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「内憂外患」の文政権=進む求心力低下―韓国大統領任期折り返し〔深層探訪〕

11/9(土) 8:33配信

時事通信

 韓国の文在寅大統領は2017年5月の政権発足から2年半が経過し、5年任期の折り返しを迎えた。任期途中で倒れた朴槿恵前政権への批判を追い風に就任当初は支持率が8割を超えたものの、国内経済の低迷や側近の不正疑惑で最近は半減。南北、対日関係など外交面でも行き詰まり、まさに「内憂外患」の様相だ。来年4月の総選挙の結果次第では、政権のレームダック(死に体)化が本格化するとの見方もある。

【図解】韓国大統領 文在寅氏はこんな人

 ◇深まった分裂
 「真の国民統合が実現した日として歴史に記録されるだろう」。文氏は大統領就任直後の演説で国民の結束を誇示した。朴前大統領の親友による国政介入事件で政治や社会の亀裂が深まる中、幅広い層からの支持を公約実現の原動力とする狙いだった。

 だが、過去の政権で積み重なった不正をただす「積弊清算」を掲げ、改革を強引に進める手法に保守勢力は反発。最低賃金をわずか2年で3割近く引き上げるなど実態にそぐわない経済政策や、米中貿易摩擦のあおりで、成長率2%台の維持も危うくなり、国民の期待は徐々にしぼんでいった。

 公約の検察改革実現に向け、文氏が9月、家族の不正疑惑が浮上していた側近チョ・グク氏の法相任命を強行すると、たまっていた不満は爆発。支持派と反対派が連日、ソウルで大規模集会を開くなど国論は分裂し、チョ氏の法相辞任直後に支持率は初めて40%を割り込んだ。

 ◇外交空回り
 積弊清算の矛先は対日外交にも向かった。朴前政権下の15年末に結ばれた慰安婦問題の日韓合意を、文氏は「重大な欠陥がある」として骨抜きにし、日本政府が10億円を拠出した「和解・癒やし財団」を解散。元徴用工をめぐる韓国最高裁判決が18年10月に出ると関係悪化は一気に加速した。軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄決定は米国の不興も買った。

 文氏が最も力を入れた北朝鮮との関係改善では、金正恩朝鮮労働党委員長と18年4月に初会談し、同年6月の史上初の米朝首脳会談の「仲介役」を担った。しかし、政権浮揚につながったのもつかの間、19年2月の2回目の米朝首脳会談が不調に終わると、北朝鮮は強硬姿勢に転じ、南北協議に一切応じなくなった。

 ◇「アマチュア政治」
 文氏を支える与党「共に民主党」関係者でさえ、「前政権が突然倒れ、準備期間が足りなかったのは事実だが、文氏の政策は原則も思想もなく行き当たりばったりで、まるで『アマチュア政治』だ」とこき下ろす。「側近だけの意見を聞いて政権を動かし、他の意見に耳を貸さない」と批判は続いた。

 革新色の強い「岩盤の支持層」にも「文離れ」の傾向が見える。チョ氏の辞任騒動で、与党の支持率は基盤とされる若年層や都心で低下。全体的には、最大野党「自由韓国党」を上回るが、分裂している野党保守勢力の統合機運もあり、総選挙で与党が過半数を押さえるとの見方は少ない。同関係者は「既に文氏はレームダック化していると言ってもいい。総選挙以降、それがさらに進むだろう」と予測した。

 ◇文在寅政権の歩み
2017年 5月 文在寅氏、大統領就任
  18年 1月 文氏、元慰安婦らに日韓合意を謝罪
      2月 平昌冬季五輪が開幕
      4月 南北首脳会談(板門店)
      5月 日中韓首脳会談で初訪日
      6月 初の米朝首脳会談(シンガポール)
         統一地方選で与党圧勝
      9月 南北首脳会談(平壌)
     10月 韓国最高裁、日本企業に元徴用工への賠償命じる判決
     11月 韓国政府、慰安婦合意に基づく「和解・癒やし財団」解散を決定
     12月 韓国艦艇、自衛隊機に火器管制レーダー照射
  19年 2月 2回目の米朝首脳会談(ハノイ)
      7月 日本政府、韓国向け輸出管理厳格化
      8月 日本政府、優遇対象国から韓国除外
         韓国政府、軍事情報包括保護協定の破棄決定
      9月 韓国政府、優遇対象国から日本除外
         文氏、チョ・グク氏を法相に任命
     10月 チョ氏、法相辞任
     11月 日韓首脳が対話(バンコク近郊)
(ソウル時事)

最終更新:11/9(土) 8:46
時事通信

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