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「次回は必ず茅葺きに…」大嘗祭で使用される建物、優先されるべきは“建設費の節約”か“日本古来の伝統”か

11/6(水) 9:01配信

AbemaTIMES

 先月22日に挙行された「即位礼正殿の儀」に続く重要な儀式「大嘗祭」が今月14、15日に予定されている。新たに即位した天皇が国の安寧や五穀豊穣を祈る儀式で、1300年以上の歴史がある。ところが今回、この儀式の舞台「大嘗宮」をめぐって論争が起きていたことをご存知だろうか。

【映像】茅葺き屋根の補修の様子など

 大嘗祭のためだけに造られる「大嘗宮」は大小約40棟の建屋からなり、前回は主要の3つの建物の屋根は歴史ある「茅葺き」だった。しかし今回、宮内庁は経費削減のため、全てを「板葺き」に変更すると発表したのだ。

 これに待ったをかけたのが、有識者や自民党の有志議員だ。務台俊介衆院議員は「1300年続いてきた。それを今回途切れさせていいのか」、山口俊一衆院議員は「日本の歴史伝統、まさに文化だ。やはりこれは守っていきたい」として、8月末、政府に要望書を提出。しかし政府は工期や職人不足を理由に、これを認めることはなかった。

 政府の決定に対し、ネット上には 「時代に合わせ、合理的でいいのでは」「伝統にこだわる必要はない」「“質素倹約”が皇室のモットーでは」「茅葺きは燃えやすいから危険」「伝統文化に税金を使うのはムダ」と賛成の声もある一方、「予算を削るところが違うだろ」「一世一度の儀式を削減するな」「世界に日本の文化や伝統をアピールできる」「職人の技術が途絶えてしまうかが心配」といった批判的な声も投稿されていた。

 4日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、この「茅葺き」にスポットを当て、専門家に話を聞いた。

■「ドイツでは富裕層のステータス」

 まず「茅」とは何か。日本茅葺き文化協会の代表理事を務める安藤邦廣・筑波大学名誉教授は「屋根を葺く草の総称なので、茅という草はない。代表的なものはススキと葦で、“山のススキ”“海の葦”と言われている。戦後、小麦を増産したので、小麦藁がよく使われ、“藁葺き”と言えばだいたい小麦藁だ」と説明する。

 茅葺きは雨の音がほとんどしないといった防音効果、高い断熱効果と通気性により、夏は涼しく冬は暖かい。また、として軽いため柱や壁への負荷が少ない。そして自然材料のため環境に優しく、古い茅はそのまま肥料に利用できるといったメリットもあるという。そのため近年では「遮音性を活かしたコンサートなどの音楽イベント」「デイサービスなど高齢者にとっての癒しの空間」「外国人観光客向けの宿泊施設」などにも活用され、ドイツでは富裕層のステータスとなっている場合もあるようだ。

 「良い点は色々あるが、家の中で火を焚けるのは茅葺きだけだ。つまり、囲炉裏を使えるのも茅葺きということになる。煙が茅の隙間から自然に抜けていくし、煤が付くと虫も入って来ない。その一方、雨は入らない。また、東京で仕事に集中していると疲れるので、田舎のサテライトオフィスとして茅葺きの家を利用することも広まっている。やはり茅葺きの屋根というのはストレスがない」(安藤氏)。

 一方、耐火性・防火性の低さ、小動物が住み着きやすく不衛生であることといった点も挙げられる。「市街化されているエリアでは火災の危険性が大きいので、東京などで新築するのは建築基準法違反になる。西日本に比べて関東や東北では過剰に線引きされているので、農村地帯でも禁止になっている地域が非常に多い。少しずつ戻していく法的な措置も必要だろう」(安藤氏)。

 また、とりわけ傷みの状況に応じて数十年の間隔で取り換えることが必要だが、すべてが手作業で行われるため、一度の葺き替えに数百万~一千万円程度の費用が掛かってしまうことも、個人での所有を難しくしている。「20年くらいの単位で葺き替えが必要だが、全てを葺き替えるということはあまりなく、一面ずつ直していくのが基本だ。例えば500万円で20年持つとすると、考え方としては年間25万円くらいだろう。昔の農村では茅も持ち合うし労働も出し合っていたので、お金をかけずに葺くことができた。やはり協同ができて初めて可能になる屋根だ。これからライフスタイルを同じくする人が集まり、ネットワークを組めばできる可能性はある」(安藤氏)。

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最終更新:11/6(水) 9:13
AbemaTIMES

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