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記者にも思想テスト。中国が締め付けを強化する理由──香港デモに一党支配への危機感

2019/11/6(水) 8:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

中国流の「政治の近代化」

採択された5000文字の長文ドキュメントは「国家の統治システムと統治能力の近代化」と題されている。これは初めて提起されたわけではない。習氏は6年前の中央委総会で初提起し、「工業、農業、国防、科学技術」の「4つの近代化」に続いて進める「政治の近代化」を意味する。「第5の近代化」とするメディアもあった。

はっきり言って、これを理解するのは難しい。理解可能な範囲で紹介すれば次のようになる。「国家の統治システム」とは共産党による制度設計であり、その目的は「公共領域における一連の合理的秩序の確立」にある。一方、「統治能力の近代化」は「執政党(政権党)」が近代的思考を習得し、より開かれた多元的で包括的な支配概念の確立」とされる。

これらの目的をどう実現するか、手順が示されているわけではない。

実現のスケジュールとして、

2035年までに近代化を基本的に実現

中国建国100年の2049年までに全面的に実現

が提示されているだけだ。「政治の近代化」が実現すれば、一党支配の社会が安定するのだろうか。

権力監視の欠如こそ

権力は必ず腐敗する。それは制度の違いを超えた権力の本質である。権力をチェックする法秩序と、メディアを含む独立した監視機能が働かないと、権力の暴走を抑制できない。アメリカを超える大国になろうとする中国の統治システムに欠けているのはこれだろう。

少し中国に同情的なのは、欧米を中心に世界で巻き起こる中国批判の多くが、

中国内政と主権にかかわる問題

米中対立の延長としての中国叩き

AI監視社会の功罪

の三つを一緒に論じている点だ。

どれもつながってはいるが、分けて考えなければ公平を欠く。

プロバスケットボールNBAチームの幹部が、香港デモに同情的なツイートをして中国側が反発している問題は、香港問題が内政問題であることに加え、「米中代理戦争」の様相を呈していることと切り離せない。

中国は列強から侵略され植民地化された歴史的経験から、台湾、香港、少数民族問題に関する批判には極めて敏感で、独善的ともとれる反応をする。奪われた領土を回復し統一性を回復するのが建国理念だから、理解できないわけではない。

一方、北海道大学教授が拘束された事件はどうみればいいだろう。拘束理由は一切明らかにされず、中国への不信感は増すばかり。この種の拘束が増えるほど、中国のイメージは傷つき、中国自身のマイナスになる。単純な刑事事件ならともかく、政治と外交が絡むような「スパイ」事件での拘束多発を憂慮する。

岡田充(おかだ・たかし):共同通信客員論説委員、桜美林大非常勤講師。共同通信時代、香港、モスクワ、台北各支局長などを歴任。「21世紀中国総研」で「海峡両岸論」を連載中。

岡田充

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最終更新:2019/11/6(水) 18:01
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