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トヨタの新型コンパクトカー「ヤリス」、サーキットでその実力を試した(松田秀士編)

11/9(土) 0:00配信

Impress Watch

■新型「ヤリス」にサーキットで乗った

 新型「ヤリス」(プロトタイプ)の試乗会が行なわれた。試乗会場は千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイで、タイトコーナーが多く、コーナリングでは一般道に近いスピードレベルでの試乗が可能なコースだ。

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 早速だが、まず1.5リッター+ハイブリッドで走り出す。加速はスムーズで、電動モーターのアシストがしっかりサポートしている。この「M15A」型エンジンは3気筒なので1気筒あたり500㏄。たしかBMWのモジュールエンジンも1気筒500㏄だった。BMWと同じようにモジュールなのか? と技術者に質問してみると、「RAV4」などに搭載される4気筒の「M20A」型エンジンと共通のモジュールなのだという。TNGA(Toyota New Global Architecture)となってからの新開発エンジンで、「カムリ」に搭載される4気筒の「A25A」型エンジンは2.5リッター。そうか、こっちは1気筒500㏄を超えているからモジュールは当てはまらない。1.5リッターエンジン以外にヤリスに搭載される1.0リッター(3気筒)エンジンは、「パッソ」などに搭載される3気筒の「1KR」型エンジン。これも1気筒500㏄ではない。

 さらに突っ込んで質問すると、排気量ではなくボアストローク比を約1.2にすることが効率のよい結果を生むとのことで、その方向性に沿って開発されているのだという。ちなみに、M15A型はストローク97.6×ボア80.5のロングストロークエンジン。もう少し細かく解説すると、1.5リッターエンジンはすべてアトキンソンサイクル+EGRで、1.0リッターエンジンはEGRのみ。また、同じ1.5リッターエンジンでもハイブリッド用はポート噴射で、コンベンショナルは直噴システムと分けている。ハイブリッドはモーターアシストがあるから、ポート噴射で十分と考えているのだろうか。

 整理すると、新型ヤリスに搭載されるエンジンは直列3気筒1.5リッター(ポート噴射)+ハイブリッド、直列3気筒1.5リッター(直噴)、直列3気筒1.0リッター(ポート噴射)の3種類。トランスミッションは直列3気筒1.5リッターにCVT(発進ギヤ付き)と6速MT。1.0リッターにはCVTとなる。また4WDも2種類設定されていて、ハイブリッド用にリアモーターを追加したE-FOURと、一般的な4WD(コンベ1.5リッターエンジン用)がある。

■ハイブリッド、コンベ1.5リッターに試乗

 今回の試乗会では1.0リッター車の試乗車はなかったが、それぞれのエンジンは3気筒のわりに振動感も少なく、トップエンド6500rpm(6速MTは6900rpmまで回せる)まで気持ちよく回り、アクセルのコントロールにも反応がしっかりとしていた。特にハイブリッドのアクセルON/OFFやコントロールに対しての反応が速く、他モデルに採用されるTHS IIよりもスポーティ感があって扱いやすさが光る。

 ヤリス ハイブリッドのTHS IIにはハイブリッドバッテリーにリチウムイオン電池が採用されていて、補器類などを新開発することによって電気の出し入れ効率を向上。この成果が大きくモノを言うと感じた。それはコーナリングの初期だ。コーナー進入時にはアクセルをOFFにして、そのタイミングでステアリングを切り込むのだが、このときいかに前輪に荷重を移動させるかがポイント。2WD(FF)は駆動輪と操舵輪が同一なので、タイヤのキャパシティをすぐに使い切ってしまい、アンダーステアになり駆動もコーナリングもロスを起こしがち。FFのコーナリングでキーとなるのがターンイン初期だ。コーナリングの始まりで、いかに高いスピードでいかに早く向きを変えるかがポイントになる。

 一般的にはここでブレーキを使ってフロント荷重にするのだが、それではタイヤの縦方向のグリップを使い過ぎてしまう。そこで、タイミングよくブレーキをリリースしながら、まだ前荷重が残っているタイミングでステアリングを切り込む。しかし前荷重の持続性がないので初期はよくても、そのあとイン側のフロントタイヤの荷重は抜けがちになる。

 ところが、ヤリス ハイブリッドはバッテリーへの電気の出し入れ効率が上がったことで、これまでの約2倍の回生ブレーキを発生させている。つまりアクセルOFF時に、前輪だけにかかる減速効果が大きくなり、しかも持続性のある前輪荷重が可能となるのだ。ブレーキング前荷重にこだわらなくて済むので、横方向のタイヤグリップ(コーナリング)に余裕が生まれ、舵の効きがよくなる。これにはステアリング系(電動パワステ)の剛性アップを見越した進化も見逃せない。これによって初期の向きが変わり、しかもエイペックスまでの追舵にもしっかりと反応している。エイペックスまでのコーナリングでクルマの向きがしっかりと変わるので、コーナー出口ではステアリングを戻しながら早くアクセルを開けることが可能だ。

