ここから本文です

「反論せず黙っている奴が一番たちが悪い」

11/7(木) 11:01配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 松本晃ラディクールジャパン代表取締役会長兼CEO (3)

 ――松本さんはこれまで、経営者としてどの会社でも、経営合理性をとことん追求してきたように思います。

 私は正しいと思ったことは徹底的にやります。ただし相手の言うことがもっともだと納得すれば、考えを改めます。そうでない限りは折れません。

 会社というのは面白いですよ。これは違うだろうと指摘したとき、「我々は間違っていました」と率直に認める人と、「何が悪いのか。我々は間違っていない」と言い張る人がいます。さらにその中間に、黙っている人がいる。

 この黙っていて責任をとろうとしない連中が、一番質(たち)が悪い。反論する人のほうがはるかにいい。議論できますからね。

 私の経営哲学の一つは何かと言えば、「正しいことを正しくやる」です。いつも会社にとって、何が正しいかを頭の中で問い続け、こうと決めたら、ぶれずに実行する。考えていることは、それだけです。

 従って曲がったことはやらない。これは正しいと思うけど、世の中の様々な事情や会社の悪しき慣行などに妥協して、変えることは一切しない。

 ――RIZAPグループでは1年で役員を退いたので、松本さんの「挫折」と捉えるメディアもありますが。

 誰かが勝手に書いていることで、挫折でも何でもありません。よくなる方向に会社を変える目処をつけ、やるべきことはやりました。

 私は意外に細かくてうるさいんです。気づいたことはどんどん言います。ガミガミオヤジがあまり長くいると、うっとうしいでしょう。だから1年くらいで辞めてあげたほうがいいかなと思ったわけです。

 昨年6月に代表取締役最高執行責任者(COO)に就いて、10月にはCOOを退任し代表取締役構造改革担当になりました。今年1月にさらに代表権を返上して、最後に取締役を6月に退きました。このように徐々に降りていったのはソフトランディングのためです。いきなりだと、あれこれ言われかねないでしょう。今は特別顧問として毎月、瀬戸健社長と昼食を摂りながらいろんな話をしていますよ。

 ――現在、ラディクールジャパンの代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)のほかに、社外取締役をいくつかやっていますね。カルビー時代から続けている会社もありますが、どのように選んでいるのですか。

 社外取締役を引き受けるのは、好奇心をくすぐる会社ですね。いま圧倒的に面白いのは、回転寿司チェーンのスシローグローバルホールディングス(2017年12月初任)です。なぜ100円の寿司で成功するのか、そこに興味があったのです。

 スシローは経営者が優秀ですね。このため意見をする私の役目は減ってきました。最近は勉強をさせてもらっています。

 2014年12月からの前田工繊は会長を昔から知っているのでね。イー・ウーマンは社長が国会議員の野田聖子さんと大学同級生で、その関係で手伝ってと言われたからです。この2社以外は、私の興味を引く会社なので社外取締役を引き受けました。

 ――業種が多様ですね。

 社外取締役に今年6月になった家電量販店のノジマは儲かっているので、どうしてなのか知りたかったのです。私は数年前に家電量販店はいずれなくなると言ったんです。

 量販店で商品を選んで、自宅に帰ってネットで買えば安い。だから駄目になると思ったわけですが、そうならない。ノジマは偉いなと感心しています。家電量販店はみな生き残るために、多角化していろいろ工夫しています。これからもどうやって行くのか興味があります。

 ――パイオニアの社外取締役にこのほどなりましたね。

 うちの大きなテレビは古いのですが、よく映ります。パイオニアのプラズマテレビなんです。私はオーディオと関係ないこともあって、パイオニアの経営が悪くなっていたとはよく知りませんでした。

 しかし投資ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジアが総額1000億円以上も出して買うのには、何か理由があるのだろう。それを知りたいのと、会社がよくなることに貢献したいと思ったのです。

 ――再建のために一役買おうというわけですね。

 私がいろんな会社の社外取締役をやるのは、お金のためではありません。その会社の中で、もし松本が入って会社が変わったと言ってくれれば、それが醍醐味ですね。

 報酬の希望を尋ねられても、「そんなものはいくらでもいいですよ」と答えます。実際、女性活躍を推進しているイー・ウーマンからは、報酬をもらっていません。

 その代わり相手の会社には「うまくいったら、何か面白いことを考えてください」と言っています。例えば、パイオニアがよみがえって上場して、利益が十分出るようになったら、何か斬新なことをやれば、社内のモチベーションが上がり、元気が出るでしょう。

 振り返ると、1986年に伊藤忠商事から業績がとても悪い子会社に、何とかしてこいと言われて出向して、立て直した経験があります。そのとき思いました。ああ悪い会社をよくするのは面白いなとね。

 カルビーの場合は、いい会社でしたが、儲からなくなっていた。そういう会社を業績が伸びるように変えるのは楽しいですよ。

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:11/7(木) 11:01
ニュースソクラ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事