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イノシシ重点捕獲エリア 狩猟規制にばらつき 18都府県全面解禁 豚コレラ拡大懸念 本紙調べ

2019/10/29(火) 9:01配信

日本農業新聞

 日本農業新聞は、農水省が定めた豚コレラの発生に伴うイノシシ重点捕獲エリアの21都府県を対象に、野生イノシシの狩猟体制について調査した。11月からの狩猟規制の有無を聞いたところ、規制するのは岐阜と三重の2県で、18都府県が例年通り狩猟を解禁し、体制にばらつきがあることが分かった。狩猟で捕獲数は増えるが、山に人の出入りが増えるなどで豚コレラを拡散させる恐れがある。狩猟しなければ農業被害拡大、狩猟者減少などの課題もあり、各地は難しい判断を迫られている。

獣害抑制と板挟み

 豚コレラに感染した野生イノシシは11県で発見され、同省設定の重点捕獲エリアは21都府県にある。今シーズンの狩猟について、同省や野生イノシシを管轄する環境省は、一律の規制を設けず、都府県判断とした。環境省は「野生動物は場所で現状が異なり、狩猟は各県の判断に任せている」と説明する。

 豚コレラ発生県のうち「狩猟を規制する」とした県は、岐阜と三重。岐阜は県内全域を、鳥類の捕獲を目的とした網猟を除く指定猟法(銃・わな)禁止区域に指定し、狩猟を制限する。三重は経口ワクチンを散布した北勢6市町で狩猟、野生鳥獣の肉(ジビエ)の流通を禁止する。両県とも全面解禁はしないが、許可した狩猟者によるイノシシの調査捕獲、個体数調整の捕獲はする。18日に野生イノシシの感染を確認した静岡県は、規制について検討中(28日時点)とする。

 残りの18都府県は、例年通り狩猟を解禁する。長野は「狩猟による豚コレラ拡大のリスクは認識しているが、鹿の農業被害が多く狩猟しないと翌年に鹿の数が増える」と説明。熊対策に継続した狩猟が必要なことや狩猟者減の恐れも理由に挙げる。富山は「イノシシの増加は、結果的に農業被害拡大や豚コレラの拡大につながる」とする。栃木、茨城は「狩猟期間中に状況次第で規制する可能性もある」とした。

 都府県によっては猟友会を通じ狩猟者に、感染イノシシの発見現場から半径10キロ以内で狩猟したイノシシは流通や自家消費の自粛を求め、死体は血液が漏れないよう密閉して運ぶなど注意を促す。靴や車両用に消毒剤を無償で配り感染拡大を防ぐ考え。ただ、山に出入りする回数が増え、交差汚染の懸念は残る。

 猟友会関係者は「狩猟者全員の消毒徹底は難しい。個別に狩猟している状況は感染拡大につながりかねない」と懸念。岐阜県養豚協会の吉野毅会長は「狩猟で野生イノシシが移動すれば感染拡大の恐れもある。豚のワクチン接種をした上で、捕獲でイノシシを減らすことが急務だ」と話す。

 岐阜大学で野生動物を研究する鈴木正嗣教授は「一律規制は難しくても国は狩猟でイノシシの数を抑えるメリットと、感染イノシシとの接触や移動などで感染が拡大するデメリットを認識し、狩猟の仕組みを考える必要がある」と指摘する。

日本農業新聞

最終更新:2019/10/29(火) 9:01
日本農業新聞

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