 するとリアのグリップ力がよくないのか? ととられがちだが、とてもしっとりとグリップを残しながら流れる感じ。唐突な動きは皆無なのだ。従って予測がつくのでコントロールしやすいというわけ。また、パニックブレーキングしながらのレーンチェンジでも、リアはしっかりとグリップしていた。

 ではコンベンショナルな1.5リッターモデルはどうだったのか? フロントの入りはハイブリッドモデルほどではないが、こちらもよく曲がる。特に6速MTはフロントの軽快感が好印象で、エンジンをレッドゾーンを超えた6900rpmあたりまで使い切れる。トップエンドまで回しても失速感がなく、キレのいい気持ちのよい3気筒だ。反対にAT(CVT)モデルは4000rpm以上での音質が気になった。6速MTモデルとは音質が全く異なるので、CVTと共鳴しているのではないかと感じる。量販までには改善してほしい部分である。

■進化点をまとめた

 と、ここまでドライブトレーンの進化によってこのようなスポーティなハンドリングを成し得ているかのようだが、もちろんそれだけではない。受け皿が重要で、プラットフォームではTNGA第4弾となるコンパクトカー専用の「GA-Bプラットフォーム」を新開発した。車体重量は従来比で50kg減、ねじり剛性は30%以上アップなど、ドライブし始めてすぐに感じるほどに進化している。そのサスペンションは実にしなやかに動く。それでいてロールそのものは大きすぎない。

 具体的には重心高を約10cm下げていて、フロント・ストラット式/リア・トーションビーム式(4WDは独立式)のバネ定数をソフトに設定し、スタビを強化。サスペンションの摺動抵抗を大幅に低減させている。そのため足が硬いという印象は受けず、ロール感もそれなりにあるがパワーアップした電動パワステの操舵に対してダイレクトな応答だ。操舵初期にロールを発生させるので、過敏な横方向への動きは見せず、あくまでドライバーによるステアリングスピードで応答性が決まる。とてもドライバーオリエンテッドでライントレース性も高い。

 では乗り心地はどうかというと、試乗会場がフラット路面のサーキットだったので正直分からない。ただ、意識的に縁石を大きく跨いで走行もしてみたが、サスペンションの動きがしなやかで、突起を乗り越えたあとにタイヤの接地性も失われない。ぜひ一般道で確かめてみたいと思った。

 またドライビングポジションが非常によく、運転席のヒップポイントは従来から50mm後退して35mm下げられている。チルト&テレスコもしっかりととられていて、ベストなドラポジをセットすることができた。また、ダッシュボード上端を薄く低く設定しているので、ヒップポイントが下げられていることを感じさせないくらいに前方視界がいい。新開発の双眼メーターは新鮮で、センターのTFTディスプレイよりも双眼メーターの文字を大きくするなど、高齢者でも視認しやすい思いやりを感じる。また、フロントガラス投影式のヘッドアップディスプレイもあるので高齢者でも安心できるだろう。このヘッドアップディスプレイ装備車でも、ダッシュボード上端に出っ張りは少なく視界を全く邪魔しない。

 安全装備は「Toyota Safety Sense」を装備。これはACC(レーダークルーズコントロール。30km/h以上で作動)とLTA(レーントレーシングアシスト)の組み合わせに、プリクラッシュセーフティに新しく追加された交差点右折時の対向車や横断歩道の歩行者を検知するという、トヨタ初の機能が追加されている。リアクロストラフィックも採用されている。

 そしてトヨタ車で初採用となる高度駐車支援システムの「Advanced Park」は、ブレーキ操作とステアリング操作の両方を自動的に行なうものに進化した。こちらも実際に試乗して体験してみたが、白線のない駐車場でもとてもスムーズで正確な位置に駐車してくれる。駐車速度も3段階に設定できる高度なものだった。

 これは便利と思う機能が「ターンチルトシート」。オプション設定となるが、乗降時に運転席&助手席のシートが回転&チルトする仕組みで、タイトスカートや和服(僧衣も)での乗り降りが楽。腰痛持ちにも嬉しい機能だ。さらにトヨタ初の装備となる「イージーリターンシート」といって、それまでのドラポジにマニュアル操作で簡単に戻せる機能も備わる。小柄な人は降りるときにスライドを後退させるので、これがあれば便利だろう。コネクティッド機能では、9月に発売されたばかりの「カローラ」でも採用されるディスプレイオーディオを装備。スクリーンは7インチと8インチが設定されている。

 スターレット→ヴィッツ→ヤリスと代を経て進化してきたトヨタのコンパクト。製造工場は東北の岩手工場、本社・宮城大衡工場の2か所で、トヨタがこだわる日本のものづくりで東北の復興を後押ししている。

 新型ヤリスは、これまでのヴィッツとは一線を画したひとクラス上のモデルプロフィールを持つ新しいコンパクトだ。

Car Watch,松田秀士,Photo:高橋 学

最終更新:11/11(月) 11:52
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