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儲け率トップは関空、成田はリテール事業が大手百貨店クラスに成長、空港ビジネスの儲けの構造に迫る! 

2019/10/28(月) 12:00配信

MONEYzine

■空港の管理主体は「国」と「会社」の2種類

 国は将来的な需要増を見据え、羽田空港と成田空港の処理能力を拡大する。特に羽田空港は、滑走路運用・飛行経路の見直しで国際線の発着枠を増やす。今回は、中部国際、関空・伊丹を含め、日本を代表する空港の概要や従業員の年収に迫ってみた。

 一口に空港といっても「国(地方)管理」と「会社管理」に大別される。主な空港でいえば「東京国際空港(羽田)」は国管理。「成田国際空港」「中部国際空港」「関西国際空港・大阪国際空港(伊丹)」は会社管理である。

 ただし、会社といっても中部(中部国際空港株式会社)は民間が50%出資する半官半民企業、成田(成田国際空港株式会社)は国が全額出資の特殊会社である。

 関空・伊丹(新関西国際空港株式会社)も国が株式の100%を所有している特殊会社だが、2016年4月にオリックス(8591)などが主体となっている民間企業の関西エアポートに運営権を移管。契約期限は2060年3月31日である。

■「滑走路」と「旅客ターミナル」の運営形態

 国管理空港の運営委託(コンセッション)は広がっており、仙台空港や高松空港、福岡空港に続き、北海道の主要空港、熊本空港、広島空港なども民間企業による運営に移行する方向だ。

 経営的な面からいえば、「滑走路」と「旅客ターミナル」を同一組織が運営する空港と、別組織で運営する空港に分かれる。

 成田と中部は滑走路とターミナルビルの一体運営である。運営権を移管した新関西国際空港は、賃貸事業主といっていいだろう。運営権の対価372億円を含め、関西エアポートからの年間収入はおよそ600億円である。

 国管理の羽田の場合は、滑走路とターミナルビルの運営が分かれており、ターミナルビルの建設・運営管理は、ANAホールディングス(9202)や日本航空(9201)が大株主の民間企業、日本空港ビルデング(9706)の担当である。土地は国からの賃借で、年間の賃料はおよそ100億円のようだ。

 羽田の滑走路は国管理であり、国が発表している事業収入(滑走路などによる航空系事業)は762億円(2019年3月期)である。

■成田空港の経営指標をチェック! 

 では、滑走路と旅客ターミナルビルを一体で運営する成田国際空港の様々な指標から、空港の運営実態に迫ってみよう。

 空港建設に向けて新東京国際空港公団が設立されたのは1966年、国による計画認可は1969年。ただし、大規模な新空港建設反対運動、いわゆる“三里塚闘争”に直面し、A滑走路・第1旅客ターミナルの供用を開始するようになったのは1978年5月である。

 運営主体がそれまでの新東京国際空港公団から成田国際空港に代わったのは2004年4月。現在はA・B滑走路、第1~第3ターミナルを構える空港になり、成田発の就航都市は137都市(海外115都市・国内22都市)にまで拡大。年間の航空機発着回数は26万回弱、国際線旅客数は3600万人に迫る。

 空港の資産価値は土地の2770億円を含め6494億円。空港の運営を担う従業員は706人、パート211人だ。

 ちなみに、関空の資産価値は1兆6500億円(うち土地1兆4200億円)、中部国際は3600億円、伊丹空港は1515億円である。

■成田は「キャッシュベース重視」の経営を追求

 成田国際空港の財務指標も確認してみよう。

 現金の流れを示すキャッシュフロー(CF)計算書における「受取利息・配当金」は9500万円。それに対して「利息支払額」は33.8億円である。このように支払利息が受取利息を大幅に上回っているのは、利息をつけて返済しなければならない借入金や社債の償還が多いためである。

 成田国際空港が抱える有利子負債は4000億円に迫る。これまでの利益の蓄積である利益剰余金2063億円を上回る。

 ただし、国が全額出資する会社ながら「キャッシュベース重視の経営を追求している」ということは、CF計算書に示されているといっていいだろう。

 空港の増強や社債の償還・借入金返済のために社外に投じたキャッシュは780億円(投資活動CF△402億円+財務活動CF△378億円)。営業活動CFとして獲得した783億円の範囲内に収めていることは明らかだ。

