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呼びかけた京大院生「えらいことに」、大正時代のレトロ建築が再生

11/10(日) 7:30配信

Lmaga.jp

大正時代の建築物「旧網干(あぼし)銀行本店」(兵庫県姫路市)が、新しい所有者によりレストランとして再活用され、11月10日にオープン。こうした建築の再生は大企業や行政によるプロジェクトが一般的だが、今回は学生によるSNS発信がきっかけだった。

【写真】銀行時代の趣を残す内観

「SNSで広く拡散したかと思いきや、実は鍵付きの投稿」

その発端となったのは、網干出身で景観設計学を専攻する京都大学の大学院生・河北咲良(さくら)さん。2018年春、網干に帰省していた河北さんは、散歩中に建物が「売り物件」になっているのを見つけたという。

何げなく「中学の通学路を散歩してたら旧網干銀行の建物が売り物件になっててビックリだった」とツイッターに投稿。それは、フォロワーしか見られない「鍵付き」のプライベートなつぶやきだった。

大学で気球サークルに所属する河北さん。実は、気球に乗ることが趣味の会社役員・鵜鷹(うたか)司さんとは以前からの知り合いだったという。このときのツイッター投稿を見つけた気球仲間から連絡を受けた鵜鷹さんは、この投稿で初めて建物の存在を知った。

すぐに見学し、購入を決めた鵜鷹さん。自分がきっかけで鵜鷹さんが大勝負に出たと知った河北さんは、「えらいことになったなと(笑)。でも網干の街並が寂れてきていることに危機感をもっていたので、いいチャンスだと思いました」と振りかえる。

「パズルをはめるように、必要な人材がそろった」

建物に魅せられて使命感に駆られたものの、活用方法を思いつかないまま購入した鵜鷹さん。そこで、息子の絢(けん)さんが東京でパン作りの修業をしていることに目を付ける。

このとき絢さんと一緒に声をかけたのが、今回のレストランでマネージャーを務める濱田大規さんだ。絢さんの幼なじみの濱田さんは高校卒業後に上京し、絢さんとは東京でときおり会っていた。飲食店で働いた経験があり、ちょうど就職先を探していた絶好のタイミングだったという。

濱田さんと絢さんが姫路に戻った後、新たに2人の仲間が加わった。うち1人は濱田さんの友人で、今回の話に興味を抱き東京から移住。まるで建物に吸い寄せられるように戦力が集まった縁を、鵜鷹さんは「建物に召された」と表現する。

「今の所有者は私たちだが、建物自体は網干のみなさんのモノ。この地域には、ほかにも古い町家や歴史ある風景が残っているので、旧網干銀行の活用が街全体の温度を上げる起爆剤になれば」と語った。

「古い建物の再生ストーリーはさまざま」

こうした経緯を経て、この11月10日にレストラン「旧網干銀行 湊倶楽部」はいよいよオープン。初めにツイートした大学院生の河北さんも「これを機に、ほかの空き家にも人が入ってくれるといいな。すごく楽しみ」と、網干の賑わい作りに期待をふくらませた。

ひとつの建物がきっかけになり、家族や友だちという絆がよりいっそう強くなる。「旧網干銀行本店」という建築そのものが、これから鵜鷹さん親子や濱田さんたちの生きざまになっていくのだろう。

取材・文・写真/合楽仁美

最終更新:11/10(日) 7:30
Lmaga.jp

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