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「断捨離」のコツ - 捨てられないあなたへ

2019/10/25(金) 8:01配信

マイナビニュース

悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は片付けるのが苦手で「捨てるスキル」を身につけたいと悩んでいる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み

「片付けをしたくても、ものを捨てるのが苦手です。どうしたら断捨離できますか?」(48歳女性/専門サービス関連)


お金の貯め方について書いた前回にも触れましたが、十数年前までの僕は非常に物欲の強い人間でした。

高級車とか高級時計とか、お金がかかるものを欲しがっていたわけではないのですが、どうでもいいものについて「これは必要だ」と思い込み、つい買ってしまうということが多かったのです。

「完全限定品」などと書かれているとさらに焦り、「買わなきゃヤバい!」と焦りを感じていたりもしたのですから、売り手の思惑にまんまと引っかかっていたようなものですね。

にもかかわらず、いつしか物欲は減り、ものであふれた空間に強いストレスを感じるようになっていたのでした。

なにがきっかけだったのか、いつからだったのか、その記憶は曖昧ですし、きっかけなんてなかったのかもしれません。でも気がつけば、ものを減らすことに心地よさを感じるようになっていたのです。

とはいえ、ミニマリストのように極端なことをする気は毛頭ありません。「減らす」とは「空間を“なにもない状態”にする」ということではなく、「必要のないものを引いていく」ことだと考えているからです。

ミニマリズムは苦行か?

そういう意味において、強く共感できた本があります。『より少ない生き方 ものを手放して豊かになる』(ジョシュア・ベッカー 著、桜田直美 訳、かんき出版)がそれ。

「ものを捨てる・手放す」ということについての基本的な考え方が、自分にとても近いと感じたのです。著者は現代のミニマリズム運動を代表するひとりだそうですが、僕の場合、それはあとから知ったことでした。いわばプロフォールではなく、考え方に納得できたということ。

しかも著者は、最初からミニマリストを目指していたわけではないというのです。「ものがありすぎる」生活を続けてきた結果、「そこから脱却するためにミニマリストになった」というだけの話。それが逆に、大きな説得力となっているわけです。


「ミニマリズム」という言葉を聞いて、あなたはどんなことを想像するだろう?
何もない部屋、禁欲的、真っ白な壁、つらい倹約生活、家具がまったくない部屋で床に座る人。たいていの人は、こんなイメージが浮かぶのではないだろうか。あなたはおそらく、ミニマリズムは苦行だと思っているだろう。(中略)
その想像は、本物のミニマリズムとは遠くかけ離れている。私にとってのミニマリズムは、むしろ苦行とは正反対だ。ミニマリズムは自由であり、心の平安であり、喜びだ。ものがない場所が増えれば、それだけ新しい可能性が生まれてくる。いらないものを一掃すれば、理想の人生を妨害している障害物もなくなるのだ。正直なところ、私はミニマリズムにそれほど夢中になっているわけではない。私が目指すのは、誰もが適正量のものを持ち、そのおかげで最高の人生を生きられるようになることだ。豊かな先進国に暮らす人の98パーセントにとっては、それはものを減らすことを意味するだろう。そこで実際問題として、所有物を減らす方法を身につける必要がある。(35ページより)


「ものを減らせない」と悩む人に対して、いきなりミニマリズムの話をするなんて極端ではないかと感じたとしても、上記の文章を目にすれば納得できるのではないでしょうか?

つまりミニマリズムとはトレンドとか流行のようなものではなく、あくまで「ものを減らす」という行為と地続きになっているということ。考えてみれば当然の話なのですが、両者を別ものとして捉えている方は少なくない気がするのです。


少ないもので暮らすのは、いつの時代であっても、自由で豊かな生き方だ。人生に希望と目的意識を与えてくれる。ただものをたくさん持つよりも、ずっと心を豊かにしてくれる。つまりミニマリズム運動は、現代の大量生産・大量消費へのアンチテーゼとして新しく生まれたのではない。むしろその正反対だ。(45ページより)


「減らす習慣」を身につけると、この文章を通じて著者が訴えようとしていることが明確に理解できるようになると思います。少なくとも、僕はそうでした。だからこそ、まずはここからスタートしてみればいいのではないかと感じます。

「断捨離」は人生の尺度で捉える

次にご紹介したいのは、『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』(やましたひでこ 著、大和書房)。いうまでもなく、著者は流行語となった「断捨離」の第一人者です。

これは昨年出た近作で、タイトルからもわかるとおり、これから定年を迎える人に向けられたもの。しかし、そもそも断捨離自体が普遍的な考え方。昨年読み終えたとき、「これは定年世代だけでなく、あらゆる層に訴えかけられる本だな」と強く感じたので、あえてご紹介しようと思ったわけです。


