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「シニアの悩み110番」寄り添う男性 胸に刻む亡き母の言葉

11/9(土) 8:01配信

西日本新聞

 自分や家族の健康、年金、相続、人間関係…。老後の不安は尽きないが、周囲に相談できない-。そんな高齢者のSOSに応える匿名の無料電話相談「シニアの悩み110番」。福岡市のある相談員を訪ねた。受話器を通して悩める高齢者に寄り添う男性が胸に刻むのは、苦労して育ててくれた母の言葉だった。

 「そうですか。親としては心配ですよね…」。優しい口調で相づちを打ちながら、右手で素早く鉛筆を走らせる。福岡市西区の福与克己さん(78)。九州シニアライフアドバイザー(SLA)協会で半年に一度の電話相談に携わり、11年になる。

 「110番」の相手は、別居する実子の家賃滞納に悩む高齢女性だった。「同居に向け、強い気持ちで前進するのがいいですね」。はきはきと助言し、きっかり20分で電話を終えた。「電話してよかった、だって」。眼鏡の下で頬が緩む。

「大きくなったら社会に恩返ししてね」

 満州に生まれ、4歳で博多港への引き揚げを経験。筑豊地域にある母の故郷に身を寄せたが、そこに父の戦死通知が届いた。3児を養う母に手を引かれ、父方の祖父母を頼って博多へ向かった。母は日々の生活や住まいに苦労しながら、福祉制度や奨学金を活用し、高校にも通わせてくれた。

 高卒で三菱電機に就職し、「受付嬢」だった妻の由紀子さん(76)と結婚。ときは高度経済成長期の真っただ中。ご多分に漏れず「モーレツ社員」として慌ただしく働いた。

 そして退職。直後こそ朝のバス停に並ぶサラリーマンたちの列を見て「もうあんなことをしなくていい」とにんまりしたが、すぐに仕事人間だった自分には「したいことがない」と気付いた。

 「これじゃいかん、と焦りましてね」。入会した老人会の集まりで、中高年者の生活相談に応じるSLAを募るチラシを手にした。そのとき、生前の母の言葉が思い返された。「大きくなったら社会に恩返ししてね」-。迷いはなかった。SLA養成講座を受け、資格を取得した。

 相談員として心掛けているのは、悩みの要点を整理すること。話が多岐にわたりがちな人には、不安要素を見極めて指摘すると安心してもらえる場合が多い。悩み事をしばらく放っておくよう助言することも。「結局は自分の考え方次第。視点を変えれば楽になるよ、と伝えたいが、そう簡単にはいかないよね」。顔の見えない相談者を気遣う。

 9月下旬に実施した2日間の無料電話相談では、8人の仲間と交代で受話器を握った。かつては100件の電話がかかってきた時期もあるが、今回は18件。「時代の流れかな」。最近は電話相談のあり方や今後の人生にも思いをはせる。「お年寄りの力になれたならうれしい。おふくろも天国で見てくれとるかな」。最後まで笑顔と柔和な口調でそうつぶやいた。 (横田理美)

西日本新聞社

最終更新:11/9(土) 8:01
西日本新聞

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