながら、「本当にありがたかったです。綾野さんは、“幸せな時間があったのに、その後に壮絶な運命に見舞われる”という、豪士と紡の関係性までを考えていてくださいました。だからこそ、私はそのシーンで幸せな時間を思い出して、ものすごく苦しい感情が出てきた。とても感謝しています」としみじみ。綾野は「本当は、買ってきたプレゼントを早く渡したかっただけだよ」と照れるなど、温かな空気が2人の間に流れる。

■ 「僕たちができることを邁進していくしかない」(綾野)

実在する事件を題材にしていることもあり、映画からは「なぜ犯罪が起きるのか?」という投げかけと共に、現代社会に潜む孤独が浮かび上がる。綾野は「僕たちは役者で、世の中的には芸能人というくくりになりますが、僕たちがなにかをすることで世の中を変えられる、変えてみせると思っているわけではありません。ある意味、無力だと知っているからこそ、映画を通して、少しでも誰かの心に寄り添って、人生の選択を増やすことができたり、人を愛する気持ち、思いやりなど、“体温”のようなものを感じていただけたら幸いです」と映画の力を信じ、「僕たちは、僕たちができることを邁進していくしかない」と覚悟を決める。

「作品を観た方から、ある手紙をもらったことがあります」と振り返った杉咲は、「『生きることに後ろ向きになっていたけれど、あなたの演じた役を見て、苦しんでいるのは自分だけじゃないと思った。すごくうれしくて、頑張ってみようと思いました』と書いてあったんです。まさかそんなふうに言っていだけることがあるなんて思っていなかったですし、ものすごくうれしくて。同時に、責任感も感じました」とこちらも表現者としての熱い想いを口にしていた。“闇”も表現できる彼らは、確かにどこか似た空気も感じる2人。実力派陣が紡いだ重厚なドラマを、ぜひスクリーンで堪能してほしい。(Movie Walker・取材・文/成田 おり枝)

最終更新:10/20(日) 21:30
Movie Walker

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