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消えた「駅弁」マーク 取り巻く環境の変化 かつては電報、赤帽の取り扱い駅も

11/3(日) 16:00配信

産経新聞

 この夏、時刻表愛読者の間に衝撃のニュースが駆けめぐった。交通新聞社が発行する「JR時刻表」の9月号で「各駅の駅弁情報は今月号をもって掲載を終了します」というお知らせが載ったのだ。列車の時刻が掲載されている本文の駅名の横には、駅弁の販売を意味する「弁」の文字マークがつき、ページの下の方では、各駅ごとの駅弁の名称と価格が紹介されていた。予告通り、10月号では、それらが消えていた。

【写真でみる】看板にある四角い駅弁マーク

 駅弁情報掲載終了の理由を、交通新聞社は「近年、インターネットやSNSの普及に伴い、お客様が情報をいつでも簡単に手に入れられる時代になっており、駅弁を取り巻く環境も大きく様変わりしております。駅売店のコンビニ化や『駅ナカ』の出店などにより、お客様の選択肢も広がりました」とした上で「時代背景を考慮し、やむを得ず掲載を終了する苦渋の判断となりました」と説明した。

 かつて駅弁は間違いなく旅の楽しみだった。駅構内で駅弁を販売する業者などでつくる「日本鉄道構内営業中央会」には最盛期の昭和43~44年、約430社が加盟し、全国津々浦々で駅弁が売られていた。しかし、現在は91社(今年4月現在)にまで減少。JR時刻表で「弁」マークがついていたのは、同会の加盟業者が駅弁を販売している駅(掲載要望があった業者も含む)だったため、その数はどうしても少なくなっていた。同会の沼本忠次事務局長は業界への逆風の要因を「まずは列車のスピードアップ。駅弁の売り上げイコール乗車時間ですから。コンビニなどの進出も大きい」と指摘する。

 コンビニ弁当が気軽に買え、駅ナカには大規模な駅弁コーナーができ、新大阪駅で北海道や九州の駅弁が購入できる。時刻表で「次に着く駅にはどんな駅弁があるのか」と調べる時代ではなくなったのだろう。

 当たり前にあったものが消えていく。古い時刻表で「弁」マークと並んで載っていたほかの記号が物語る。JTBパブリッシングから9月に発刊された「時刻表完全復刻版 1964年10月号」(税別1500円)を開いてみよう。夢の超特急として東海道新幹線が開業したときのダイヤが掲載されている。

 東海道線下りページの駅名欄にある大阪駅の横を見ると、記号が5つもついている。一番左から十字マークは「医療設備のある駅」、帽子マークは「赤帽のいる駅」、「洗」マークは「洗面所のある駅」、次に「弁」マークがあって、最も右の日本電信電話公社のマークは「電報を取り扱う駅」を意味する。

 赤帽は駅に常駐し、客の荷物を運ぶ赤い帽子をかぶったポーターで、21世紀を前にほぼ姿を消した。洗面所は蒸気機関車が走っていた時代、排煙で汚れた顔や手を洗うため設置されていたが、今ではごく一部の駅にしか残っていない。電報はこの時代、連絡方法として欠かせないものだった。当然、これらの記号は時刻表から無くなっている。

 現在、荷物が多くてもキャリーケースで移動は楽々。スマートフォンがあれば、電報を使うこともない。それでも、インターネットやSNSのなかった時代、赤帽も洗面所も旅に必要なもので、どの駅にあるかは重要な情報だったことを時刻表の記号は示していた。(鮫島敬三)

最終更新:11/3(日) 17:32
産経新聞

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