ここから本文です

殺伐とした「平壌サッカー」…「韓国の大規模な軍備増強に対する反発」

10/22(火) 18:38配信

ハンギョレ新聞

22日、ハンギョレ新聞社で韓米同盟の転換を模索するフォーラム開かれる

 「そこまでする必要は…」

 2022年カタール・ワールドカップ2次予選グループH第3試合、平壌(ピョンヤン)で試合を終えた17日未明、仁川(インチョン)国際空港に帰ってきたサッカー国家代表チームの主将、ソン・フンミン選手に「北朝鮮選手らとユニフォーム交換をしたか」と記者が尋ねた。この質問にソン・フンミン選手はしばらく考えた後、こう答えた。

 サッカー選手たちは90分間、渾身の力を振り絞って戦った後、激励や尊重、友情を込めて汗に濡れたユニフォームを脱いで交換する。しかし、15日に平壌で開かれたサッカー試合の雰囲気は殺伐としており、南北の選手たちがユニフォームを交換する状況ではなかった。

 しかし、試合の雰囲気が良かったとしても、南北の選手はユニフォーム交換ができなかっただろう。大韓サッカー協会は平壌に向かって出発する前、「持っていたものは必ず持ち帰らなければならず、ユニフォームの交換もするな」と教育したという。北朝鮮制裁違反の可能性があるためだ。サッカー代表チームのユニフォームのスポンサーが米国ブランドのナイキなので、さらに気を使ったという。

 無観客、無中継、無取材、無応援団の平壌試合は、冷え込んだ南北関係の現状をそのまま表していた。南側は平壌での試合を機に南北関係が少しでも改善することを期待していたが、北側の考え方は違った。「これから分かるだろうが、我々は南朝鮮当局者らとこれ以上話すこともなく、再び向かい合うつもりもない」(8月16日、北朝鮮祖国平和統一委員会報道官談話)という発言が空言ではないということを、北朝鮮は行動で示した。冷たく硬くなった北朝鮮の態度について、様々な意見が飛び交っているが、「本質的な理由は、北朝鮮が金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の “勧説”が無視されてきたと考えていることだ」(チョン・ウクシク平和ネットワーク代表)という分析が目を引く。

北朝鮮が韓国側に不信感を抱く理由とは 
国軍の日に最新戦闘機F-35を公開 
軽空母、原子力潜水艦の計画など 
文在寅政府の軍備増強に不満 
「北側、段階的な軍縮に合意しておきながら 
軍備を増強する南側の矛盾した行動に反発」 
政府「戦作権の移管に欠かせない措置」
 金正恩委員長は7月25日、ミサイル発射を指導した際、「南朝鮮当局者たちが、表では“平和の握手”を演出し、共同宣言や合意書のような文書をちらつかせ、裏では攻撃型兵器搬入と合同軍事練習を強行するなど、矛盾した行動を示している」と述べ、不満を露わにした。金委員長の発言の後も、韓国政府は大規模な軍備増強計画を発表した。文在寅政府は安保を強調した李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政府時代よりも国防費を増やしている。歴代政府の国防費の増加率をみて見ると、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府5年の平均が8.9%、李明博政府5年の平均が5.2%、朴槿恵政府5年の平均が4.1%だった。文在寅政府の数値は2018年に7.6%、2019年に8.2%、2020年には7.4%だ。韓国政府は10月1日の「国軍の日」の行事で、最新戦闘機F-35Aを公開しており、最近は軽空母や原子力潜水艦の建造計画に言及した。

