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東京五輪トライアスロン本番は大丈夫?東京湾「大腸菌」8月イベントでは基準値2倍超

10/27(日) 11:10配信

東スポWeb

【東スポ2020 現場最前線】マラソン、競歩開催の札幌移転問題に揺れる東京五輪・パラリンピックだが、他でも懸念材料に直面している競技は少なくない。中でも頭を抱えているのがトライアスロン。8月にお台場海浜公園周辺で行われたテストイベントで基準値以上の大腸菌が検出され、スイムが中止になったのは記憶に新しい。果たして本番は大丈夫なのか。本紙は国際トライアスロン連合(ITU)副会長兼日本トライアスロン連合(JTU)専務理事の大塚真一郎氏(62)、さらに水環境の専門家に大会成功のカギを握る「秘密兵器」と「打開策」を取材した。

 スイム(水泳)、バイク(自転車)、ラン(長距離走)を一人で行う通称・鉄人レース。戦う相手は人間ではなく自然環境と言っても過言ではない。それだけに猛暑や台風が予想される来年夏の東京五輪は心配が尽きない。中でも世間を騒然とさせたのは、8月15~18日に本番と同会場同規模で行われたテストイベントだ。17日のスイムコースの海域から基準値の2倍を超える大腸菌が検出。ITUが4段階に分類する水質レベルで最悪の「レベル4」と判定された。結局競技は中止、翌日へ持ち越しとなった。

 アスリートファーストをうたいながら、大腸菌だらけの海で選手を泳がせれば猛批判を浴びるのは必至。何より選手の健康を損ねかねない。

 そこで、東京五輪組織委員会とITUは課題を綿密に検証。すでに数々の対策プランを試している。

 まず渦中の大腸菌問題。競技前日(16日)の午後1時に採取したサンプルは「レベル4」だったが、これは台風10号の影響だったことが判明している。勘違いされがちだが、気温(水温)とは一切関係ない。合流式下水道からあふれた汚染水がお台場周辺に流れ着いたのだ。当時は高潮の上に強風15メートルが吹き、汚染水がオイルフェンスの上を越えてしまった。

 大塚氏は「本番ではフェンスの高波対策を検討してもらう。また、今回1枚だった水中スクリーンを広域にして、3重になることが決まっている」と語る。大腸菌の侵入を防ぐ水中スクリーンはポリエステル製の分厚い布。これを3枚投入することで万全を期すという。

 一方、同大会の1週間前に行われたマラソンスイミングでは、選手から「トイレのにおいがした」との声が出た。これが「糞便が垂れ流しになっているのではないか」との臆測を呼び、大腸菌の問題と結び付けられることにもなった。だが、この異臭の原因もテストイベントで分析済みだ。

「スクリーンを閉じた際に自然体系に変化が生じ、海中の藻が一部死滅した際のにおいと判断している」と同氏。スクリーンの素材はきめ細かいためプランクトンを遮断し、生態系に影響を与えたという。

 今月5日にはお台場海浜公園周辺で水質改善の実証実験を行い、9日に出た結果は、大腸菌数、腸球菌数いずれもゼロ。水質浄化の効果が認められた格好だ。他にもさまざまな対策を打ち出す方針だが、大腸菌問題と深い因果関係がある台風の心配は尽きない。同競技は来年7月27~28日、8月1日の日程。仮に先日、日本列島を襲った台風19号のような巨大な台風が来たらどうするのか? 大塚氏は「ITUの判断になるが、台風が来ると分かれば競技規則や運営マニュアルにのっとり、プランB~Eくらい準備し、シミュレーションしていく」といい、警察の許可や住民の理解を得て、競技を行う時間的範囲を広げるプランも検討しているという。

 五輪のトライアスロンは開催都市の「ショーケース」と言われる。お台場の会場からは東京タワーやスカイツリー、レインボーブリッジが一望。懸念材料は多いが、雨や台風などすべてを受け入れ、自然と融合した近代都市・東京を存分に味わえるチャンスだ。大会のレガシーにするためにも、関係者は万全の態勢で臨む。

【秘密兵器「アイスバス」】猛暑対策も抜かりはない。大会中はクーリングテントやミストシャワーが設置され、観客にうちわを配布。また、同競技は屋外のためイスが熱くなる。そこで映画館のように着席部分が折りたためるタイプのイスを導入。機能的かつ合理的な工夫が凝らされている。

 選手の熱中症対策としてはランコースで625メートルごと16か所に冷たい水とスポンジ、冷却ジェルが置かれ、さらに今回は各自が用意した水分もコーチによって手渡しすることが認められた。バイクにはボトル2本分の格納スペースがあり、凍らせた飲み物を入れることも可能だ。

 そして圧巻は「アイスバス」の日本初上陸。直訳すると「氷風呂」だが、実際に氷は入っておらず、機械によって16度、18度など設定した温度が保たれる。競技を終えた選手がリカバリー用に漬かって熱中症を防ぐ優れモノ。今回のテストイベントでは国内公式競技として史上初めて5台のアイスバスが導入され、選手からも大好評だった。

【都の「下水排除方式」の問題点】お台場の水質問題に警鐘を鳴らす専門家もいる。「東京湾を泳げる海にすることが、世界に誇れる環境立国・日本の姿」を主張する、国連テクニカルアドバイザーでグローバルウォータ・ジャパン代表の吉村和就氏(70)は「台風の大きさや波の高さは予測できない。競技当日にスクリーンやフェンスでは防げない可能性もある」と指摘する。
 その根本的な原因として、同氏は東京都の「下水排除方式」の問題点を挙げた。

「東京都の8割は1本の下水道管を汚水と雨水が一緒に流れる合流式。そのため大雨が降ると、下水処理場で受け入れできない大量の汚水が川を経由し、最終的に東京湾に貯留される。大雨時は下水管渠(げすいかんきょ)の途中にある約800か所の雨水吐き出し口から生下水が放出され、その頻度は年間90~120回。これがお台場の水質汚染の元凶です」

 では、一体どんな解決法があるのか。吉村氏はこんな打開策を提案する。

「すぐそばにある有明水再生センターで高度処理されたキレイな処理水をお台場に流せばいい。現在、センターでは1日3万トンの下水が処理されて運河に放流されているが、その放流口をお台場に変えるんです。1日3万トンのキレイな水を24時間流し続ければ、トライアスロン会場(400メートル四方で深さ4メートル)の約64万トンの海水は約20日間でキレイになります」

 実際、お台場の海域浄化は2002年から3年間実験済み。仮配管のルート(センターからお台場海浜公園)も実証済みだ。現在、配管は撤去されているが「本番までに十分間に合う。トップの英断が決め手」と吉村氏は言う。解決すれば、トライアスロンの問題を超え、未来の東京湾の水質向上にもつながる。検討に値するだろう。

最終更新:10/27(日) 11:12
東スポWeb

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