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中国からビットコインを持って逃げたプログラマー、両親はブラックリスト掲載の宣教師【匿名インタビュー】

11/4(月) 7:00配信

CoinDesk Japan

最近の中国におけるブロックチェーン技術に対する多方面からの受け入れ姿勢は、世界の仮想通貨コミュニティーを分断している。その有効性を示す有り難い動きと考える者もいれば、仮想通貨がその反権威主義的な本質からさらに離れてしまっていると懸念する人もいる。

中国当局は長くにわたって、ビットコインのような仮想通貨への投資を抑制してきた。しかし、世界で最も人口の多いこの国は、経済に対する政府の監視力を高める可能性のある国家仮想通貨の計画において、著しい進展を見せている。

CoinDeskは、中国で生まれ、東アジアに移住した匿名のビットコイン所有者を取材した。ブロックチェーン「受け入れ」を自由化への前進と捉えることからは程遠く、この人物は政府がそのような技術を国民への支配を強めるために利用すると見込んでいる。何しろ中国共産党の宣伝活動事務所は、党員が党への忠誠を誓うことのできるブロックチェーンベースのアプリケーションを発表したくらいなのだから。

中国の大規模抑留センターが現在、100万人を超える中国のイスラム教徒を「再教育」するために利用されていることを鑑み、このビットコイン所有者は中国国内の民族少数派が、政府の管理する完全に統合された金融システムのもとで、さらに厳しい状況に直面するのではないかと懸念している。 |

以下では、2014年にビットコインプロジェクトに注目し始めたプログラマーである、このビットコイン所有者の男性とのインタビューの抜粋をお伝えする。

尚、文章は分かりやすくするために編集されている。この人物は家族へ影響が及ぶことを恐れているため、CoinDeskは身元を明かさないことに同意した。

──最近中国から聞こえてくる「ブロックチェーン支持」の発表についてどのようにお考えですか。

非常に恐ろしいです。

核融合が単なる技術であるように、仮想通貨も単に技術です。多くの人類に利益をもたらす可能性のある原子力発電機を作るために利用することもできれば、原子爆弾を作るために使うこともできます。これらの技術に関しては、倫理につきしっかりと考える必要があります。

全体主義国家にとって、自らが掌握し、すべての個人とその行動を追跡したり、最も厳格な通貨規制を実施したりするために利用できるような価値が認められるならば、全体主義国家はそのようにするでしょう。

──このようなニュースを、ブロックチェーン技術の「普及」を肯定的に示すものとして歓迎する人が仮想通貨コミュニティーの中にこれほど多くいるのはなぜだと思いますか。

東アジアの人々は、政府は親のようなもので、世話をしてくれるという考えに非常に親和性を持っています。

『すばらしい新世界』や『1984年』のような小説を読んでも、彼らにとってそのような世界はおおかた問題ないのです。しかし、政府が同意しないような形で行動したい一握りの人々は、迫害を受けます。

私の両親は18年ほど、(キリスト教の)宣教師をしていますが、中国では宣教師であることは違法です。電話は盗聴され、コンピュータはハッキングされていました。両親の名前は中国警察のブラックリストに載っていました。両親のような人々は、テロリスト、またはチベット自由の戦士と呼ばれます。

中国には、非常に厳格な資本規制があります。そのためビットコインについて読んだ時には、「検閲への真の抵抗力を持つ、お金を保管するためのすばらしい方法だ」と思ったものです。

──そのように絶え間ない監視のもとでどのように暮らしていたのですか。

運用上のセキュリティのために非常に具体的なプロトコルがありました。例えば、電話で会話したり、メールのやり取りをする際には、すべての危険な言葉を入れ替え、サーバーが中国にないように確実にしていました。

両親は一度、電子決済サービスのウィーチャットペイ(WeChatPay)とアリペイ(AliPay)のアカウントを削除されてしまったことがあります。しかし幸運なことに、現金、法定通貨という実際のお金を持っていたので、暮らしていくことができました。中国が100%デジタル化していたら、両親は生き延びることができなかったでしょう。

──現在ご家族は(比較的)分散化したブロックチェーン技術をどのように使っているのですか。

私は両親に仮想通貨で送金することはありません。しかし、子供時代に私が最も恐れていたことは、両親が国外退去させられてしまうことでした。中国では、国外退去を命じらると、48時間以内にすべての資産を清算する必要があります。私たちは、48時間以内に持ち物をすべてまとめる練習をしていました。訓練のようなものでした。

現在、両親の資産はすべて仮想通貨です。家族の1人でも、世界のどこかで秘密鍵へのアクセスを確保できれば、家族の資産は安泰です。それでも、両親にとっては彼らの所有する仮想通貨へアクセスすることはいまだに非常に困難です。自分たちではできないのです。私の助けが間違いなく必要です。だから両親の資産のほとんどを私が管理しているのです。そういう意味では、価値の保管を可能にしてくれるとしても、(仮想通貨の)アクセスのしやすさというのはいまだに欠けています。それに両親は、銀行サービスと同じようには仮想通貨を理解できてはいません。

結局のところ、検閲への抵抗力は十分ではありません。取引を行う内密な方法、そしてすべての人にとってアクセス可能で、理解可能な方法が必要です。そこにはまだ至っていません。

翻訳:山口晶子 | 編集:T.Minamoto | 写真:Mask and laptopimage via Shutterstock | 原文:Bitcoin Dissident Sees Dark Warnings in China’s Blockchain Push

CoinDesk Japan 編集部

最終更新:11/6(水) 12:23
CoinDesk Japan

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