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こども文化科学館の老朽化に驚いた 財政難で20年以上リニューアルなし

11/8(金) 11:00配信

中国新聞デジタル

 「広島市のこども文化科学館で、故障中や調整中の展示が多いのに驚いた。子どもたちに科学技術を体験させる施設として、これでいいのか」。2歳の娘と訪れた保護者から、こんな声が編集局に届いた。取材すると、いまだに「ウィンドウズ95」を使って動かしているアトラクションがあるなど展示が長年更新されず、メンテナンスに苦慮するスタッフの嘆きが聞こえてきた。

【動画】スタッフ、メンテに苦慮

 原爆ドーム(中区)に近い、市中心部にある「5―Daysこども文化科学館」。4階建てで、プラネタリウムのドーム屋根が目印だ。自分が走る速さを体感できる装置、光や音の性質を学べる仕掛けを随所に施した迷路…。科学の基礎を楽しみながら学べる約60の体験型アトラクションが常設されている。

 今月初めに記者が訪れた際、展示はほぼ全てが作動していた。「一時期、調整中の展示が五つほど重なった時期はあった。反応が鈍いものもあり、故障が多いと思われたのかも」と展示担当の矢野宏和さん(55)。そして、ため息交じりに打ち明けた。「実は20年以上リニューアルしていないんです」

 来年開館40年を迎える同館。確かに展示はレトロな雰囲気が漂う。例えば、宇宙空間でロケットを操るシミュレーションゲーム。1998年に導入された。動かすための基本ソフト(OS)は当時のままのウィンドウズ95。さらに、レバーの劣化で微妙な操作が難しくなり「職員もクリアできないほどの難易度になってしまった」(矢野さん)という。このほか、交換部品がもう入手できない装置もあるという。

 これらの展示は全て特注品。21年前、2階の展示を一新した際には約2億7千万円かかった。同館の本年度の予算は人件費や管理運営費、事業費を合わせて計約1億8500万円。

 市文化振興課によると、当初は計画的に更新していたが、市の財政難で困難になったという。ここ10年は、同館と同じく中央公園内にある旧市民球場跡地の再開発の検討、同公園自由・芝生広場内へのサッカースタジアム建設が絡み、大がかりな改装に乗り出しにくい事情もあるようだ。

 科学技術が目まぐるしく進歩する中、各地の同様の公立施設も常設展示の更新や在り方を巡って苦心している。

 防府市青少年科学館ソラールは2014年度のリニューアルの際、日本科学協会(東京)が全国巡回展で使った展示を安く譲り受けた。厳しい市財政の中での判断だが、それでも約1千万円かかったという。

 最新の展示をそろえることに疑問の声もある。倉敷科学センター(倉敷市)は08年、滑車や振り子など、あえてシンプルな器具で科学の原理原則を伝える常設展示に刷新した。担当者は「子どもの興味、関心を引くのに高度な展示は必ずしも必要ない」と言う。

 広島市のこども文化科学館は街中にあり、入館無料。家族連れの人気は高く、18年度は37万人を集めた。編集局に声を寄せた保護者は「一等地にあるからこそ、もっと魅力あるスペースに」と願う。

 市は12年、老朽化した同館の移転を検討する方針をいったん示した。その後、スタジアム建設計画の浮上、決定を踏まえ、公園全体の活用策について改めて検討を始めた。20年度の早い時期に基本方針をまとめる予定だ。

 理科離れが叫ばれる中、子どもの関心を高める科学館について自治体がどう維持運営し、将来像を描くのか。市が活用策を議論する上で焦点の一つになる。(石井雄一)

 <クリック>5―Daysこども文化科学館 広島市が約12億5千万円かけて建設し、1980年5月に開館。市文化財団が指定管理者として運営する。入館無料だが、4階建ての最上階のプラネタリウムは有料。建物には市こども図書館も入居する。学習塾を経営する「5コーポレーション」(安佐南区)が2017年、両館の命名権を取得した。

中国新聞社

最終更新:11/8(金) 11:00
中国新聞デジタル

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