断捨離とは、人生のなかの「不要・不適・不快」を捨て、手放していくプロセス。断捨離とは、人生のなかに「要・適・快」を招き入れるプロセス。私の役割は、断捨離をツールとしてそのプロセスを味わってもらい、人生の新陳代謝を促すことです。(6ページより)


このような考え方に基づき、本書で著者は、生活空間内にあるものをひとつひとつ点検しています。これから先の人生をともにしたいものを選び抜いたうえで、生活空間としての家、それを取り囲む土地や地域、さらには人間関係について、「要・適・快」「不要・不適・不快」を問いかけているのです。

そのため読者は、これまで「常識」だと思い込んでいた多くのことがらから脱却する必要性に迫られることになるかもしれません。しかし、それは「縛り」「執着」「思い込み」を断捨離することにもつながっていくでしょう。

いわば断捨離を「人生」という尺度で捉えるということ。だから「定年後の断捨離」なのですが、いうまでもなくそれは若い人にとっても「これからの人生における断捨離」という意味を持つわけです。


私たちはある選択を迫られたとき、「ほどほど」「そこそこ」を選んでしまうことがあります。「身の程を知る」「足るを知る」という言葉のように、「自分はこの程度でいい」と制限をかけてしまうのです。「ほどほど」「そこそこ」というある種、安全地帯から次のゾーンに行くときは、やはり抵抗感や違和感がありますが、行けばそこに身体がなじんできます。(40ページより)


そう考えると、断捨離や、ものを捨てるという行為に対する抵抗感も和らいでくるのではないでしょうか?

ものとコミュニケーションをとる


なぜ、捨ててすっきりしても、ふたたび物が溜まるのか。きっと、「捨てる!技術」とつぶやきながら「えいっ」と捨てるときには物と真剣に向かいあうけれど、日々の暮らしでは物とちゃんと向き合っていないからではないのか。(「はじめに――『捨てる!』技術では足りなかった人のために」より)


こう指摘するのは、『もう一度「捨てる!」技術―「メンテナンス!」の方法』(辰巳渚 著、宝島社新書)の著者。2000年に刊行した『「捨てる!」技術』(宝島社新書)によって、ものであふれた時代の新たな生活哲学を提唱した人物であり、本書はその続編です。

つまり、捨てる技術とは瞬間的に張り切るための技術ではなく、日常的にものを生かし、ものを使いこなしていく技術だという考え方。


捨てるべき物を捨てるべきときに捨て、一方ではいる物をきちんと使いこなしていく。いる物を、大切に扱い、手入れし、壊れたら直し、使い切っていく。使い切ったら、「ありがとう」と感謝してちゃんと捨ててあげる。そんな物との付き合い方を考えてみたら、「そうか、これは物をメンテナンスするということだ」と気づいた。(「はじめに――『捨てる!』技術では足りなかった人のために」より)


単に捨てることを目的化するだけではなく、メンテナンスという発想を取り入れれば、捨てる技術を日常の実践につなげられるはずだということです。

いうまでもなく「メンテナンス」とは、「維持する」「持続する」「保存する」という意味。そして著者は「メンテナンス」と聞いたとき、ヨーロッパの民家をイメージするそうです。

たとえば床やドアノブなどを毎日たんねんに磨き、立てつけの悪くなったドアを補修し、しっくいがはげてきたら塗りなおし……と、100年も200年も手を入れながらの暮らし。そうした生活こそが喜びであり、その年月が家の価値となっているわけです。

つまり本書で著者が訴えているのは、そんなライフスタイルの重要性。ものとコミュニケーションをとりながら暮らしていけば、より豊かな人生を送れるのではないかということです。

一見するとこれは、「捨てる」「断捨離」とは違う考え方のようにも思えます。しかし、本当にそうでしょうか?

必要のないものは捨てる。必要なものは修理して使う。本来は、そうしたアプローチを共存させることが重要であるはず。そう感じるからこそ、この機会に本書も参考にしてみていただきたいと感じたわけです。


冒頭に、ものを減らすことに心地よさを感じるようになったと書きました。それは事実なのですが、だからといって僕は、「捨てるスキル」を身につけたなどとは思っていません。それどころか、まだまだその途上にいる状態。

だから、「なにを捨てるべきか」「なにを残すべきか」と考えること自体に楽しさを感じているのです。

そこで、そうやって楽しんでみることをお勧めしたいと思います。きっとそこから、なにかが変わっていくでしょうから。


著者プロフィール : 印南敦史(いんなみ・あつし)

作家、書評家、フリーランスライター、編集者。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家としても月間50本以上の書評を執筆中。『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)ほか著書多数。

印南敦史

最終更新:2019/10/25(金) 8:01
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