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祈りの場 無残 あったはずの墓標が… 日航ジャンボ機墜落事故現場「御巣鷹の尾根」に足運びルポ

11/9(土) 6:01配信

上毛新聞

 台風19号による土砂災害の被害が出た日航ジャンボ機墜落事故現場の「御巣鷹の尾根」(群馬県上野村楢原)に8日、上毛新聞取材班は足を踏み入れた。最も多くの墓標が並ぶスゲノ沢。一部の斜面はえぐられたように土砂が流出し、沢に巨大な岩や樹木が転がっていた。そこにあったはずの複数の墓標が、見当たらなかった。登山道や尾根へ向かう舗装道路の崩落箇所も多く、想像以上の惨状に言葉を失った。

◎登山口付近に直径3メートルの岩

 登山道の中腹にある山小屋からスゲノ沢に進むと、対岸に渡るための金属製の足場が数メートル下で流木と一緒にひしゃげていた。墓標へ向かう参道は、遺族らが犠牲者のゆかりの品などを飾るための「祭壇」と呼ばれる小屋の脇から幅数メートルにわたって地面がえぐれ、途切れてしまっていた。

 山小屋へ至る登山道では少なくとも3カ所で道が崩落。道の脇にあった休憩用のベンチが転がり、階段が寸断されていた。道だった場所からは土砂が流失し、むき出しになった岩の間を水が流れ、一見すると川のようになっている。慰霊登山者のための白い手すりがかろうじて残っていなければ、道だったことには気付かなかったかもしれない。

 登山口は、山に向かって左手の斜面が崩れ、上段の駐車場へ向かう道を覆っていた。直径3メートルほどの岩や大量の土砂が堆積。案内看板や登山用のつえ立てをのみ込み、まるで登山口への進入を阻んでいるかのようだ。遺族更衣室やトイレが設置されている旧登山口の駐車場も土砂で埋もれていた。

 尾根へ向かう舗装道路は少なくとも8カ所で崩落を確認した。路肩が落ち、山際の側溝だけが残っている場所もあった。一方、尾根の頂上付近にある「昇魂之碑」の周辺には大きな被害はなかった。

◎「特別な場所」「復旧を」 日航機遺族や地元関係者

 複数の墓標が被害を受けたことに、遺族や地元関係者は衝撃を受けている。

 「御巣鷹の尾根は特別な場所。山全体に主人が眠っている。気持ちのよりどころでもある」。夫の小沢孝之さん=当時(29)=を亡くした妻の紀美さん(63)=大阪府豊中市=は毎年、息子夫婦と慰霊登山する。「大変心を痛めている。(命日の)8月12日に復旧が間に合うか」と心配した。

 遺族でつくる「8・12連絡会」の事務局長で、事故で次男の健君=当時(9)=を亡くした美谷島邦子さん(72)は「被害はとても残念。ただ、まずは(被災した)村の復旧が最優先。尾根の復旧へ対応して下さる日航や村の方々の安全もお祈りしたい」と強調。今後は遺族で連絡を取り合い「墓標は時間をかけて立て直したい」と話した。

 学生と登山道整備などに励む高崎商科大の松元一明准教授は「歯がゆい。早期復旧を願っている」。子どもらの慰霊登山を企画する藤岡青年会議所の阿野剛士理事長は「遺族にとって大切な場所。できることがあれば協力したい」と話した。

最終更新:11/9(土) 6:01
上毛新聞

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