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“嫉妬”もメロディーに乗せて歌う、楽しい時代劇! 「鴛鴦歌合戦」 よみがえるマキノ映画の神髄

11/9(土) 16:56配信

夕刊フジ

 【牧野省三没後90年 よみがえるマキノ映画の神髄】

 牧野省三の作品作りは多くの血縁者に引き継がれた。長男であるマキノ正博(雅弘など別字表記あり)は製作・監督・松竹太秦撮影所長などを務め、その異母兄の松田定次も映画監督。四女で女優のマキノ智子の子が長門裕之、津川雅彦。津川の娘、真由子も女優だ。血縁をたぐると、次々と映画関係者が出てくる。

 正博は20代から父が残した多額の負債を返済しながら仕事を続けた。作風は多彩で、31歳で異色のオペレッタ時代劇、片岡千恵蔵主演の『鴛鴦歌合戦』を監督した。

 気楽な浪人、浅井礼三郎(千恵蔵)をめぐり、隣人の町娘、豪商の娘、叔父が持ってきた縁談の娘が四角関係に…。

 皆が困惑していると骨董(こっとう)好きの大名(ディック・ミネ)が娘のひとりを側室にと言い出し大混乱になるという物語。

 女同士の嫉妬もメロディーがついて、♪な、な、なんです~と歌にしてしまうお陽気な展開。公開当初は評価されなかったが、近年、衣装や小道具、音楽などそのモダンで斬新なセンスが再評価されている。

 筆者もこんなに楽しい時代劇が戦前にあったのだと驚いた。なお“早撮り”で知られる正博はこの続編『鴛鴦道中』をわずか28時間で撮影したと伝説的に語られている。

 また「次郎長」など時代劇の定番も次々手がけ、大河内伝次郎の当たり役『丹下左膳』も監督した。

 刀剣に目がない殿様の頼みで、丹下左膳(伝次郎)は小野塚道場にある乾雲・坤竜、ふたつの名刀を奪うことになる。不敵にも道場に殴りこみ、小野塚鉄斎を倒して、乾雲を手にするが、鉄斎の娘、弥生(沢村晶子)が気になり、坤竜を置いて立ち去った。しかし、ふたつの刀は夜な夜な互いを呼び合い、左膳は血を求める刀に操られるように辻斬りを繰り返す。

 ものまねもされる独特の声が印象的な大河内の左膳は床に置いたさやに一瞬で刀をおさめるなど隻腕の剣士の技も光る。ダメ男左膳にほれるおふじ(水戸光子)も実にいい女。

 刀に魅入られた左膳捕縛に動き出すのが、名奉行大岡越前。正義の男を大河内伝次郎が2役をやっているのが見どころだろう。

 正博は省三が切り開いた映画の面白さを拡大、見せ場たっぷりの娯楽作品で、大衆を大いに沸かせたのである。(時代劇研究家・ペリー荻野)

 ■鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん) 1939年公開、マキノ正博監督。オペレッタ時代劇映画。音楽は服部良一門下の大久保徳二郎で、作詞とオペレッタ構成は島田磬也が担当した。

最終更新:11/9(土) 16:56
夕刊フジ

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