 新たに獲得したキャッシュの範囲内で設備投資や借入金返済に出金するという姿勢は、15年3月期~19年3月期の5期累計でもハッキリする。入金3411億円に対して、出金は3342億円である。

■成田空港の売上高の内訳は? 注目は「リテール事業」

 売上高の内訳も見ておこう。

 全体売上高2497億円の44%を占めるのが、空港運営事業(1108億円)である。航空機の発着にともなう収入や給油施設・旅客施設の使用料収入など、航空会社を主要顧客とする事業だ。

 成田国際空港の説明によれば、国際線における航空機1回当たりの着陸料は33.8万円(羽田59.4万円、関空41.4万円、中部36.2万円)である。その着陸料金を含め、航空会社や旅客が支払う国際線における空港利用料金の合計は、旅客1人当たりに換算すると6484円(羽田7886円、関空7357円、中部6495円)だ。

 いずれもボーイング787‐8機を前提にした料金だが、成田は羽田や関空などに比べて、料金を安く設定しているといえるだろう。

 施設運営事業は、航空会社への事務所貸付や貨物施設の整備・運営などである。空港周辺の芝山鉄道と成田高速鉄道アクセスに関するものが鉄道事業だ。

 注目したいのが、リテール事業(1048億円)である。旅客ターミナルビルにおける商業スペースの整備・運営であり、直営の小売・飲食店、免税店における売上収入やテナント収入などからなる。テナントを含めた空港内店舗売上高は2016年度1086億円、2017年度1246億円、2018年度1432億円での推移だ。ショッピングセンター(CS)と見れば、日本トップ級である。

 百貨店との比較でいえば、売上高日本一の伊勢丹新宿本店の2888億円は下回るが、三越日本橋本店の1447億円(2018年度)に並ぶ規模である。

 リテール事業は空港運営事業に比べて利益率が高いのも特長だ。売上高がほぼ同規模の2019年3月期でいえば、施設運営事業の営業利益107億円に対し、リテール事業は299億円と3倍規模である。

 成田国際空港によれば、滑走路などの運営で得る航空系事業の売上高とターミナル運営など非航空系売上高の比率は「42対58」である。

 非航空系事業の割合を伸ばすことで確実に利益を確保してきた同空港を例にとれば、空港経営ではターミナルなど非航空系収入の割合を高めることが重要なポイントになる、ということだろう。小売店や免税店、飲食店などを含め魅力ある商業エリアを実現し、航空機利用者以外の集客が不可欠というわけだ。

■各空港の収支を「1万円の航空チケット」にたとえると? 

 1万円の航空チケットにたとえた各空港の収支と、従業員給与も確認しておこう。

 最も儲け率が高いのは新関西国際空港である。1万円の売上高があるたびに3700円以上儲けていることになる。同社は空港用地や施設を保有し賃貸に出す不動産会社化したことで原価・経費割合を低減、そのため儲け幅が拡大するようになった。

 2019年3月期の売上高は651億円だが、すでに触れたようにその大部分は、運営権の譲渡先である関西エアポートからの収入だ。運営権を譲渡する以前の2016年3月期の売上高は1845億円だった。ただし、有利子負債は8000億円超。成田国際空港や中部国際空港を大幅に上回る。

 成田国際空港は1万円につきおよそ2200円の儲け。売上高が成田国際空港のほぼ4分の1の中部国際空港(642億円)は、1万円の収入で1500円の儲けである。

 空港ビルデングは売上高が2736億円の民間企業だ。羽田を拠点に成田や関空などでも店舗を運営。パラオ国際空港のターミナル運営にも乗り出した。同社の場合、1万円の収入に対して、儲けは800円強である。

 従業員の平均年間給与は、成田国際空港と新関西国際空港が850万円、中部国際空港は730万円といったところだ。いずれも国の出資があることもあって、金額に大きな変動はない。

 新関西国際空港の平均勤続年数が短いのは、運営権譲渡にともない組織改編があったためだ。グループ会社の多くを関西エアポートに売却したことで、従業員も2000人強から149人に減少している。

 民間企業の空港ビルデングは700万円を割っているが、2018年3月期の623万円からは大幅アップだ。

 社内取締役の平均年俸は、空港ビルデングが3500万円、成田国際と新関西国際空港は2000万円前後、中部国際は1000万円台である。

最終更新:2019/10/28(月) 12:00
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