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首里城の被害を拡大させたのは「安すぎる入場料」だと考える、これだけの理由

11/5(火) 8:26配信

ITmedia ビジネスオンライン

 沖縄の「宝」である首里城が消失し、復元へ向けた支援の輪が全国で広がっているなかで、悲しみに打ちひしがれる沖縄の人々に追い打ちをかけるような悪質なデマがネットで流れている。

【画像】だからこそ、「高い入場料」が必要

 この手の悲劇が起きるたび、「中韓の犯行ではないか」「いや、反日左翼の自作自演だ」なんて流言が飛び交うのは毎度のこととして、今回驚くのは、一部で「沖縄県が悪い」と言わんばかりの印象操作が行われていることだ。例えば、某ニュースサイトのコメント欄には、こんな感じの投稿がされて、数千を超える多くの支持を得ている。

 「これまで首里城の管理を国がしていて、場内でのイベントは原則禁止されていた。今年2月以降に管理が県に移って場内でイベントが解禁となった。その途端に今回のような火災が起きた」

 結論から申し上げると、これは真っ赤なウソだ。

 国が管理していたときから首里城ではフツーにイベントをやっている。正月には今回焼失した正殿の前で演奏や琉球王朝時代の儀式が再現される「新春の宴」が盛大に行われているし、毎年秋になると夜の9時まで正殿前の舞台で、琉球舞踏などが見られる「中秋の宴」というイベントが開催される。県に管理が移行してから「柔軟な利活用」を目指していたのは事実だが、この2月を境に首里城のイベント方針がガラリと変わったわけではないのだ。

 もちろん、もっか原因を調査中なので城内のイベント準備が関係ないとは断言できない。が、もしこれがイベント関係者の火の不始末だろうが、分電盤のショートのせいだろうが、ここまで甚大な被害を招いた「真犯人」は別にいる。

 それは「大人830円」という「安すぎる入場料」だ。

世界の常識、日本の非常識

 世界を見渡せば、その国の文化や歴史を代表するような木造建築は、高い入場料、拝観料を徴収するのが「常識」となっている。職人がひとつひとつ手作業をしなくてはいけないというコストはもちろんのこと、一度燃えたらあっという間に延焼してパアになるので、防火設備に金にかけるからだ。

 例えば、世界遺産「キジ島の木造教会建築」の中の一つで、ロシア最古の教会であるプレオブラジェンスカヤ教会の入場料は880ルーブル、現在のレートだとおよそ1500円だ。映画『アナと雪の女王』に登場する城のモデルにもなったゴル・スターヴ教会をはじめ、ノルウェー国内の伝統建築を集めたノルウェー民族博物館は公式Webサイトを見ると、大人は160クローネ。日本円だと2500円である。

 この傾向はアジアも変わらない。日本以上の観光大国であるタイのパタヤで、1981年から工事が続けられ、「アジアのサクラダ・ファミリア」とも呼ばれるサンクチュアリー・オブ・トゥルースの入館料は、タイ国政府観光庁のWebサイトでは、「500バーツ~」とあり、こちらも現在のレートでは1795円だ。

 琉球王国の宮殿再現という歴史的価値に加えて、琉球舞踊や伝統的儀式を現代に伝える文化継承の場という意味では、首里城はこれらの木造建築と比べてまったく遜色ない。しかし、入場料はその半分から3分の1である。つまり、今回の被害を拡大させたのは、市民体育館レベルの「安すぎる入場料」しか取っていなかったことで、世界の木造建築では当たり前のメンテナンスやセキュリティが実現できていなかった可能性が高いのだ。

 多くの識者が指摘しているように、県内最大の木造建築物だった首里城には、あまりにお粗末な防火設備しかなかった。正殿には外から火がくるのを防ぐドレンチャーという消火設備のみで、周囲には放水銃4基があったが、今回の火災では熱で近づけなかったため使用すらされていない。

 なぜお粗末な防火設備だったのかというと、首里城の施設保全や利用者の安全対策のために費やすことができる予算が少ないからだ。では、なぜ少ないのかというと、「安すぎる入場料」のせいだ。

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最終更新:11/5(火) 8:26
ITmedia ビジネスオンライン

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