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IIJがデータセンターにTeslaのリチウムイオン蓄電池を導入した理由

10/23(水) 13:56配信

ZDNet Japan

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は10月21日、同社の白井データセンターキャンパスに米Tesla製の産業用リチウムイオン蓄電池「Powerpack」を導入し、11月1日に稼働を開始すると発表した。低炭素社会実現に向けた取り組みの一環として、大電力を消費するデータセンターでの環境負荷の平準化を狙うもので、まずは夏季の空調電力のピークカット/ピークシフトを実現し、空調設備のディマンド値(ピーク電流、いわゆる「基本料金」に相当する部分)で15%の削減を目指す。

 今回の取り組みの背景と意義について常務執行役員兼基盤エンジニアリング本部長の山井美和氏は、環境問題や電力自由化の流れなどを踏まえつつ、「ITは電気がないと動かないためITと電力は表裏一体」とし、分散型エネルギーシステムの実現などの新しいテーマにITとしても取り組んでいくべきとの認識を示した。「電力をただ消費するだけのデータセンターにおける『静』なる電源システムから、このような変革にも対応可能な『動』なる電源システムへの改革に取り組みたい」と説明した。

 技術的な点については、基盤エンジニアリング本部 データセンター技術部 企画課 主任の堤優介氏が説明した。

 白井データセンターキャンパスは、IIJが自社保有するデータセンターとしては2番目で、5月1日に運用を開始した最新設備になる。自社保有のメリットを生かし、新技術を積極的に導入する場にもなっているという。冷却技術としては省エネ型の外気冷却空調を導入しており、高いエネルギー効率を実現しているが、所在地が千葉県ということもあり、夏場は外気冷却を利用できず、日中に電力ピークが発生すると予測されている。そこで相対的に安価な夜間電力などを活用して蓄電池に充電し、日中のピーク時には蓄電池からの電力でピーク分を賄うことで、電力消費を平準化することが狙いとなる。

 ただし、現時点のシミュレーションで予測される電力料金の節約効果は、今回導入されるTeslaの「Powerpack」の製品寿命である15年間が経過する2035年までのトータルで見ると、約5000万円とあまり大きな額ではなく、実際には概念実証(PoC)に近い位置付けの取り組みとなりそうだ。

 システム面では、ファンやポンプといった空調設備のために用意されるUPS(無停止電源装置)としてPowerpackを採用し、従来型の鉛蓄電池UPSをリチウム電池に置き換える形になる(ITラック向けのUPSは従来型のまま)。なお、Powerpackで確保される電力容量のうち、停電時に空調設備の稼働を継続するために必要な容量は従来通りに確保しておき、今回のピーク制御用に確保する容量とは別にすることで、万一の事態に備えている。なお、ピーク時の給電はPowerpackから受配電盤側に戻すことでITラックなどにも給電される。

 同社の取り組みでは、「なぜリチウム電池か」「なぜTesla製か」という疑問が浮かぶ。これらについては、今回の狙いとなるピーク制御で、Powerpackに内蔵されたTesla製のソフトウェアが使われる点がポイントになる。

 万一の停電への備えとして、データセンターに大量に設置されているUPSを平時にも活用するという観点では、既に大量導入されている鉛蓄電池のUPSをピーク制御用に活用する技術を開発する方がメリットは大きいと思われる。だが現実問題として、鉛蓄電池のUPSでこうしたピーク制御に利用できる製品が存在していないため、現時点ではTeslaのPowerpack以外に選択肢がほぼ存在しない状況だという。今後同様の機能を備えた製品が増えてきた場合には、それらの製品が導入される可能性もあるとのことで、今後の展開が注目される。

最終更新:10/23(水) 13:56
ZDNet Japan

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