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「育成と障害予防のバランスが重要」全軟連、宗像豊巳専務理事

11/8(金) 17:30配信

ベースボールキング

10月27日に大阪大学中之島センターで行われた「野球科学特別セミナー シンポジウム」では全日本軟式野球連盟(全軟連)の宗像豊巳専務理事が、今季から実施した「球数制限」についての発表を行った。

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全軟連は、今季、各大会で大規模な検診を実施している。

学童軟式野球最大の大会である「マクドナルド杯」では8月18日に参加854選手の肩肘検診が行われた。

・肩肘痛経験がある子供は、6年生で47%、5年生で33.8%、3、4年生で17.3%、1、2年生で5%
・肩肘障害歴(形態異常+剥離骨折+OCD)は、6年生で65.1%、5年生で55.4%、3、4年生で28.8%、1、2年生で10%

こうした調査では常にそうだが、問診で肩肘痛を訴えない選手でも障害を負っているケースが相当多い。

5、6年生のポジション別の肩肘検診では

・肩肘痛経験がある子供は、内外野手で38.5%、捕手が55%、投手が52.7%、投手捕手兼任が63.8%
・肩肘障害歴(形態異常+剥離骨折+OCD)は内外野手で56.1%、捕手が75%、投手が79.5%、投手捕手兼任が80%

投手捕手兼任選手の肩肘への負担が非常に大きいことがわかる。

8月11日には、全日本少年軟式野球大会の出場全16チームの中学生投手2名ずつについて肩肘の検診を行った。その結果によると、

・50%の投手が肘に痛みを感じている
・エコーによる形態評価では72%の投手に異常が見られた。内訳は肘内側に骨の形態異常があった投手が50%、剥離骨折が22%、OCD((離断性骨軟骨炎)が3%

だった。

さらに女子軟式野球でも肩肘検診が行われた。

・学童女子のガールズトーナメントではベスト4まで進んだ選手で受診を希望した37人の内24%が、第2次検診が必要だった。
・中学女子軟式野球大会では、バッテリーで受診を希望した67人の内15%が、第2次検診が必要だった。

こうした広範な調査によって、軟式野球の肩肘障害の実態が明らかになりつつある。

2019年のマクドナルド杯では、

・一人の投球数は1日70球以内
・打者との対戦中に70球に達した場合は、その打者を完了するまで投げることができる。
・一度他のポジションに変わった投手は、再度投手になることはできない。
・タイブレークでも1日70球以内であれば継投は可能

などの新ルールが導入された。

これによって、投手に関するデータは大きく変化した。

投手起用では、2018年まで43%の試合で「完投」があったが、2019年は1%に減った。
1日で70球をオーバーした投手は、2018年は35%いた。100球以上も12.5%いたが、2019年は70球に達した時点の打者の完了まで投げたケースが15.9%あっただけだった。

「一度他のポジションに変わった投手は、再度投手になることはできない」というルールは、先行して球数制限を導入した徳島県で、上位、中軸打線だけエースに投げさせて、下位打線を2番手投手に投げさせる戦法が横行したため。
投手交代で時間がかかるし、「本当に子供のためになっているか」という議論が起こってこのルールが追加された。
マクドナル杯もこれに倣っている。

「球数制限」によって「試合時間が長くなりそう」、「2番手3番手が投げると乱打戦が多くなりそう」という現場の声があったが、平均試合時間は2018年が106.8分、2019年は109.8分だった。
今年から使用球をC号球からJ号球に変えたことで、打撃戦が多くなったことで試合時間は若干伸びているが、「球数制限」による影響はあまり大きくない。

今後、全軟連では、

(1)学童チーム指導者に対する資格取得義務→正しい知識を伝える場を確保
(2)試合日程調整→ダブルヘッダーをなくす、リーグ戦への意向
(3)エコー検診の義務付け
(4)中学生、女子など他のカテゴリーでの球数制限の検討も行う

という政策を推進していく。
さらに、塁間や投本間の距離の短縮、ホームベースを大きくする、カウント1-1からのプレー、ファール何球でアウト、などのルールの導入も検討している。

宗像専務理事は「育成主義と障害予防の両輪の上に、バランス良く“勝利を目指して楽しむ野球”が乗らないといけない」と締めくくった。(取材・写真:広尾晃)

BASEBALL KING

最終更新:11/8(金) 17:30
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