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ナショナリズム再燃=憎悪で扇動、ヒトラーと共通―ベルサイユ条約100年の欧州

11/8(金) 7:10配信

時事通信

 【パリ時事】第1次世界大戦(1914~18年)後、連合国と敗戦国ドイツとの間で締結されたベルサイユ条約は、多額の賠償金と領土割譲でドイツに屈辱を与え、ユダヤ人排斥を掲げるヒトラーを生んだ。

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 今年で締結から100年を迎えたが、対立の構造が複雑化した欧米でナショナリズムが再燃している。

 ◇恨みの感情利用
 歴史は繰り返すのか。ゲルマン民族の優位性を主張するヒトラーは、第1次大戦後の国内不況をユダヤ人に責任転嫁して第2次大戦へと突き進んだ。歴史家ジャンクロード・アゼラ氏はフランス紙ルモンドへの寄稿で「1世紀前は恨みの国民感情が民主主義にとって一番危険な毒だったが、状況は今でも変わらない」と警告した。

 現在、中東やアフリカからの大量の移民流入を背景に、欧州各地でナショナリズムが高まりを見せている。仏極右政党「国民連合(RN)」のルペン党首は最近、支持率でマクロン仏大統領と伯仲。10月のイタリア中部ウンブリア州の議会選では、反移民の右派政党「同盟」が連立与党に勝利した。9月に行われたドイツのザクセン、ブランデンブルク両州での州議会選でも、移民排斥を掲げる「ドイツのための選択肢」(AfD)が躍進した。

 いずれの勢力も「移民が雇用を奪い、治安を悪化させている」と主張し、憎悪をかき立てる。どこかヒトラーの手法と共通している点を指摘する識者は少なくない。

 ◇強要から対話へ
 教訓は生かされているだろうか。仏国際関係研究所(IFRI)のドミニク・ダビド顧問は、第2次大戦を防げなかったのは「ベルサイユ条約が交渉を経ずにドイツに強要されたからだ」と指摘する。中東での紛争や米中貿易戦争など、世界の対立の構造が複雑化する現在では、マクロン大統領が掲げる「多国間主義」が課題解決の鍵になると期待している。

 退任を見据えるメルケル独首相はレームダック(死に体)化し、英国は欧州連合(EU)離脱をめぐり混迷する。欧州の新リーダーを自負するマクロン氏は、トランプ米大統領の「米国第一主義」を真っ向から批判しつつ、イラン核合意をめぐる問題などで仲介役として奔走する。

 しかし、トランプ政権は今月4日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を通告するなど、ますます孤立主義を強めている。今のところ、マクロン氏の試みは奏功していない。

 ただ、ダビド氏は「多国間主義で世界を統治できるわけではないが、対話の保証にはなる」とマクロン氏の姿勢を評価する。欧州では2度の大戦を経て、EUの発展とともに和解が進んだ。ダビド氏は「欧州には対話と協力の文化がある」と楽観する姿勢を捨てていない。 

最終更新:11/8(金) 14:03
時事通信

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