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天才・宇佐美貴史が帰ってきた。海外挑戦の挫折から甦る「最高傑作」の異能さと、覚悟

11/9(土) 13:30配信

REAL SPORTS

“天才”は苦しみの中にいた。ガンバ大阪ユース史上「最高傑作」と称され、将来を嘱望されてきた宇佐美貴史の異能ぶりは、2度目の欧州挑戦を境に失われてしまったかのように思われた。だが、帰ってきた。忘れかけていた感覚が、ギラギラした貪欲さが、天才・宇佐美貴史が、ついに帰ってきた――。

荒々しさと巧さが絶妙なバランスで同居する、宇佐美貴史の異能さ

シュートを放つモーションは決して大きくはない。しかし、コンパクトに振られる左右の両足の、特に支点となるひざからつま先までの部分は、急加速されながらボールへのインパクトを迎える。そして、放たれる一撃は強烈な弾道を描き、相手チームのゴールネットに突き刺さる。

ゴールに至るまでの青写真を瞬時に描き、迷うことなくピッチ上で具現化させる。まだ10代だったデビュー直後に何度も演じては見ている側に無限の可能性を感じさせてくれた、二律背反するはずの荒々しさと巧さとを絶妙のバランスで同居させた異能のストライカー、宇佐美貴史が帰ってきた。

「自分が思い描いている弾道と、実際に飛んでいくボールのスピードとがリンクしてきている、という感覚がありました。やっぱり足をどんどん振って、シュートを打っていかないといけない。ゴールまでの距離に関係なく足を振れるところが自分の強みであると考えたときに、迷わず振れたという意味ではいい感じになってきているのかな、と思っています」

自身のパフォーマンスに納得する言葉を残したのは右足で追加点を、左足ではダメ押し弾を豪快に決めてガンバ大阪の快勝に貢献した、11月3日の湘南ベルマーレとの明治安田生命J1リーグ第30節後だった。

前半アディショナルタイムに生まれた一撃は39歳のレジェンド、MF遠藤保仁とのあうんのコンビネーションから生まれた。左斜め前方にいた遠藤へ速いパスを入れた宇佐美が、間髪入れずにスプリントを開始。そして、3人もの相手選手に囲まれた遠藤が、巧みにボールをキープした直後だった。

「あの場面でシュートを選択する選手もいるだろうし、もちろんそれでもいいと思いますけど、ヤットさん(遠藤)がシンプルに返してくれたことで、僕がシュートまでもっていくことができた。本当にありがたかったと思っています」

相手を引きつけた遠藤が、左側からペナルティーエリア内へ侵入してきた宇佐美へ絶妙のパスを通す。スライディングで止めにきたDF坂圭祐をファーストタッチで右へかわし、キャプテンのDF大野和成が飛び込んでくる直前に右足を一閃。強烈な一撃がゴールの右角を正確無比に射抜いた。

リードを2点に広げて前半を終える、時間帯的にも最高のゴールは宇佐美の体内で最高のリズムを奏でさせた。後半、50分。ベルマーレの横パスをDF藤春廣輝がカット。前方へ送られたクリア気味の縦パスの落下地点へ走り込んだ宇佐美とDF山根視来のうち、ピッチに足を取られた後者が転倒する。

宇佐美のファウルだとして、何人かのベルマーレの選手は足を止めかけた。しかし、主審の笛は鳴り響かない。ボールを収めた宇佐美は左サイドを縦へ疾走。中央へ走り込んでいるFWアデミウソンの姿を視認しながら、左側からペナルティーエリアへ侵入した直後だった。

「すでに1点取っている、ということと相まってですけど、迷いはなかったですね。ギリギリまで中のアデ(アデミウソン)へクロスを送るイメージを抱いていたんですけど、結果として自分でしっかりとシュートまでいけて、ゴールになった。自分の良さの一つが出たと思っています」

アデミウソンのマークに大野が戻ってきた状況も把握した上で、自分で打つと決めたのだろう。縦へ一つ運び、坂が飛び込んでくる直前に左足を振り抜いた。対角線を切り裂き、反対側のサイドネットへ突き刺さった一撃にベルマーレの守護神、秋元陽太もなす術がなかった。

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最終更新:11/9(土) 16:28
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