 平和ネットワークのチョン・ウクシク代表は、「昨年の南北首脳会談で、史上初めて段階的な軍縮を推進することで合意したが、南側では大規模な軍備増強が行われている。金委員長としては戸惑いが大きいだろう」と指摘した。10月5日にスウェーデンのストックホルムで行われた朝米実務協議が物別れに終わった後、キム・ミョンギル北朝鮮外務省巡回大使は声明を発表し、韓米合同軍事演習と朝鮮半島周辺への先端兵器の搬入などを対北朝鮮敵視政策とみなし、強い拒否感を示した。北朝鮮は韓米合同軍事演習などを理由に掲げ、昨年5月以降、ミサイルや放射砲を相次いで発射した。韓国政府は8月に実施された韓米指揮所練習(CPX)やF-35Aステルス戦闘機、偵察衛星などの導入は、戦時作戦権の移管に必要な事前処置だと説明した。戦作権の移管は朝鮮半島の平和体制を作る上で必須の課題であり、先端兵器の導入は北朝鮮だけでなく、大国の中国や日本などの周辺地域の軍事力に備える側面があるということだ。

南北の軍備統制が必要な理由 
国家安保戦略研究院のチョ・ソンニョル諮問研究委員 
「朝鮮半島の非核化後、韓米に容認できる 
北朝鮮の適正な軍事力の提示が必要」 
朝米非核化交渉の突破口を開くためには 
北朝鮮への不可侵の約束や韓米合同演習の短縮など 
南北米3者軍事協定の法制化が必要
 南北はこの問題をどう解決すべきだろうか。国家安保戦略研究院のチョ・ソンニョル諮問研究委員は、「韓米合同軍事演習の維持や韓国軍の先端兵器の導入が避けられないなら、朝鮮半島非核化以降、韓米両国が容認できる北朝鮮の適正な軍事力がどこまでなのかを提示する必要がある」と主張する。チョ委員は22日午後、ソウルのハンギョレ新聞社3階のチョンアムホールで市民平和フォーラムや参与連帯、ハンギョレ統一文化財団が共同主催する「韓米同盟の転換を模索するフォーラム」で、「朝鮮半島軍備統制推進案」を発表し、このような主張を展開する予定だ。南北が実質的な軍事的脅威を除去することで、軍事的緊張を緩和する必要があるという面で、軍備統制を進めようということだ。

 彼は発表で、「朝鮮半島における安全保証の当面の課題として、戦時作戦統制権の移管と韓米連合軍司令部の再編問題」を挙げ、「朝鮮半島における平和体制の構築に向け、韓米両国と北朝鮮との間に軍事的緊張緩和のための軍備統制が必要だ」と主張した。国連安保理の対北朝鮮決議によると、北朝鮮はすべての核兵器と現存する核計画、そしてすべての弾道ミサイルと生物化学兵器を「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)方式で廃棄しなければならない。

 しかし、チョ諮問研究委員は、これは北朝鮮に圧力をかけて非核化交渉に応じるよう誘導するため、制裁を最大に強めたものであり、非核化交渉を進めている北朝鮮にこれを要求するのは非現実的だと判断した。そして、周辺国の先制攻撃に反撃が可能な水準を朝鮮半島非核化後の北朝鮮の適正軍事力と見た。具体的には、生物化学兵器や火星-12型以下の中距離ミサイル、短距離弾道ミサイルなどを北朝鮮が保有できる適正な軍事力に挙げた。

 彼は、北朝鮮が適正軍事力を維持し、不可侵を保証されてこそ、米国との非核化交渉で約束どおりすべての核兵器と現存する核計画と中長距離および大陸間弾道ミサイル(IRBM、ICBM)を放棄できるだろうと主張した。チョ委員は、韓米合同軍事演習は最小化した形で徐々に減らしていき▽韓国軍の軍備増強は不可避性を認め、北朝鮮が受け入れるものの、韓国は透明性を保障し▽米国は非核化交渉中には対北朝鮮軍事攻撃または攻撃脅威の禁止を約束し▽非核化が完了すれば不可侵を約束することなどを主張した。彼はこのような軍事的約束をまとめ、南北米3者が軍事協定で法制化する方式の朝鮮半島軍備統制の推進を提案した。

クォン・ヒョクチョル・ハンギョレ平和研究所長 (お問い合わせjapan@hani.co.kr)

最終更新:10/22(火) 18:38
ハンギョレ新聞

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事