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静観の姿勢とるも…対岸の火事では済まされない香港問題

10/22(火) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

【メジャーリーグ通信】

 2002年に姚明がNBAのヒューストン・ロケッツに入団して以来、バスケットボールはサッカーと並び、中国で最も人気のあるスポーツのひとつとなった。

 中国におけるテレビ中継の放映権や関連商品の売り上げは約40億ドルに達している現在、NBAにとって中国は北米以外では最も重要な市場となっている。だが、ロケッツのゼネラルマネジャーであるダリル・モーリーがツイッター上で今年6月から続く香港での示威運動を支持する発言を行うと、中国側の態度が硬化したのは周知の通りだ。

 憲法の前文に「中国共産党の指導」による国家の発展を明記し、立法、行政、司法だけでなく生活の隅々まで共産党の支配を求める中国政府にとって、一連の示威運動は体制への挑戦以外の何物でもない。

 そのような示威運動を支持するのだから、たとえ姚明が所属し、背番号11を永久欠番にしているロケッツであっても許されるはずもなく、ロケッツを含むNBAの試合の中国国内での放映が中止されたり、NBAや各チームの支援企業が関係の見直しを行っている。

 また、中国外交部は否定しているものの、NBAのコミッショナーのアダム・シルバーが「中国側からモーリー氏の解任を求められた」と発言するなど、両者の関係は悪化の一途をたどっている。

 シルバーは「先行きは不透明」と不安を表明しながらも、「モーリー氏の表現の自由を尊重する」として中国側への謝罪を拒否している。憲法修正第1条において信教・言論・出版・集会の自由を明記する米国の国民としては、当然の態度だろう。

 これに対し、現在のところ大リーグでは香港問題に関連する目立った動きは認められない。

 16年にオースティン・ブライス(マーリンズ)が香港生まれとしては最初の大リーグ選手となり、18年に域内最大のショッピングモールであるハーバーシティーに香港1号店となるMLBショップを出店したばかりの大リーグ側にとって、不用意な発言によって新たな商機を失うことだけは避けなければならない。

 モーリー発言への中国側の猛反発を目の当たりにすれば、心中はどうであれ、表立って香港の示威運動を支持することは得策ではないと、静観の姿勢をとることは不思議ではないといえる。

 しかし、アップルやグーグル、フェイスブックなど、若者から「クール」と思われている企業が軒並み香港問題と距離を置いていることで、米国民からも「商売優先で腰が引けている」と見なされ始めている。

 態度を明らかにすれば中国政府の反発を受け、傍観者でいれば米国内での評判を落としかねないだけに、香港問題は大リーグにとって扱いに困る話題なのだ。

(鈴村裕輔/野球文化学会会長、名城大准教授)

最終更新:10/22(火) 9:26
日刊ゲンダイDIGITAL

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